小説家になろうにおけるインフルエンサー・マーケティングの可能性について(プログラミング的な原理にも軽く触れています)
――さて、
“このままでは、絶対に小説家になろうは衰退する”
と、何年も前に危機感を覚えた僕は、(頼まれてもいないのに)、これまで何度も小説家になろうの改善案を提案して来ました。
ただし、それは基本的には、“質の高い作品を抽出し易いようにする”というコンセプトであって、オリジナリティの低い作品…… つまりはテンプレ作品にとっては不利な内容でした。
――が、今回は違います。
今回提案する方法は、テンプレ作品を投稿している人にとっても、それ以外のマイナーなジャンルの作品をがんばって投稿している人にとっても、そして、もちろん、なろうの運営さんにとってもプラスになる案です。
何故なら、成功すれば、小説家になろう全体のアクセス数がアップするからです。
その説明の前に、まずは小説家になろうの近況について述べておきます。
近年、小説家になろうは、アクセス数が減少し続けて来ました。だからだろうと思うのですが、小説家になろうは、なろうでの収益化を可能とする“なろうチアーズプログラム”を始動させました。ところがどっこい、これがむしろ逆効果で、アクセス数の減少が加速してしまったのです。
以下が、なろうチアーズプログラム後の前年同月比での下落率ですが、時を経るほどに下落率が大幅に増えているのが分かると思います。
202411→202511 下落率7%
202412→202512 下落率7%
202501→202601 下落率8%
202502→202602 下落率9%
202503→202603 下落率9%
202504→202604 下落率11%
202505→202605 下落率12%
202506→202606 下落率15%
202507→202607 下落率20%
202508→202608 下落率19%
202509→202609 下落率18%
一体、どうして、こうなってしまったのでしょう?
僕は小説家になろうをなんとなく観察し続けているので、その理由に思い当たる節があります。
なろうチアーズプログラム後、しばらくして、ジャンル“推理”が、わずか2ポイントで月間ランキングにランクインするまでに作品の投稿数が減ってしまったのです。これは恐らくは収益目的で、なろうでの人気ジャンルに作品投稿がこれまで以上に集中してしまった所為ではないかと思われます。
つまり、供給過多のジャンルの作品が更に増え、潜在需要に対して供給量が少ないジャンルの作品が減ってしまったのです(ミステリーは、世間一般では、最も人気の高い小説のジャンルです)。
僕はジャンル“推理”しかウオッチしていないのですが、恐らく他のジャンルでも状況は同じでしょう。
つまり、マイナージャンル作品の投稿が劇的に減ってしまったのです。
ただし、2026年8月辺りから状況が変わりました。“推理”の作品投稿数が増えて来たのですね。もう2ポイントでは、月間ランキングには入れません。すると、それに伴って小説家になろう全体のアクセス数がわずかながら改善しました(作品投稿に対しての読者の増減は遅効性があると思われるので、今後、もう少し改善するかもしれません)。
この程度の回復では、誤差の範囲という疑いもありますが、少なくとも下げ止まってはいます。
この間、なろうには目立った動きは観られませんので(“みんなのおすすめ”機能が追加されましたが、そこまでの宣伝効果はなさそうです……)、この回復は、マイナージャンル作品投稿数の回復が原因の一つになっている可能性もあると考えます。
以上は、本題ではありませんが、参考情報でした。
マイナージャンル作品にも需要があるので、小説家になろうにとっても十分に価値があるのです。なろう運営さんは軽んじているようですが。
……しかし、どうしてマイナージャンルの作品投稿数が回復したのでしょうね? 収益化を目指して、人気ジャンルに移行した一部の人達が、「やっぱり、自分の好きなもんを書いていた方が楽しい」で、元のジャンルに戻って来てくれたのなら、ちょっと嬉しい。
さて、前置きはこれくらいにして、そろそろ、小説家になろうのアクセス数を増やす案を提示したいと思います。
近年、インフルエンサー・マーケティングが注目を集めています。ゲームの事例ですが、“ストリートファイター6”や、“めっちゃカメレオン”は、この成功例だと言われ、その大きな宣伝効果を期待して、スポーツやゲームなど様々なイベントにインフルエンサー達が招かれるようにすらなっています。
