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ミソラの町で

作者: ほみち


 未空の町。それは、未だ空が見えない町。

 窓の外の景色はもちろん、家の外に一歩出たときの景色でさえも何故か空が見えることはない。

 本来ならば空があるべき空間には、日がのぼることも、月や星が見えることもなく、常に真っ暗なので、時間の感覚すら失われつつあり、町の人々は町に唯一ある大きな時計台を頼りに生活している。


「もし、あなたは旅の方でしょうか?」

不意に少女の声がして、私は歩みを止めた。「ええ、分かりますか?」

「あなたは杖をお持ちのようですし、足音ですぐに分かりますわ。この町には杖を使うものはいませんから」表情は分からないが、少女の嬉しそうな声が返ってくる。「でも、随分歩き慣れてらっしゃるようですわね、観光ですの?」

 そうだと返事をする前に、時計台の鐘が5時を告げた。見えないので、確認する術はないが、だいぶ時間がズレているような気がする。

「分かっていますわ、正確な時間とは違うのでしょう?もう長いこと旅の方が来られなかったものですから、時間のズレを知る術もなかったのです」

 私は妙に納得してしまう。

「旅の方、空のある生活とはどんなものですの?例えば……今この時間、5時の空は、どんなものですの?」

「……そうだねぇ」


 私はなんと答えるべきか考えてしまう。

 この真っ暗な未空の町でなら、視力などあってもなくても同じこと。目の見えない私でも、受け入れてもらえると思ったから来たというのに。



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