表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

第3章 条件変更

メッセージが来たのは、二回目の仕事の話をしていたときだった。


「次回もお願いできそうでしょうか」


一回だけのつもりだった。

そう言えば断れるはずだった。


でも、画面を見つめたまま、すぐには返事をしなかった。


理由は単純だった。

条件が、少しだけ変わっていた。


前回よりも説明が減っていた。

具体的だった部分が、曖昧になっている。


「前回とほぼ同じ内容です」

そう書かれていたけれど、**“ほぼ”**がどこを指すのかはわからない。


時間も、場所も、まだ決まっていない。

決まり次第連絡する、とだけある。


不安にならないような書き方だった。

慣れてきた相手に送る文章、という感じがした。


「詳細を教えてもらえますか」


そう返すと、少し間が空いた。


既読はつかない。

前回はすぐだったのに。


その間、何をしていたかというと、

特に意味もなく、ニュースを眺めていた。


朝、大学へ向かう準備をしながら、スマホでニュースを流し見していた。


地方の小さな記事だった。

見出しは短く、感情的な言葉も使われていない。


「不審物を介した事件について、警察は関連を調査中」


場所は、知らない駅名だった。

写真もない。

被害者の名前も出ていない。


記事を最後まで読んでも、何が起きたのかははっきりしなかった。

ただ、「第三者が関与した可能性」という一文だけが残った。


それだけだ。


スクロールして、次のニュースを見る。

天気。

芸能人の結婚。

値上げの話。


さっきの記事のことは、すぐに頭から消えた。


関係ない。

そう思う理由は、いくつもあった。


スマホを閉じて、講義に向かう。


ニュースの記事のことは、もう考えていなかった。

理由ははっきりしている。


結びつける必要がなかった。


駅も違う。

状況もわからない。

そもそも、自分は何もしていない。


落とし物を拾っただけだ。

誰かに渡したわけでもない。


そう考えることで、違和感は自然に薄れた。


午後になって、返信が来た。


「詳細は当日お伝えします」

「問題があれば、いつでも辞退可能です」


辞退可能。

その言葉を見て、少し安心した。


選択権は、まだ自分にある。

そう思えた。


それ以上、深く考えなかった。

考えないことに、もう慣れ始めていた。


スマホをポケットに入れて、歩き出す。


この時点では、

まだ何も起きていない。


少なくとも、そういうことにしておくことができた。

ありがとうございました。

感想をいただけるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