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絶望の鳥籠  作者: 藤ゐ馨
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第一章5.5 虚空の先に見えるものは、本人しかわからない

東に白羽根種、西に獣人種と強国に挟まれる様に黒羽種の国がある。

白羽根種の属国として、辛うじて機能している小国。

国に名を付ける事も許されず、他種族からは奴隷の国とただ呼ばれている。

残されたのは、緩やかな衰弱だけの国。

その小国の中央に位置する場所に、黒羽種の住まう王城がある。


見晴らしの良い草原に、20m程の壁に囲まれた城下には、民の姿は見えず兵士の姿だけがあった。

昔は勇ましく戦っていたであろう、壁に刻まれた傷は修復されずに降伏を受け入れた姿勢を見せている。

まさに奴隷の国と言う名に相応しい、奪われ続けるだけの国である。

城下に住んでいた民達は、地方に散らばり村を作り、白羽種に貢ぐ為の食料を生産し続ける、王城はそれを受け取り、白羽種に定期的に送るだけの機能と、反乱を防ぐ為の最低限の軍備しか許されていない。

また、黒羽種に外交は許されておらず、物資の全てを自国内で補うしかない。

仮に他種族との交流を、白羽種にばれようものなら国を亡ぼすと言う盟約が、城下中央に位置する監視球に刻まれている。


王城に住まう、お飾りの王は、民の苛立ちと白羽種のご機嫌の板挟みに、疲労を隠せぬ姿であった。

玉座に座る五十代半ばのやつれ顔の男が、王エルングであり、その隣に二十代半ばの凛々しい青年息子エンドワが立っていた。

二人は兵士の報告を聞き、エルングは悩まし気に頭を抱える。


「それで、南部に魔物が現れたと言うが……どうなっておる?」


「はっ、魔物は退けたと報告が上がっております」


「して、村の被害はどのようになっておる」


「村には被害が及んではいないとのことです」


その報告を聞き、エルングは胸を撫で下ろす様に安堵する。


「ならば、年貢も支障なく徴収できるな」


「父上、いつまで奴らに貢ぐつもりなんですか?」


エルングの発言に、エンドワは怪訝な顔で訴える。


「仕方なかろう、我らの存続理由は、その為だけなのだから」


「いつまで敗者思想に縛られるおつもりか、このままでは結局淘汰されるのを待つばかりではありませんか」


「……お前はまだ若い、奴らの魔法を知らぬから、その様に言えるのだ」


「ですが父上!」


「黙れエンドワ……もう下がっておれ」


哀れな父の姿に、エンドワは軽蔑の眼差しを向け。自室に歩みを進める。

誰もいない自室で、椅子に座りながら空を見つめる。


「あれはもう駄目だな」


ぼそりと呟くエンドワの表情は先ほどとは違い、感情と言う物を切り捨てた冷めた顔をしていた。

本来なら誰も返す事の無い言葉を、見えない何者かが言葉を返した。


「ふくっく……だから、言ったのにーね」


「流石の俺も多少なりとも良心が痛むのでね。上手い事、魔物が機能してれば済んだが、まさか退けるとは……人生とは上手くいかないものだな」


「それでどーするの? こっちとしては、やるのかやらないのか聞かせてほしいんだけどーね」


「無論やるしかないだろう……精々掌の上で、弄ばれてやろう」


含みのある言葉を放ちエンドワは、一人自室で思案を続ける。


こちらの更新を、一時的に止めることにしました。

更新時期は、別作品がある程度完成したら再会します。

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