おわり
翌日、真昼は昨日の出来事が嘘だったかのように笑顔で登校していった。
僕はそれを見ているのがとても辛かった。
愛が故に君は消える。
僕にできることは何かないのか。
考えれば考えるほどわからなくなる。
一日が終わるのがとてもはやく感じた。
「ただいま〜」
「おかえり」
彼女のもとへかけよる。
「今日は、何も起こらなかったんだね。」
安堵の息がでる。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ〜」
大丈夫じゃないだろ。
言いたくても、言えない。
「あのね、シュウヤくんには悪いけど、私明日でシュウヤくんとはお別れするから。」
ほら、大丈夫じゃない。
「なんで…殺されに行くの。」
「好きだから、かな。」
敵わない。
「何処が好きなの?」
「見た目と、私を殴ってる時に見せる笑顔。」
中身は何もないのか。
悔しくなる。
彼女は本気で好きな彼氏のためにやってるのに、彼氏はきっと真昼の事など何にも思ってないんだ。
きっとただ、殴るのが楽しくて、ただ、殺してみたいだけなんだ。
「シュウヤくんこそ他人の事なのにお人好しね。」
「好きだから。」
「え?」
とぼけた声をだす。
幽霊に愛されたって嫌なだけだろうなあ。
なんで俺、真昼にであう前に死んだんだろう。
「え、そんな、私…」
困ったように、照れたように真昼は目をキョロキョロとさせる。
「真昼が彼氏の事大好きなのはわかってる、だから今のは受け流して。」
きっと、これで良いんだ。
「私も、シュウヤくんの事は好きだよ。」
いつもの優しい笑顔だ。
それだけで嬉しいのは何故だろう。
「死んだら、シュウヤくんにさわれるかな?」
「未練がないから無理だろ!」
二人で笑いあった。
ああ、こんな毎日が続いて欲しかった。
「じゃあ、行ってくるね。」
いつものセーラー服で靴を履き始める。
「真昼、怖かったら逃げるんだよ。」
「逃げないわよ!いってきます!」
「いってらっしゃい。」
ああ、ドアがあく。
その手をつかめたらいいのに。
行かないでって引っ張れたらいいのに。
ほんの少しの希望をのせて僕は手をつかもうとした。
「えっ…」
希望など叶わず手が空をかく。
驚いたような顔をした彼女を遮るかのようにドアは閉まった。
行ってしまった。
「行かないで…」
…行ってしまった。
「何処にいるんだろう。」
真昼、彼氏の家はスーパーの近くっていってたっけ…。
「…僕には何もできないだろ。」
さっきだって。
「…でも!!」
耐えきれず、僕は家を飛び出した。
消えているのに感覚のある足を必死に動かす。
「まだ、ダメだ!死んじゃダメだ!!!」
「お願いです、神様…どうか彼女を生かしてください…」
死んでるのに疲れる身体が憎くなった。
スーパーの近くにきた。
「名前なんて…知らないな…」
「シュウヤくん!!?!?」
名前を呼ばれてびっくりした。
振り返って涙で濡れた顔を見て、僕からも涙が流れる。
「真昼…!」
「怖くなっちゃった、誰かに助けて欲しくて、目をつぶって彼が殺す用意するの待ってたらシュウヤくんが見えた気がしたの。私耐えられなくて、逃げてきちゃった、怖かった、怖かったの…」
「僕も怖くて、もう真昼に会えないのが嫌で、ここまで走ってきた。でもね、家なんてわからないからこのまま真昼が死ぬのを待つだけなのかなって思ったらもっと怖くなった。良かった、また会えて良かった。」
感極まった真昼が俺に抱きついてくる。
…え?
「えええええ!?」
足元を見るが足は見当たらない。
「私ね、私もシュウヤくんが好き!あなたの優しいところ、幽霊なんて関係ない、大好き!…ってあれ?なんで私シュウヤくんに触れれてるの?」
「わ、わからない。」
「ねえ、愛の力?」
優しく微笑む。
ああ、そうだ、僕未練が晴れたんだ。
じゃあなんでまだここにいるんだ?
「シュウヤくん、…お別れなの?」
「え?」
真昼の目の先を見る。
腰あたりまでもう体が消えてる事に気づいた。
「わっ!!えっ!?」
未練が晴れたから、消えるの?
「そ、そうだよね、だってシュウヤくん、幽霊だもんね…」
「そ、そんな、嫌だ!!」
こんなことなら、未練があったほうがいい!
物はつかめなくていい、お腹も空かなくていいし眠たくならない退屈な日々でいい!
…真昼がいるなら。
「残念だな、私シュウヤくんの事、すごい好きになっちゃっ…」
言葉を言い終える前に涙を流しはじめる。
そっと、手を握りあった。
「馬鹿みたいだ、こんな事なら告白なんてしなければ良かった。」
「そんな事ない、私嬉しかった、初めて本当に人に好きになってもらえた気がしたの。」
ああ、初めて好きになれたのに。
初めて好きになってもらえたのに。
こうやって初めて手を繋げたのに。
もっと、一緒にいたかった。
「好き、大好き、もっと一緒にいたかった。未練がはれた?ふざけないで欲しい、もっと真昼と一緒にいたい、手を繋いで歩きたいし、思いでも作りたい、嫌だ、未練が増えただけじゃないか!」
「ダメだよ、シュウヤくん、もうすぐ別れるのに、私がこの手をはなしたくなくなっちゃう。」
離さないで、そう言いたい。
「さよなら、大好きな人。」
僕は、消えた。
身体が重く感じる。
お腹が空いた。
「え…?」
ピッ、ピッ、ピッと機械の音がして、薬品の臭いが鼻につく。
目を開けると、そこには家族がいて、泣いていた。
医者がありえないと言うような顔をしている。
「お兄ちゃん、死んだかと思った…。」
いもうとが泣きながら俺の手をつかんだ。
ああ、死んでなかったんだ。
死んで…
「なんだか、五日間くらい寝てた気分だ…。」
ああ、夢だったんだ。
「そりゃ、五日も寝てたもの。」
「え?」
「突然心肺停止してから、植物状態になって、臓器提供するか話してたところなんだ。」
夢じゃない…?
俺は立ち上がって点滴を抜いた。
「母さん、俺行かなきゃいけないところがあるんだ。」
きっと、夢じゃないなら…。
俺はいつの間にか夢の中で見た場所についていた。
玄関のドアを開ける。
相変わらず鍵をかけてない。
そこには彼女の姿があった。
「シュウヤくん…!!!」
「また、会えた…」
その見慣れた姿に涙を浮かべそうになる。
「夢じゃ、なかった。」
「でも、なんで?だって…」
「植物状態だったんだ、多分、幽体離脱みたいな……って、なんか不思議な気分だよ。」
自分で言ってて馬鹿らしくなった。
幽霊なんて、信じた事なかったのに。
「でも良かった、本当に良かった。」
「…真昼、ただいま。」
「おかえり、シュウヤくん。」
繋いだ手が温かく感じた。
僕は、生きていて、
彼女も生きている。
幽霊(生霊かな?)になった少年と殺されたい少女の話でした。
愛の形はいろいろありますが深入りしない方が良さそうですね…
愛の形っていってみたかっただけです。