表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幸せのホタルイカ

作者: 藤桜

 俺はこの小さな島で親の跡継(あとつ)ぎのためホタルイカ漁の手伝いをしている。

 高校を卒業してから毎日漁の勉強をしていた。

 たまに観光でホタルイカを見に来る人の接客など結構大変だ。

 そんなある日、不思議な客がやってきた。


「あの、すみません」


 やってきたのは見た感じ俺より年下だろう少女だ。


「いらっしゃい」

「あの、ここでホタルイカ漁ってやっているって聞いたんですけど?」

「やっているけど」

「漁に同行って出来ます?」

「一応ツアーやっているよ」

「良かった」

「それにしても珍しいな」

「何がです?」

「君みたいな若い女の子がホタルイカ漁に同行って。そんなに好きなのか?」

「えっと、好きと言うか探しているんです」

「何を?」

「幸せのホタルイカを」


 この島には古くから伝わる伝説がある。それは〝幸せのホタルイカ〟というものだ。

 本来ホタルイカは青く光るが(ごく)(まれ)にピンク色に光るホタルイカ居る。そのホタルイカに願い事をすると叶うというもの。

 でもそんなのはただの伝説だ。俺は漁をやっているがそんなのは見たこともない。

 俺は少女に現実を言った。


「あんなのは伝説だろ? 俺の家だって代々ホタルイカ漁をしているけど見たことないし」

「でもどうしても幸せのホタルイカを見つけたいんです」

「もし見つけたとしてそんなに叶えたい願いがあるのか?」

「探している人が居るんです」

「探してる人?」

「その人は私の命の恩人なんです」

「なんかドラマっぽいな」


 俺は嘲笑(あざわら)った。

 でも少女の瞳は本気だった。

 話を聞くと少女は昔この辺の海で一人遊んでいたとき浮き輪で沖に流されてしまったらしい。その時海岸まで泳いで運んでくれた人を探しているとか。

 俺は漁に出る時間を少女に伝えるとニコニコしてその場立ち去って行った。そんなに楽しみにしていたのだろうか?

 そして漁に出る日の早朝。日はまだ出ていない真っ暗な空の下で少女は指定した場所で待って居た。


「今日はよろしくお願いします」

「おう。危ないからあまりウロウロせず船内に居ろよ。ホタルイカ捕まえたら呼ぶからさ」

「はい」


 漁船に乗り捕れるポイントへ向かった。そこまで大体10分ほどで着く。

 ポイントに着くと俺は親父と同じ漁師仲間と共に網を海へ投げた。

 漁を初めて30分間ほどが経った。網をあげるとたくさんのホタルイカが青く光っていた。


「おーい、ホタルイカ捕れたぞ」


 俺が呼ぶと少女は船内から出てきた。


「うわぁ~、たくさん居ますね」

「それでピンクの光を放つホタルイカは?」

「えーっと……居ないですね……」


 少女は大量のホタルイカを見るがそこにいるのは全部青く光っていた。


「まぁ早々捕れないだろ」

「そうですね……」


 漁船は港に戻った。

 俺は捕まえたホタルイカを巨大水槽に移したとき一瞬違う色に光る何かが見えた。


「あれ今ピンクの光が見えたような……」


 まさかそんなはずはないだろう。でももしかして……

 水槽をよく見るとそこにはピンク色に光るホタルイカが居た。

 俺はすぐにそのホタルイカを別の小さい水槽に移し少女を呼んだ。


「どうしました?」

「これを見てみろ」


 俺は水槽に入ったピンク色に光るホタルイカを見せた。


「居たんですか!?」

「あぁ、さっきたまたま見つけたんだ。本当にいるんだな。始めて見たぞ」

「綺麗~」

「ほら願い事するんだろ?」

「あ、そうでした」


 すると少女は首に掛けていたペンダントを取り出しそれを握るとホタルイカにお願い事をした。


「どうかあの人とまた会えますように……」


 俺はなんだかそのペンダントを見たことがある。

 そのペンダントとは半分に割れたかのようなデザインでそれの片方に合うのはこの世に一つしかない物だ。

 そう、その反対側は俺が持っている。

 でもそれをどんな経緯(けいい)で持ったのかは覚えていない。

 俺は少女に聞いてみた。


「なぁ、そのペンダントって」

「これですか? これはツインペンダントって言う物なんです。ホントはもう片方あるんですけどどこかで落としてしまったみたいで。沖に流された後までは持って居たはずなんですが」


 それを聞いた瞬間俺の記憶にある出来事がよぎった。

 あれは確か中学生の時だった。俺は海で誰かと出会い別れ際このペンダントを拾ったんだ。いつかまた会えた日に返そうと思って今でも持っている。


「思い出した……」

「どうしたんですか?」

「これを見てくれ」


 俺は首に掛けてあったペンダントを取り出した。

 それを見た少女は驚いていた。無理もない。少女が探している人物はきっと俺なのだから。

 ペンダントを合わせてみるともちろんぴったり合った。


「それじゃあなたが……」


 少女は突然俺に抱きついて来た。


「お、おいっ」

「あの時は本当に……ありがとうございました……」


 朝日に照らされた少女の瞳には涙が輝いていた。

 それから数年俺と少女は一緒にホタルイカ漁に出ている。

 今度はお客ではなく妻として。

ツイッターでキーワードを募集してみたところ『ホタルイカ漁』と言われたので作ってみましたw

4時間ほどで書いた作品なのでお見苦しいですが;


Twitter

@huzizakura

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とっても詳しくホタルイカの事が分かりました❗ [一言] さゆきちです。 4時間っ?!お疲れさまでした。 とても面白かったです。\(^-^)/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