ならば、小説投稿サイトも……と、考えたくなりますが、小説投稿サイトと、インフルエンサー・マーケティングとの相性はあまりよくないと考えられます。
まず、インフルエンサーに直接「この作品を宣伝してくれ」といった感じで依頼すると宣伝費用が高くなり過ぎます。更に、一人や二人に一度や二度依頼をしても、サイト全体のアクセス数が恒常的に増えたりはしないでしょうから、効果も十分ではありません。
がしかし、ならば、小説投稿サイトでインフルエンサーの活用が不可能なのかと言えばそれも違います。方法を工夫すれば、大いにインフルエンサー・マーケティングには期待ができます。
その為には、以下のような条件を満たす必要があります。
1.小~大手の不特定多数のインフルエンサー達が対象
2.ある程度、継続して宣伝し続けてもらう
3.ある程度の費用対効果がある
4.簡単に契約ができる
5.簡単に支払いができる
そして、これは「小説家になろう作品のSNSなどでの宣伝に対し、アクセス数に応じた報酬を支払う」という機能があれば実現できます。
現在、前述した通り、小説家になろうでは、なろうチアーズプログラムで、小説投稿者に対してアクセス数に応じて報酬を支払っていますが、それと似たような感じで、宣伝をしてくれた人にも、アクセス数に応じた報酬を支払うのですね。
これならば、インフルエンサー達はただ単になろうに登録して必要な設定をし、気に入った作品のページで、なろうの機能を用いてSNSなどへの宣伝を行うだけで、簡単に報酬を受け取れます。
つまり、インフルエンサー達は、宣伝にほとんどコストがかかりません。
仮に小遣い程度しか稼げなくても、これならば、十分に宣伝をする動機付けになるでしょう。
これを実現する為の具体的な機能は以下になります。
1.小説家になろう内の作品ページにある、SNSへの宣伝機能やURLコピーで出力されるURLのパラメータに、ログイン中のユーザーを識別するコードを追加する
2.1項で生成されたURLからのアクセスには、ユーザー識別コードが含まれるので、それを元に誰の宣伝によるアクセスなのか識別し、金額を加算する
※ セキュリティ上の安全性を高める為、ユーザー識別コードは新たにこの為だけに発番した方が良いでしょう。
3.誰でも宣伝で利益を得られるようにすると、botなどを用いて膨大に宣伝を行うユーザーが現れ、小説家になろう全体がスパム扱いされる危険があるので、宣伝権利のあるアカウントは審査により限定する(運営が積極的に営業をかけたインフルエンサーは、当然、審査を通す)
基本的にはこれだけです。
因みに、AIに相談した結果なので何処まで信頼できるかは分かりませんが、なろうチアーズプログラムと同等のPV当たりの単価で宣伝の報酬をフォロワー数1万規模のインフルエンサーに支払うとすると、毎日1回の宣伝で、月に約500円程度は稼げるそうです(ユーザーがリンク先で何回かクリックした場合)。10万人なら、単純計算でその十倍ですかね?
なろうチアーズプログラムは、少なくとも現在は、失敗していると考えるべき状態にありますが(因みに、ほとんどのなろうチアーズプログラム参加者は、ほんの少ししか稼げていないみたいです。収益を得る手段とは考えない方が良いですね)、その原因の一つは、作者本人があまりアクセス数の増加に貢献していない点があるでしょう。例えば、ポイントランキングからのアクセスは、小説家になろうの宣伝力で獲得したアクセスであって、作者本人の力ではありません。つまり、宣伝効果になっていません。
――これでは、作者にお金を支払う意味がありません。
その点、今回提案しているインフルエンサー・マーケティングの場合は問題ありません。当たり前ですが、宣伝で増えたアクセス数に対して支払うのだから、確りと効果があります。
因みに、小説家になろうでポイントランキング上位に作品が掲載される事の宣伝効果を金額に換算すると、月に数百万から1千万程度にもなるそうです。既にこれだけの報酬を受け取っているのに、更にそこからのアクセスで収入を得るのは、流石に貰い過ぎでしょう。
そして、これは裏を返せば、もし、ポイントランキングからのアクセスにはあまりお金を支払わないようにするならば、ポイントランキング上位者以外の、もっと幅広いユーザーにもっと高い金額を支払えるはずだという事でもあります。その方がサイト全体のアクセス数も上がるでしょう。
……なんで、ポイントランキングからのアクセスにもお金を支払っているのでしょうかね?
