第6章 沈黙
連絡は、途切れた。
正確に言うと、
「終わります」という言葉があったわけではない。
ただ、次の指示が来なかった。
一日。
二日。
一週間。
スマホを確認する回数が、少しずつ減っていく。
ブロックされたわけでもない。
アカウントは、まだ残っている。
既読もつく。
それなのに、何も言われない。
待つ理由は、もうなかったはずだった。
でも、待ってしまっていた。
講義を受けて、
レポートを書いて、
友達とくだらない話をする。
生活は、いつも通りだった。
ニュースを見ても、
あの事件の続報は出なかった。
検索すれば、きっと何か出てくる。
でも、しなかった。
調べないことで、
「終わった」ことにしたかった。
夜、布団に入ると、
スマホを枕元に置く癖だけが残っていた。
音が鳴らないか、
画面が光らないか。
何も起きない。
それが、だんだん普通になる。
ある日、ふと思った。
このまま、一生、
何も起きなかったらどうなるんだろう。
捕まらない。
責められない。
誰にも知られない。
そういう未来が、
現実的に想像できてしまった。
怖さは、すぐに消えた。
代わりに残ったのは、
妙な軽さだった。
やってしまったことよりも、
何も起きなかったことのほうが、
強く記憶に残る。
それが、
一番よくない形での終わりだと、
薄々気づいてはいた。
それでも、
日常は止まらない。
スマホの通知欄は静かなまま。
連絡先の一覧に、
使わなくなった名前が一つ増えただけ。
沈黙は、罰ではなかった。
でも、赦しでもない。
ただ、
この件は、なかったことになった。
そう思えるようになるまで、
それほど時間はかからなかった。
ありがとうございました。
感想をいただけるとありがたいです。




