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第1章 DM

スマホが震えたのは、講義が終わってエレベーターを待っているときだった。


通知は、見慣れないアカウントからのダイレクトメッセージだった。

アイコンは初期設定のまま。名前も、適当に英字を並べただけのもの。


「簡単な仕事に興味ありませんか?」


それだけの一文だった。


スパムだと思って、最初は無視した。

最近はこういうのが多い。

怪しい副業、投資、楽して稼げる話。全部同じに見える。


エレベーターが来るまでの数十秒、スマホをポケットに戻して、何も考えなかった。


寮に帰って、コンビニで買った安い弁当を食べながら、もう一度その通知を見た。

既読をつけずに、文面だけを確認する。


仕事内容の説明はなかった。

金額も、時間も、条件も書いていない。


ただ、「学生歓迎」と「即日報酬」という言葉だけがあった。


怪しい。

そう思った。


でも、それ以上に強く思ったのは、自分には関係ないという感覚だった。


闇バイト、という言葉はニュースで聞いたことがある。

でも、あれはもっと切羽詰まった人間がやるものだと思っていた。


借金があるとか、追い詰められているとか。

少なくとも、自分じゃない。


実家からの仕送りは少ないけど、ゼロじゃない。

バイトも探せばある。

今日の弁当だって、食べられないほど困ってはいない。


だから、関係ない。


そう判断して、スマホを伏せた。


それでも、数分後にまた画面を開いていた。


理由は特にない。

暇だっただけだと思う。


メッセージはまだ未読のまま残っている。

こちらが何もしなくても、相手は何も言ってこない。


「一度だけ話を聞くくらいなら」


口に出さず、頭の中でそう言い訳した。


返信欄に文字を打ち始めて、消して、また打つ。

「興味あります」

それだけでよかった。


送信ボタンを押したとき、特別な感情はなかった。

ドキドキもしなかったし、後悔もなかった。


ただ、

自分が何かを選んだ、という自覚だけが、あとから遅れてきた。

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