まあ、僕はなろうチアーズプログラムには参加していないので、あまり関係はないのですが。
なので、インフルエンサー・マーケティングによるアクセスの場合は、なろうチアーズプログラムの対象外にするべきだと僕は判断します。宣伝してもらっている時点で既に報酬は受け取っていますから。
余談ですが、今後は作品にポイントを入れると同時に、SNSでの宣伝を促すポップアップ画面を開くようにした方が良いかもしれません(作品投稿時に開くのと同じやつ)。それによって小説家になろう全体のアクセス数が増えますし、宣伝権利を持った人限定ですが、ボタンを押す手間が省けてより便利になりますから。
また、これには別の効果もあります。
小説家になろう運営が、公式に不正にポイントを加算する業者の存在を認めた事があります。また、組織票によるポイント加算も小説家になろうでは横行していると言われています。これらポイントによって、ポイントランキング上位に入った作品でも、小説家になろうの宣伝リソースを奪ってしまう訳ですが、これは小説家になろうにとっては損害になります(その作品が宣伝するに値するほど、クオリティが高いのなら別ですが)。
しかし、このようなシステムにすれば、少なくとも小説家になろうの宣伝も行ってくれる可能性が大きくなるので、今までに比べれば多少はマシになると思われます。
さて。
以上のような方法を実現すれば、小説投稿サイトでも、最低限インフルエンサー・マーケティングを行えるようにはなります。
ですが、成功させる為にはまだ足りていません。成功させる為には、まだ乗り越えるべき壁があります。
まず、インフルエンサー達に営業をかけ、宣伝を行ってもらう必要があります。
AIの回答なので、どの程度まで信頼できるかは分かりませんが、日本にはフォロワー数1万以上のインフルエンサーが、1万8千人ほどもいるそうです。それらインフルエンサー達に営業をかけるのです。
ですが、ここで問題があります。
小説家になろう作品は、残念ながら、世間的にはネガティブなイメージを持たれてしまっています。
例えば、とあるユーチューバーは、自分が受け取った“酷いメッセージ”の内容を形容する為に「小説家になろうのような」という表現を用いていました。既に小説家になろう作品は、“質の悪い作品”の代名詞として使われるまでになってしまっているのですね。
インフルエンサー・マーケティングを行う為には、当然ながら、インフルエンサー達に作品を宣伝してもらう必要がありますが、このなろう作品の評判の悪さでは、恐らくは避けられてしまうでしょう。自分の評判まで貶めてしまうからです。
小遣い稼ぎをする為に、自分の価値を下げるインフルエンサーはあまりいません。
ですから、少なくとも中~上級のインフルエンサーを狙うのであれば、良質な作品を選出し、それをインフルエンサー達に伝える必要があります。なろうを知っている人なら分かっていると思いますが、なろうポイントランキングはこの為には使えません。品質の悪さがネタとして話題になるくらい、ポイントランキング上位にはオリジナリティが低い上に品質も低い作品が混ざっているからです。
その為、ポイントランキングとは別の方法で、運営側が良質の作品を選ばなくてはならないのです。もちろん、これにはコストがかかってしまいます。
――が、“なろうパートナープログラム”が始まって、この問題がなくなりました。
なろうパートナープログラムでは、小説家になろう運営が、良質な作品を選び、営業をかけてくれるのだそうです。
つまり、公式の発表では、既に良作は選んであるはずなのですね(何故か、選んだ作品の発表はありませんが)。
もし、これが本当ならば、その選んだ作品を何らかの手段でインフルエンサー達に伝えるだけで、問題をクリアできます。
例えば、サイトの何処かで、運営が選んだ作品を、読了時間、タイプ別に分けて、複数リスト化して公開をします。人によっては内容を確認しないかもしれせんが、慎重かつ誠実な人ならば内容を少なくとも数作は確認するでしょう。ですから、短時間で読めるものを推薦するべきです。つまり、少なくとも初期はショートショートがインフルエンサー達へ推薦する作品の基本となります。
そして、ショートショートだと宣伝効率が悪いので、宣伝効率を上げる為、そのページ自体も宣伝可能にするべきでしょう。
コンセプトは、「“小説家になろう”と馬鹿にするな! ちゃんと良作もあるんだぞ!」ですかね。
インフルエンサー達は、常に投稿ネタを探しているような状況らしいので、ある程度の質があると分かったなら、利用してくれるようになる可能性はかなり高いでしょう。ほんの偶に、VTuberが朗読動画を挙げていたりしますが、ショートショートなら時間的にも適しているので選んでくれるかもしれません。
ただし、何度も強調していますが、世間的には、なろうのテンプレ作品は軽蔑されていますから、それ以外を選ぶべきです。ショートショートや短編だと、メディア展開、IPビジネス展開がし辛いですが、ショートショートや短編でまずは引き込んで、同じシリーズの長編にまでの導線をつくれば可能性はありそうです。
また、これが成功すれば、小説家になろうに対する世間のイメージも改善するでしょうし、運営の作品選びに対する信頼も生まれるでしょうから、徐々に積極的に長編をアピールするようにしても良いかもしれません。長編が紹介されるようになれば、メディア展開、IPビジネス展開もし易くなります。
