六話
一ヶ月で増えた子孫クローバーは玄関の敷石以外の更地すべてに生い茂るようになった。元になった一号と二号も子孫たちに囲まれ、見た目ではどこにいるのかわからなくなっている。
そこまでなら幸せな話だが、問題が起きてしまった。彼らは美味しいのだ。そのため虫がめちゃくちゃ集まってくる。蝶の集会場ならいいが、他にも見たことのない虫が集まり、水やりをしづらくなっている。
そして普通そこから虫を狙った小動物が集まり、その小動物を狙った熊が来るのだが、動物避けの匂いと音のせいで、家の周辺が虫の安全地帯となってしまった。
これが虫を食べる小動物への嫌がらせになり、ウォールポイントが入るようになった。
「人間何をしても誰かの嫌がらせになってしまうんだ。だったら好きなことをした方がいい」
「マスターの生前の悪行を聞いていますので承服しかねます」
「こっちはその記憶がないから冤罪としか言いようがないな」
そんなことより、ウォールポイントは300も溜まっている。これを使って建設だ。
頭の中でおっぱいマウスパッドと打ち合わせ。300では石の壁はおろか、最初にあった密度の高い木柵すら建てられない。しかし密度の低く腰までの木柵なら建てられる。
「このスカスカ柵を頼む」
「はい。できました」
家を出る。マウスパッドの身体からすると多く見える、低いすかすかな木柵ができあがっていた。細い木の枝を支柱に二本、横にして三本の間仕切り。最初の親熊だったら五秒持たない。
この木柵が普通と違うところは出入り口が空いていないところだろう。出る必要ないからな。
「さてこれで囲んだ敷地がこっちの物となり自由にできるのか」
「はい。水源や罠などをウォールポイントで作成できます。水源は複数置けば河川となり、それを利用したのがテンプレート河川です」
「前に言っていたやつか」
「はい。色々な使い方ができるので覚えておいてください。そして一番大切なのが、壁と召喚がこれでそろったことです。これで壁に対してマスターだけの最強の能力を与えようができるようになります」
そうなのだ。言い方は馬鹿にしていたが、何か宿るらしい。
「普通、召喚と壁の力が相互に影響し合って生まれる能力です。それは己と相性がいい召喚と己自身壁と組み合うことにより、最高のパフォーマンスを生みます。しかしながらマスターは四葉のクローバーさんのおまけとしてついてきたレベルなので、相性はきっとよくないでしょう」
「ハードルを下げてきたな」
「調べてみましょうか。いえ、調べずに希望を生かし続けますか?どうせ時間もありますよ」
「もっと前向きにがんばるよ。どうだ?」
おっぱいマウスパッドがイベントに飢えていて、引き延ばそうとしてくる。だが引き延ばしに付き合ったら耳が痛くなるので先に進める。
「現在調査中です」
待つ間にクローバーの花を食べる。まだ咲きたてで柔らかい。
庭はクローバーと虫に溢れていて、時々飛び掛かってくるやつを手で追い払う。たくさんの蜂が蜜を吸っている。いつかあのハチミツを味わってみたいものだ。
「わかりました」
その辺にあるクローバーを根っこごと引き抜いて食べながら調査していたおっぱいマウスパッドが結論を出した。
「これはすごいですね。驚きました」
根っこを強化したらごぼう程度に太く堅くなり、この歯ごたえがいいと気に入っているらしく、今も土を落としてかじりながらしゃべっているのですごさが伝わってこない。
「マスターのウォールアビリティは、『動物にエサだと思わせる匂いがする』です。オンオフ可能です」
「オフにする」
はからずしも、美味しい四つ葉のクローバーと相性いいじゃねえか。
「あまりお気になさらずに。大抵のウォールアビリティは再現できます。無料で経費なしとはいきませんが、取り返しのつかないことはありません」
「他のやつはどんなウォールアビリティだったんだ」
「万里の長城のような壁を築いた方はスケルトンを召喚して、彼らを再生する力を手にしました。昆虫を召喚した方は、壁に火と油を付与する力で、燃える万を越す火耐性昆虫を操りました。二人とも好きな後世を選んだそうです」
思ったより強力だった。比べてはいけないレベルだ。
「この中にも火耐性昆虫の子孫いるかもしれませんね。別の大陸の話でしたが、信徒が持ち込むことがあるので」
今や森まで侵略し始めたクローバーを見渡す。元の人生の三倍の長期戦を覚悟した。
「結局何がすごかったんだ」
「ユニークなはずなのに、過去に似たような力の人がいました。すでに解析されてウォールポイントで買えます。つまり効果二倍です」
バカにするためすごいと言ったわけではないように見せようとしているな。わかるんだからな。
「使い道がないだろ。かぶったやつはどうなった」
「自滅して熊のいる近くの川魚になりました。召喚は鳥類でなかなかでしたが」
「鳥類か。生き物はずるいから同情はなしだ」
話をそれで終わらせ、ウォールポイントで水やりを試すことにした。すぐに終わってしまって次からまたじょうろでやることにした。




