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冷蔵庫

作者: 引きこもり貴族

あくまで実体験。特別怖くなくても怒らないで!



小学二~三年生くらいの時の話。

今みたいに体格も特別大きいわけでもなくごくごく一般人な俺が友達と遊んだ時の思い出。


当時はゲームを家で遊ぶより外で遊ぶことのほうが多かった俺は学校で友達と放課後「○○で遊ぼう」みたいな

相談をしてから帰るのが日課になっていた。

大半が外で野球とか鬼ごっこ、跡かくれんぼもした。

いつもお決まりのメンバー


でもその日はちょっと違ったことが起きた。

「俺も混ぜてよ」

そういって普段そのメンバーにいないはずのA君が混じってきたのだ。


そのA君は、いわゆる「不良のお兄ちゃんを持つ不良予備軍」みたいな典型的なやつで

でも特別悪いことをしてるわけじゃないんだけど、なんとなく忌避されてる感じだった。


で、その子の話だと普段遊んでるメンバーが急きょ遊べなくなってしまい、暇になったので混ぜてほしいとの事だった。


特段断る理由もない俺たちは彼を快く招き入れた。

しかし、その日の遊びはどうにも楽しめなかった。


遊びだすと「お前が鬼をやれ」だとか「俺はやだ」とか所謂わがままを言いだしたのだ。

みんな最初は「僕がやるからいいよ」と変わってあげてたがさすがに3回も続くと不満が漏れだす。


俺と友人は隠れて「次で終わって帰ろう」と決めて最後のかくれんぼをした。

時間的にも日が落ち始めていた事もあり文句を言いながらもA君は了承してくれた。


せっかく遊んでいたのに…と気分を害されちょっと楽しめないままでいた俺だったが

問題はこの後起きた。



時間にして三十分

殆どのメンバーがかくれんぼの鬼に見つかり公園のベンチ付近で集まっている


しかし例のA君がまだ見つかっていない。


「おそいね」

「うん」

正直帰ってしまおうかと思ったが相手はあのA君。

翌日学校で何か文句言われては面倒だ。


あきらめて待つ

しかしやっと帰ってきた鬼役の友人は少し焦った顔で「見つからないから手伝って」と言い出した。

時刻にして既に五時半過ぎくらいだった。


いくらなんでも小学低学年の門限ぎりぎりだった。

中には何人か時間が来ていて、帰りたいと文句を言う子もいた。


そんな彼らをお願いして引き留めて一緒に探すことにした


公園といっても特別大きな場所じゃない。

ちょっと起伏ある場所にある公園だから周りの窪みやら物陰しか隠れる場所には近くにない。

ルールでも公園の周りまで、と約束している。


すると

「もしかしてA君見つかりたくなくて公園の外に言っちゃったんじゃないの?」

「えーずるい」

と不満を持つ子が言い始める

一人が言うと彼に対する不満はどんどん漏れ出す


「ずるいんだよ、自分勝手でさぁ」

「もしかして勝手に帰っちゃったかもしれないよ」


そんな具合だった。


結局みんなで集まっても全然見つからないのであと十分だけ手分けして探して見つからなかったら帰るということになった。

さんざん探してるのだ、明日文句を言われても言い返せる。

それでみんなOKをくれたので探し始めることにした。


俺と友人は公園の西側

住宅が多いほうだった


女の子二人は北側

公園の入り口側で隠れる場所が少ない。

女の子ってことで比較的楽そうな場所になった。


男の子三人は東側

遊具などが置いてある方面。

隠れるならここがポピュラーなため人数を多めにした。


さらに別の男の子二人は南側

最後にあまり利用することのない草むら方面。

柵などは無く隣にある不法投棄されたゴミ捨て場などへ直接行ける。





