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この話は、今までの小説とは違い、別ジャンルになりますので、ご注意を。
「卒業、おめでとう。キッド、ケイン。」
キッドの保護者である亜木夜が、彼等の寮の部屋に訪れて、開口一番に発した言葉だった。それは彼等、キッド・ゴールデンスターと、同室のケイン・ダークに向けられたものだった。
その言葉の後、渡された一枚のメモ…それには、こう書かれていた。
【初任務である。アルトル星にて、ある人物を保護する事。
その人物の名”ライナ・ヴァージニア”。
彼女を保護するに当たって、如何なる手段も問わない。】
「これに関しての条件なんだけど、”必ず二人で、行動する事”らしいよ。」
付け足すように、メモを渡した亜木夜がそう言う。キッドとケインは面食らったが、直ぐにその言葉を理解した。彼等二人…キッド・ゴルデンスターとケイン・ダークでペアを組めという事が、上層部の支持であるのを…。
そう、彼等は、星間連邦警察【通称・ウィング】の学校を卒業したばかりの、警察官の卵なのだ。とはいえ職務内容は、闇に包まれている部署ではあるのだが…。
これについて、今はあえて触れないでおこう。
その代わりと言ってはなんだが、ここで少しばかり彼等の紹介をしよう。
まず始めに、キッド・ゴールデンスター。
警察学校を卒業したばかりの18歳で、髪は水色の腰位の長さで、サラサラのストレート・ロング。それと同じ水色のきつい瞳の持ち主。
他人に言せると、目つきが悪い(鋭い?)少年。訳あって、現在両親とは一緒に住んでいない。その代わり彼には保護者がいる。
キッドの保護者の名前は、亜木夜・荇。
年齢は、時の放浪者の為…不明。髪は、薄紫色の肩に掛かる位の長さで、見た目柔らかそうであり、緩やかなウェーブの掛かっている。
その髪で右顔半分を隠しているが、それでも人当たりの良さそうな顔立ち。養い子のキッドとは、全く正反対の…優しそうな、濃い紫の瞳の持ち主。
そしてもう一人、キッドの親友兼、ルームメイト兼、クラスメイトのケイン・ダーク。
キッドと同じ18歳だが、誕生日はケインの方が少し早い。髪は黒に近い茶色で、巻き毛の癖毛。アフロまではいかないが、クリンクリンで、かなり頑固な剛毛の持ち主。
顔立ちは優しそうな顔立ちで、いつも笑顔を絶やさない少年である。優しい光に満ちた、暗茶色の瞳の持ち主。
ケインの保護者は…というと、最初の適任者と彼が幼い頃に別れた為、今はキッドと同じである。
簡単ではあるが、以上で彼等の紹介は終わりにしよう。
それでは話に戻そう。
亜木夜から、先程のメモと、詳細が書いてある書類が入った封筒を受け取った二人だったが…初仕事と聞いて、少々浮かれ気味だったようだ。
それに気付く彼等の保護者は、釘を刺す事を忘れない切れ者だ。初任務という事もあり、彼等には忠告と保護者らしい言葉を掛けている。
「初任務だから、緊張や焦り、油断が出ると思うけど、気を引き締めて、模擬任務の様に熟せば良いよ。目的を達成すれば、本格的に仕事が入るようになるからね。
それと、余り無茶をして、命を落とさないように。」
怪我を負わない様にとは言わない彼に、演習で無く実際の任務…自分達の仕事の現実感を与えられ、これ程危険な職種に着く事を否応無く、自覚させられる。
命の危険を伴う仕事内容が、彼等が就く連邦警察の部署である事を、暗に告げられたのだ。彼等はその為に学び、卒業をした。
適性検査を経て、今に至る。もし、少しでも実際の任務で落ち度があれば、即、この部署から外される事は承知している。
いや、外されるのでは無く、自身の存在が無い事をも示している。だからこそ適性検査は厳しく、そこで落ちるなら、教官の道か、只の一般市民となる。
命の駆け引きが出来ないのであれば、この道は開かれないのである。
保護者の忠告を真摯に受け取った彼等は、その保護者から任務の説明を聞き、住み慣れた星を出発した。
それを見送る保護者・亜木夜は、ぼそりと呟く。
「君達が無事に、任務を終えてくる事を期待しているよ。
君達が最良の結果を出してくれると、私も嬉しいからね。」
そう言って見送る亜木夜の顔は、保護者で無く、全く別の顔を見せていた。