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四話

 夜中に起きだして外に出て、誰も見ていないことを確かめる。

 おっぱいマウスパッドは寝ている。判別は難しいがそんな気がする。

 深夜の森は真っ暗。闇の向こうから虫の鳴き声や木々が揺れる音が聞こえる。風が冷たく、木々より高い月が雲に隠れている。


「召喚されてください」


 四葉のクローバーの前、かすかな月明りを浴びて土下座をする。見た目はマウスパッドが裏返しになっただけ。

 しばらくそのまま裏返る。何も起こらない。馬鹿らしいと起き上がろうとしたら、飛びかかるようにおっぱいマウスパッドが乗っかってきた。


「ここでやめてはいけません。もう少しです。頭の中の召喚的な機能を意識して、四つ葉のクローバーと繋がるイメージを持つのです」


 ここで重要なことをさせて乗りかかったことをうやむやにしようとしているな。忘れないからな。

 忘れない。それでも召喚は重要事項だ。言われた通りに召喚脳みそを使って四葉とのクローバーとつながるイメージを起こす。

 むむむむむ。


 頭が何かが加わるような感触が過ぎたあと、召喚リストに四つ葉のクローバーが二株加わった。


「できたようですね。召喚したら植え直するの大変ですからやめてくださいね」


 すべてを見通すようなタイミングでおっぱいマウスパッドが背中から離れる。


「これ本当に土下座の意味があったのか?」

「ありました。私が四葉のクローバーさんたちに毎日話しかけて、誠意を見せてくれるのならいいと言質をとりましたから。その誠意が世話と土下座です」

「土下座の概念を教えたのはお前だろ」

「はい」


 土下座程度で契約できたのだから褒めるべきか。いや、褒めたくない。踏んだから。


「植物と話せるのか」

「余裕です」

「聞いてないぞ」

「マスターもこれから犬の表情程度の意思がわかるようになるので大丈夫ですよ」


 生前だったらこいつに何かしらしてるな。しかし今は我慢だ。

 おっぱいマウスパッドを無視して、眷属の強化欄を見る。魔力分注ぎ込めるのか。

 明日にしよう。


「寝るか。明日何を伸ばすか決めるから考えておいてくれ」

「おやすみなさい」


 おっぱいマウスパッドが壁際に育つ四葉のクローバーに声をかける。

 繋がりのおかげか、四葉のクローバーが反応したのがわかった。

 彼らにとって今夜は暖かく適度に湿ったいい夜のようだ。




 昨夜マウスパッドで土下座をして家に戻り、人型になるとおでこが汚れていた。

 どういう理屈なんだ。

 洗いながら考えたがわからず寝た。


 翌朝、この自由な空間でビュッフェに舌鼓をうち、椅子とともに外に出る。姿はマウスパッド。

冷えた風に顔をしかめて、おっぱいマウスパッドと一緒に四つ葉のクローバーと対面する。


「強化案はある。まずお前たちを食べた動物を人間にとっての毒にする案だ。これだとばれにくい」

「さすがマスターです」

「二つ目は動物が嫌う臭いを出して熊とかを山から追い出し人里を襲わせる」

「さすが地球の魂奴隷です」


 褒めてないからなそれ。


「他にも麻薬にして町を漬けてしまえば邪魔になるだろ」


 今までの案は一株一つに絞ればすべて実行できそうだ。元気なクローバーだったので強化余裕が大きいのだ。


「ではお前たちはどうだ。何かあるか?」


 四つ葉のクローバーに向けて聞く。何か言ったがわからないのでおっぱいマウスパッドに顔を向けた。


「彼らが望むのは繁殖と即成長と美味しさです」

「美味しさ?食われたら駄目だろ」

「マスターも食われる前提の毒の案を出しましたよ」


 むむ。絶対謝らないからな。


「それは食われて意味があるからだ。毒もなく美味しいだけではただの死に損だろ」


 意見を聞いた四つ葉のクローバーたちが伝えてくる。それは違うと。


「食べられても種が排出されたら勝ちだと。死は終わりではない。搾取は負けではない。踏まれても、種がくっ付けば一歩だ。死の穴に種を埋め込むと」


 人間は輪廻転生を保証されている。それは与えられたものだ。しかしこの四つ葉のクローバーたちは自分たちを一つとして、自力で輪廻転生を行うための精神を手に入れている。

 もしかして邪魔したらいけない神聖な行為ではないのか。


「よし、決めた。お前たちの希望を叶えよう。立派な外来種として既存種を駆逐するんだ」


 乳牛になって美味しいこいつらを食べる。それもいい気がしてきた。

 召喚メニューの強化欄に過剰繁殖、即成長、美味を加える。そしてそれだとまだ少し魔力に余裕ができるので、根の強化を加えた。土台をしっかりと持って欲しい。


「これでどんどん増えるぞ。増えたら子供も召喚できるのか?」

「子供たちは性質を受け継いだ他人だと思ってください」

「そううまくいかないか」

「変わりにこの二株はマスターが消えるまで死にません」

「優秀な仕様だ」


 ウォールマスターとしては意味がないが、なかなか有意義な朝になった。


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