手分けして探すこと数分


「もうアイツ誘うのやめよう」

「うん」

と気分を台無しにされた俺と友人の処へ男の子が走ってきた。


それを見て二人して「?」と首をかしげると

息を整えた彼は自分の来たほうを指さして

「い、いた、A、君!」


やっとか、と安どの表情を浮かべたが彼の顔は真っ青だった

「どうしたの?」

「えと、その…とりあえず来て!」

どう見ても尋常ではない様子に俺たちは困惑しながらとりあえず彼の後をついて走る。







その場所に行くとほかのメンバーも集まっていた。


そこは公園の南側…いわゆる不法投棄の山ができているゴミ捨て場だった。

廃屋も二、三件あり不良のたまり場にもなっている。



女の子は二人半泣きになりながら座り込んでいた。




「どうしたの?A君は?」

そういうけどその場にいた子たちは「ある一点」を見つめてこちらを見ない。


俺と友人は二人してその視線を追うとそこに異様な光景の物が見えた。


視線の先は子供ではよじ登れないくらいの高さまである石塀

その向こうには少しボロな廃屋もあった。

二件の廃屋の塀と塀の間は子供が通るにも狭い隙間があった。

そこにA君はいた。


ただ、彼は気絶していた。


それも逆さまの状態で。


ここだけを見れば分けのわからない…としか言えない。


詳しく説明すれば、塀と塀の隙間は体を横にしても胸がつかえるくらいのスペースだった。

そしてそこに入っているA君はどう見てもそこを通れるような細さではない。


そんな彼が無理に入れば当然詰まるだろう。そんな印象だった。

しかし異様なのは彼が、すっぽりと全身を、逆さまの状態で、塀に挟まっているとだった。


それも挟まったことで体は完全に空中に浮いて、塀の隙間から腕だけだらんと伸びた状態だった。


最初それを発見した子も人形か何かと勘違いしたらしい。

しかしよくよく見ればそれは白目をむいて気絶するA君の姿だった。

腰を抜かした彼を介抱する子が残り、先ほど俺を呼びに来た子がほかの場所を探していた子を呼んできた、というのがことの流れらしい。



白目を向いて倒れる人の顔なんて初めて見るにきまってる。

内心怖くて仕方がないが俺たちは彼を助けようと引っ張ったが


「抜けないよ。がっちりはまってる」


どうやったらここまできれいにハマれるのかと聞きたくなる位がっちりはまり込んでいた。

腕を引っ張ってもうんともすんとも言わない。

むしろ彼の露出している肌が塀にこすれて細かい傷ができるくらいだった。


「どうしよう」

「公園にいる大人を呼んできて」

「わかった」

そんな具合で大人が来てくれた。

その大人たちもそ異様な光景に気味悪がっていたが、やはり大人

すぐに落ち着いてA君を隙間から引っ張り出してくれた。


ただ、気になったのが大人たちが「ある一点」をやたら気にしてそちらに行こうとしなかったことだった。



なんとか救出されたA君は体のいたるところをボロボロにしながらも帰って行った。


ただ礼も何もない彼に友人たちは「なにあいつ!」と憤慨していた。



その日は俺たちは酷く損した気分でそれぞれ帰路についた。




そんなこともあったが何て事無く数日後


学校で妙な噂が流れ始めた。


「隣のA君がおかしい」という内容だった。

おかしい、と言う噂が流れること自体奇妙だった。

基本不良の子の噂は、その話をしているだけで面倒なもめ事になるから自然としなくなる筈なのに皆堂々とその噂をしている。

そんなことをしていたら当然本人の耳にも入ってしまう。


と、思ったがその当人が全くアクションを起こさない


あのA君の性格を考えれば「何俺の文句裏で愚痴ってんだよ!」と文句を直接行ってきそうなものだった。

