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二話

「ウォールマスターって何なんだ。ダンジョンマスターのパクリなのか」

「ダンジョンマスターは獣の保育所で、ウォールマスターは道を封鎖するのが役割です」

「お前の説明は本当にやる気を感じさせないな」


 熊は無事親子でどこかに去っていった。家に傷跡を残して。トイレの中からも壁が削れる音が聞こえたことが印象的だった。


 ベッドに座り、ナイトテーブルのおっぱいマウスパッドにもう少し詳しく聞いてみる。ダンジョンマスターは洞穴を拡張してモンスターを氾濫さる防御的攻撃、ウォールマスターは壁を拡張して主要道をふさぐ攻撃的防御らしい。


「神がそんな迷惑なことをさせるのには理由があるのか?」

「そうですね。まず神様の話をしましょう。あなたが契約したのは邪神です」

「うわ」


 迷惑行為じゃん。そりゃ熊も襲ってくるよ。無関係だけど。


「神の説明もしないといけませんか」


 表情のないおっぱいマウスパッドがベッドの脇のちゃぶ台の上で面倒そうにする。


「まずこの世界には大陸が五つあります。その内の四つは別の世界からなんやかんやあって融合してきました」

「地図も見せずに説明続ける気かよ」

「自分で調べてください。それで追加の四つの大陸にはそれぞれ一神教の神がいます。それらはもと想像の神でしたが、この世界では意思の力がパワーになるので、実際にその神が存在できてしました」

「つまり生まれた四柱の内の一人がクライアントの邪神か?あれ、なんで邪神を信仰してるんだ」


 普通自分に利益のある神を信仰するはずだ。


「元々あった大陸は多神教なので問題なかったのですが、他の一神教の大陸がお互いの神を邪神だと喧伝して、それが叶ってしまいました。おかげで生まれた四柱の邪神は、信仰されている大陸での善神パワーの三倍の邪神パワーで他の大陸を荒らしています」


 美しい話だ。ここまで美しい因果応報はなかなかない。


「多神教の原住大陸はどうした」

「あそこは善神として新しい神を迎え入れているので、さらなる復興を遂げています」


 生まれ変わるならそこだな。いや、地球で石油王ルートも捨てがたい。もしくは嫌いなやつの子供になって嫌いなやつを殺すルートも。


「まあいい話だな。とりあえず流れはわかった。ウォールマスターとしての目標はあるのか?」

「マスターの目標は主要道を塞ぎ嫌がらせすること。伸びに伸びて大陸の端から端までいくのが理想です。しかしそこまではいかないでしょう」

「どうして?」

「その前にこの大陸の神から、お前の大陸に送った嫌がらせのやつ消すからそっちも消して、と交渉が来るからです。大体その交渉は通り、晴れて二人は生まれ変わりです。まあうまくいったらですがね」


「なるほど。目標は大陸の分断で、ゴールは交渉の駒になることか」

「はい。よくできました。大変素晴らしい理解力です」

「急になんだ」

「褒めて伸ばすことを忘れていたので」


 おっぱいマウスパッドは、なかなかのうっかりさんだな。




「さて」


 大き目な世界観の説明も終わって、本題に入ることにした。


「問題のウォールマスター活動についてだな」


 頭の中のよくわからないものを開く。壁作りはどんな壁になるか想像して、その工賃としてウォールポイントなるものを支払う形のようだ。想像が面倒な人ようにテンプレートもそろっている。


「そのテンプレートは過去の成功したウォールマスターの壁です。それらはウォールマスターに与えられているもう一つの力、召喚と組み合わせたものですので、それらが答えになるとは限りません」

「え、召喚って?」

「召喚は個人個人によって出てくるタイプが違います」


 そんな力聞いてないぞという疑問を無視して次に質問しそうなことを答えやがった。


「召喚を知っていたら熊を何とかできたのでは?」

「人によって違うので、そうとも言えません。例えばテンプレート河川の方は召喚が魚類でした。そのため壁を捨てて水源をいくつも作り、大陸を横断する大きな河川を作って分断させたのです。すごいですね。マスターも召喚にあった壁を作りましょうね。私もサポートするのできっといけます」


 このおっぱいマウスパッドは謝ったら死ぬタイプなんじゃないのか。似た者同士か。

 ナイトテーブルの上にいるおっぱいマウスパッドを見ると堂々と胸を突きだしている。責めても無駄な気がして、そのまま続けた。


「召喚はどうやってするんだ」

「私はウォールコアなので知りません。ただ脳みそ改造されていますし、わかるはずですよ。あ、改造ではなく神から特別な力を賜ったでしたか」

「お前は俺との関係をどうしたいんだよ」


 ひとまず脳みそを働かせてみる。すると具体的な手順が浮かんでくる。生前の記憶に曖昧なところもあるし、改造なのは間違いなさそうだ。

 まあどうせ生まれ変わるための途中駅だ。好き勝手やろう。


「召喚」


 どうしてかリストが空だ。だがとりあえず発動させてみる。

 手を床に向けて出るところを指定。やってみてから数秒後、何も出ないことに真顔になった。


「ウォールマスターはいつもこの世界の住民でした。しかしウォールマスターの危険性が知れ渡り、失敗が多くなってきました。そこで今回は異世界から奴隷の魂を買って、違った視点でやらせてみようということになってます。そして召喚は生前馴染んだ生き物が出て来るので、異世界から来たマスターは召喚しても何も出てきません」

「お前今伝える必要ない情報混ぜたぞ。聞こえているからな」

「さすがマスター。抜け目ない天才です。それで脳なしが召喚するため、いや召喚させてもらうため対象と馴れる必要があります。しかし世界間の違いの壁は大きくお互いの魂が嫌がります。そこで神がマスターのために用意してくれました」


 ナイトテーブルの上に立っているおっぱいマウスパッドの横、四葉のクローバーの鉢植えを見つめる。そして熊を思い出す。

 いや、神やったことだ。冷静になって考えろ。四葉のクローバーで熊を倒す方法があるはずだ。そして自分が魂奴隷として売られたことに思い至った。これは無理なやつでは。


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