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序章
どこまでも澄み切っている空を背景に、無数の桜が視界を鮮やかに染める。校門の前には、人が入り乱れ賑わいあふれていた。カレルは着慣れない制服を着て、人混みを掻き分けるように校門を通り過ぎた。今日は入学式だ。
「なんで俺がこんなことをしなければいけないんだ」
校門にはウェルステッド魔術学院の文字が刻まれていた。国内で最高峰の魔術学園だ。才能のある選ばれた人物でなければ入学することができない。だがそれはカレルには相応しくはなかった。
才能があると言ってもそれは一般人においての話である。国の暗殺集団に従事していたカレルにとってはいまさら魔術学院に通う理由などなかった。教師という立場でならいざ知らず、学生という身分で入学することに嫌気を感じていたが総師の頼みというのもあってしぶしぶ承諾してしまった。いまとなって考えてみれば断った方が良かったかもしれない。
カレルは溜息をついて、こんなことになった忌々しい事件のことを思い返した。