しかしそれが一向にない。


それが不思議に思った俺は当時一緒にかくれんぼをしていた友人に聞いてみた

「あのさ、今噂になってるA君の…」

そこまで言うと友人はあぁ…といった。

「気味悪いよね。あの日からずっとアイツ、授業でてもぼーっとしてて帰り道もふらふらしながら独り言言いながら歩いてるんだぜ?」


予想以上に気味の悪い話で俺は「う…」と思ったが好奇心が勝った。

「独り言ってどんな?」

「さあ?聞いてないから。あと、帰り道?も変なんだよ」

「変て?」

「アイツんち駅のほうじゃん?確か」

「そうだね」


腕を組んで首を傾げる友人

「やっぱり…あいつここ数日あの公園のほうにまっすぐ言ってんだよ」

「公園…あれ?真逆じゃない?」

「だよね。最初は遊びに行ってるのかなって思ったんだけど。塾に行く途中公園を見下ろせる場所通ったらさ。アイツ一人で例の場所で突っ立ってんの」

例の場所、おそらく彼が発見された場所だろう。



「他に誰もいないの?」


「ん~~…いなかったと思うけど」


そんな話を聞いて俺はさらに興味がわいた。

何があったんだろう。

もしかしてあの事件の時大切な何かでも落としたのか。

いろんなことを考えたけど何もわからず、結局俺は彼をつける事にした。



気分はまるで探偵

ワクワクしながら俺は彼の後ろをついていく

学校から公園まで十分くらい

彼はフラフラとした足取りで公園に入る

ちなみに独り言は全くと言っていいくらい聞こえなかった。



公園に入ると彼は同じく公園で遊ぶ子供たちに目もくれずまっすぐ南側に向かっていった。


遠くからそれを見てて、なんだか彼の歩く場所だけ切り取られた違う場所のようにも見えた。

周りではドッジボールや、縄跳びしてる子供がいるのに

なんというか、ひどくその子だけ浮いてた。




何とも言えない不安感があったが、ここまで来て帰るのも癪で俺は彼の後をつけていった。



暫くすると彼は例の場所まで到着した。

しかし少し予想と違ったのは彼が立つ場所は発見された場所と少しずれていた。

それより少し奥側。

不法投棄されたゴミ山の方だった。


そこで彼は何やらブツブツ独り言を言っている

それを見た俺は(うわぁ…本当に独り言言ってるよ…)と一人で引いていた。


彼は何を見ながら独り言言っているのかこの場所からは分からなかった。


しばらく様子を見ていると彼は再びフラフラと歩いて行ってしまった。

ついていこうかと思ったが、俺は彼が何を見ていたのか気になりそれを調べることにした。




A君の立っていた場所に行くとそこは古びた冷蔵庫が一つポツンとおいてあった。

冷凍と冷蔵の二つのごく一般的なものだ。


内心(何でこんなものを見てたのか)ぐらいにしか思わなかった。


でもその冷蔵庫を見ていて、なんとなく中身を見たい、そう思った。

手を取っ手へ伸ばし掴む

妙な緊張が走る


扉をぐっと引っ張るとわずかな抵抗感の後あっさり開くのを感じた。


なんだ、なんてことはない

そう思って薄く開いた冷蔵庫をさらに開けようとしたその時


ガシッと何かに腕をつかまれた。


思わず手元を見た。

すると自分の右腕をつかむ誰かの腕があった。

当然周りに気配なんてなかった。

間違いなく自分だけ


「…---ッ!!??」

振り払おうとするけど圧倒的な握力で振りほどけない




中に誰かいたのか

そういえばかくれんぼの途中冷蔵庫に入って子供が内側から開けられず…という事件を聞いたのを思い出す。

もしかしてこの子もそれなのか

と思ったがすぐにその考えが否定される。


ならなんですぐ飛び出さず俺の腕をつかんでじっとしている?