インフルエンサー・マーケティングの有効な活用方法はまだ他にも考えられます。
例えば、運営側が世界設定、キャラクターデザインなどをした、“設定フレーム”を用意し、著作権の一部を確保しておきます。そして、小説家になろうに限り、それらをベースとした作品の投稿を許可します。設定フレームベースの作品のコンテストを開催したり、積極的に営業をすると発表をすれば、ユーザーに制作を促す事は可能でしょう。作品が集まって来たら、設定フレームベースの作品のうち、優秀なものだけをピックアップし、サイトの何処かに公開します。そして、そのページを、インフルエンサー達に宣伝してもらうのです。
運営が著作権の一部を持っていますから、もしヒット作が出た場合、大きな収益を得られるようになります。つまり、インフルエンサー・マーケティングのリターンがより大きくなるのです。
まだまだ活用方法は考えられます。
現在、小説家になろうでは、政治経済系が弱いですが、動画サイトでは人気コンテンツの一つになっています。ただし、投稿ネタが少ないらしく、困っている動画主も多いのだそうです。
ですから、小説家になろうに投稿された政治経済系の作品(主に、エッセイになるのでしょうか?)を、ネタとして政治経済系のインフルエンサーに提供すれば、恐らくは喜ばれるでしょう。わずかではありますが、宣伝で収益も得られますし。もちろん、斬新なものに限られるとは思いますが。
さて。
一見、この説明だとテンプレ作品にとって不利になっているように思えますが、インフルエンサー達の宣伝で集客ができれば、小説家になろう全体のアクセス数も増加するので、当然ながら、ポイントランキングの大半を占めているテンプレ作品へのアクセス数も大きくなりますからメリットがちゃんとあります。インフルエンサー達が集めるのは一般層で、なろうの登録者は少ないでしょうから、彼らに紹介された作品は、ポイントランキングでのライバルにはあまりならないのではないかと思われますので(もっとも、時間が経てばどうなっていくか分かりませんが)。
因みに、イラスト・マンガ・小説の投稿サイトであるpixivでならこれは実現可能です。最近になって、pixivでの小説投稿を僕は再開したのですが(流石にちょっと小説家になろうの運営方針に対する疑念が解消できなくなってしまいまして……)、投稿した作品の一つ、“水のようなもの”が、「編集部のおすすめ作品」に選んでもらえました。
どうもpixivでは、閲覧数の少ない良作を積極的に紹介してくれるようです。ポイント至上主義の小説家になろうとは大違いですが、これはつまりはpixiv運営がある程度は良作を把握しているという事でもあります。
残念ながら、pixivはイラスト・マンガが中心な事もあって、それほどアクセス数は伸びませんでしたが(それでも550以上はアクセス数が伸びたし、国外の方からもコメントしてもらえたりで嬉しかったです)、インフルエンサー・マーケティングに応用すれば効果は遥かに高くなるでしょう。
今回のインフルエンサー・マーケティングのアイデアは、pixivにも提案してみるつもりでいます。「編集部のおすすめ作品」に選んでくれた恩返しの意味もありますが、それだけではありません。現在、小説業界全体で新人発掘が難しくなっていますが、この方法が成功すれば、この問題が改善するからです。
現在の新人発掘の場である、文学賞は生成AIが原因で募集が増え、選定のコストが増大している所為で優秀な新人を選び難くなっていますし、小説投稿サイトは一部のジャンルに偏り過ぎている為に幅広いジャンルの新人をカバーできていません。例えば、現状では、文学作品の新人作家が小説投稿サイトからデビューする事はほぼ絶望的と言って良いでしょう。
が、ここで説明したインフルエンサー・マーケティングが成功すれば、新人デビューの新たな道が拓けるのです。
ポイント制と違い、ここで説明して来たインフルエンサー・マーケティングによる作品選定の場合、積極的にインフルエンサーが良作を見つけ(と言うよりも、フォロワーの誰かが見つけてくれる)、宣伝をする事に動機付けがあります。言うまでもなく、その方が報酬を得やすくなり、インフルエンサー自身の評価も上がるからです(逆に品質の低い作品は、インフルエンサー自身の評価を貶めてしまうので選ばないでしょう)。その為、優秀な作品が世に出易くなるので、有望な新人がデビューする機会が大幅に増えます。
そして、何処か一つの小説投稿サイトでこの方法が成功すれば、他のサイトでも真似をし始め、一般化する可能性がかなり高いです(小説以外でも、応用されるようになる可能性が高そうです)。つまり、始まりは、なろうでもpixivでも構わないのです。
そうなったら、小説家を目指している人は、ただただ良い作品を何処かの小説投稿サイトに投稿し続ければ良くなり、出版社はネット上で話題の新人を探せば、簡単に新人発掘ができるようになります。
余談ですが、或いはpixivでは小説の評価にAIを内部で用いているかもしれません。小説を投稿すると、レーティング判定が一瞬で行われるのです。……もしかしたら、単に単語を検索して判定しているだけかもしれませんが、だからこそ、閲覧数の少ない良作を把握できているのかもしれません。
なろうパートナープログラムで、なろう運営が作品の評価にAIを活用しているかどうかは不明ですが、膨大な作品を人手で評価できるはずはないので、もし活用していないのなら、今後は活用するべきでしょう。




