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絶望の鳥籠  作者: 藤ゐ馨
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第一章1 狭い部屋の中

――意識が戻ると、視界は闇に閉ざされていた。


体はSFで出そうな、カプセルの中に入れられていた。

顔は、ヘルメットで覆われて、それが視界を妨げる原因になっている。

ヘルメットからは、無数のコード類がカプセルと連動していた。

駆動音と共に、カプセルが開くと、中を満たしていた液体が地面に漏れ出していく。


「……ゴフッ……がふ」


息を吸おうとすると、肺を満たしていた液体が口から溢れ出す。

まるで長い事、臓器を使っていなかったみたいに、違和感を体に感じる。

産まれたての小鹿の様に、ゆっくりとカプセルから這い出した。


地に足が付くと、鈍い痛みが体中を駆け巡る。

苦痛に顔はゆがむが、耐えられないほどではない。

視界を邪魔するヘルメットを脱ぎ捨てて、辺りを確認する。


「どこだ、ここは」


見覚えのない部屋の中。

カプセルから発する、薄い明かりが辺りを照らしている。

埃の臭いと、至る所に細かいひび割れの跡が、年月を感じさせる。


辺りには見た事の無い、機械類が散乱していて、壁には液晶モニターが埋め込まれている。

液晶モニターには、エラー警告の表示が映し出されていた。


マウス、キーボードらしき物は見当たらず、タッチパネルで動くみたいだ。

何か現状を理解出来る手掛かりがないかと、操作を続ける。

端末はどうやら、オフラインで起動しているみたいで、オンライン接続を試みるが失敗。現状で確認できるのは、端末内に残されたデーターだけだった。

残されたファイルの殆どは、英文表記で破損しているファイルも多い。


「ナノプロジェクト……」


解る単語を、口にしていく。

表示される図解を照らし合わせると、何かの設計図のようにも見えた。

映し出されるデーターは、何を意味するのか理解できずに困惑する。

文字化けした部分を飛ばして、読み進めている為、より難解な内容になっていた。

現状を理解しようとしたのに、余計に困惑する。


「どうやら……まともな情報は、ないみたいだな」


人は理解できない情報を否定する傾向が強い。

それは自己防衛の本能であり、当然の思考だ。

だからこそ、この残されたデーターを、まともでは無いと断定した。


仮にまともなデーターだとしても、書かれている内容が、知っている科学水準を超えている。

あまりに現実離れした出来事に、夢でも見ているのだと思いたかったが、夢の中で痛みを感じる事は無いと、変なところだけは冷静で、そんな自分に苦笑した。


不意に地面が揺れ天井が、崩れ始める。

かろうじて生き埋めにならずに済んだが、部屋の半分は瓦礫に埋もれ、液晶モニターの電源は消えた。どうやら完全に壊れてしまった様子だった。


「おい……マジかよ……」


天井から砂粒がパラパラと落ちてきて、いつ全壊してもおかしくない状況だった。

不幸中の幸いにも、カプセルは健在で、薄暗い照明だけはまだ生きていてるが、いつ消えて闇に閉ざされるか不安が脳裏をよぎる。

部屋から出ようと、扉にはめ込まれていた硝子に自分の姿が映る。


「お、俺なのか?」


映し出された人物は、普段見覚えのある姿をしていなかった。

病院着姿の二十代前半と思しき男性、鋭い目つきと愛想の無い顔は、確かに自分だと思えるが、背丈と年齢が食い違っていた。

自分の顔を両手で触ると、硝子に映る存在も両手で顔を触っていた。


「もう……わけわかんねえよ」


茫然としていると、現実が急かす様に再度天井が崩れ始める。

生き埋めと言う単語が、より鮮明に脳内でイメージされる。

今は、この部屋から出る事を考えなければならない。

スライド式の扉を開けようと力を籠めるが、錆び付いている為、ビクともしない。


「くそ! 開けよ」


如何したら良い、と言う問いを答える者はどこにもいない。打開策を自ら考えなければいけない状況だが、切迫する事態が上手く頭を働かせようとしない。

こじ開けようと奮闘した結果、爪が剥がれ、勢いのまま地面に転んでしまう。


「いっ……こんな所で、生き埋めになってたまるか!」


何か他に無いかと辺りを見渡すと、何かの機械の部品に使われていた、L字パイプがあるのに気が付いた。

手にしたパイプで、扉を殴り続ける。

手の皮は剥けて、苦痛に顔を歪ませるが、止める訳にはいかない。

頑丈に作られていた扉は、殴打の末に、原型を歪ませていき、根を上げたかの様に、地面に倒れこむ。


扉が壊れて開けた先は、長い廊下になっており、暗闇で先は見えなかった。

先の見えない廊下を素足で歩く度に、足裏には長い年月でたまった、埃と砂の様に細かい粒が付着していく。

何も見えない道を歩き続けていると、後ろの方から崩れる物音が聞こえる。

先程の部屋が、土砂に埋まったのだろう。


急いで駆け抜けたい衝動を抑え、壁に手を当てて、ゆっくりと歩み続ける。

手に伝わるひび割れの感触が、ここも安全ではないと言っている様だった。


「行き止まりか」


しばらく進んだ先は、瓦礫で埋もれていてこれ以上先に進めそうになかった。

途中で曲道がないか調べたが、それらしいものは見当たらない。

他に進めそうな道はないが、壁が崩れて上によじ登れそうな、穴があるのは分かった。ただ、いつ崩れるかわからない状況に、少し躊躇いはあったが、このままでは埒が明かないので、意を決してよじ登る。


子供なら楽に上がれるだろうが、大人の体だと思ったより狭く、匍匐前進せざる負えない。

しばらく上り続けていると、吸っていた空気が次第に、淀みを増していることに気が付いた。息を吸う度に、咳が止まらなくなっていく。


これ以上先に進むのは、危ないのではと脳裏をよぎった時、目の前に小さな明かりがうっすらと見える。たぶんこの先が、外に通じているのかもしれない。


「ゲフッゲホ……外に出れるのか」


心が沸き上がる。外に出れれば、何かがわかるそう信じて、力を振り絞り前に進んでいく。予想した通りこの穴は、外に通じていた……。

少しのカットしました。

後は、一気に載せないで小分けにしてる感じですね。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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