さらに異常に気が付いた


その俺の腕をつかんでる腕は「左手」だった。


右手で開く冷蔵庫

つまり右手前に引くわけだ。


そして現状その扉はうっすらとあいた程度。

そこから腕が伸びていた。




つまり中にいる誰かと向かい合っている状態だとすればその腕は「一度左手を右に伸ばし、冷蔵庫の隙間から腕をだし、その扉を掴む俺の腕をそのままつかんだ」わけだ


腕がS字に曲がりくねっていることになる。

ゴムのように柔らくないとできない芸当だ。


さらにいえば掴まれてる部分が異様に冷たい

当然冷蔵庫が冷えていた…なんてことありえるわけない。



様々なことを考えていると俺はどんどん恐ろしくなり半狂乱になって腕を振りほどこうとした。

しかしガッチリつかまれた腕は一向にゆるむ気配はない。

それどころか強くなった気すらした。


半べそかきながら必死に腕を振り回す


引っ張られている

そう感じた



怖くて腕を振り回す

気付くと俺は冷蔵庫のふたを思いっきり蹴り飛ばすようにした。

蓋を締めてやろうと思ったのだ。



するとバタン!と大きな音を立てて扉が閉まる

突然解放され尻もちをついた俺は逃げるようにしてその場を後にした。

走って、走って

振り返ることもなく家まで走り抜けた。



玄関に入って転がり込むようにして座り込んでいると晩酌をしていた親父が呑気に

「どうした?」

なんて言ってきた。


今日休みだったんだ、なんて考えながら安堵感で泣きそうになった。

俺の様子が変だったからだろう親父が「こっちこい」と言ってきた。


ちなみに母親は買い物らしい


「何があった?」

「…」


「相当怖いことあったんだろう?変質者でも出たか?」

「…公園」

「ん?」

「公園で…怖いことあった」

そういうと親父は首を傾げた


「なんだ、公園で?………」

少し考えた後親父の顔を見て俺はぎょっとした

その表情がさっきまで酒で赤みを帯びていたオッサンの顔から、まじめな男の顔になっていた。


「おい、公園ってどこの公園だ」

「え、えと…」

俺が戸惑っているが黙ってこちらを見る親父

なんだかとてつもなく悪いことをした気分で居心地が悪かった。



それでもこちらをまっすぐ見る視線に耐えかねて

「…○×公園…の南側」

そこまで話すと親父はカッと目を見開いて俺の頭をはたいた。

「あのゴミ捨て場に行ったのか!!何で行った!!前からあそこに行くなと言っておいただろ!」

まくし立てるように親父は怒鳴る

その後すぐに俺の肩や手足を確認しだした

「ケガは!?変なものを持って帰ってきてないか!?」



「う、うん…」

それだけ答えると親父は、はぁ…と溜息を吐いた後座り込んだ。


「でも…」

「ん?」


俺の言葉に振り返る


俺はA君の事を話した

かくれんぼしてる時妙なことが起きた事。

それ以降彼の様子がおかしい事

その彼をつけていたら先ほどの恐ろしい目に合った事。



それらを話すと徐々に親父の顔色が悪くなる。


すると俺を無視して学校の連絡網を取り出した


何やらどこかに電話しているらしい

時間にして二十分くらい

そして、電話が終わると俺の前に来て

再び座った。


煙草に火をつけて一服

大きく煙を吐いた後親父は話し出した


なんでもあのゴミ捨て場は以前から市が回収しようとしていたものらしい。

しかし、なぜかあの冷蔵庫を撤去ないし分解しようとすると作業員に重傷者が出たそうだ。

あるものは持ち上げようとしたときに刃物に指を切り落とされ、分解時にはじけて飛んできたネジに目をやられたなんていう話もあるとか

なんどもいろんな方法で撤去しようとしたらしいが噂に尾びれ背びれついてそれに触れようとする人はもういないらしい。



撤去車両も場所が奥まった場所にあるせいで入れずどうしても人力である程度動かさなくてはならないらしい

それからこの地域住民の間ではその冷蔵庫付近へは近づかないという暗黙のルールが生まれたらしい。


親父曰くその冷蔵庫はとっくに異常になっていると言っていた。

多分親父なりの気遣いの言い回しだろう。


心霊現象とかそういう言葉を使わないでくれた

ただ、あの異常事態を体験した俺としては言葉の意味を理解していた。

「その…A君か?親しいのか?」

「いや、正直…」

「そうか、それだけが救いだな」

「どういうこと?」

「…多分だけどその子はもう、だめかもしれん」

行ってる意味が分からなかった


「いいか?間違ってもそこには二度と行くな。もしそこへ行くように強要する奴いたらぶん殴ってでも逃げろ。責任は俺がとる」

珍しく親父が頼もしい

「そのくらいあそこは危険なんだ…というかA君が発見されたとき大人いたんだろう?そいつは何も言わなかったのか?」

「うん…特に」

「まったく…怖いのもわかるが子供に釘刺し忘れるのはダメだろうが…」

といった感じで親父は憤慨していた。



「いいか?この話はするな?知っててその場所に行く奴と、知らずに近づく奴とじゃあ大きく変わる。お前は二度とそこに行くな。

できるならその公園にもな」






その日はそれ以降話はしなかった。



それから数日

学校でA君の噂は続いた。

というよりどんどんひどくなった。


授業中大声で笑いだしたり、突然廊下に水をまいたり。

奇行が目立つようになった。


彼が特別クラスに入れられるようになってから二週間くらいしたあと

彼は突然転向した。



転校する直前には彼は正直人相も変わっていて、ただただ気味が悪いとしか言えなかった。

ただ

彼の腕と首に何かに掴まれた後だけが妙に気になった。




それ以降彼に合うことはなかった。








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