56.胸の奥の青
――晴天に包まれている、学校からの帰り道。
私と佐知は肩を並べ、校門を出た。
蝉の大合唱が蒸し暑さを後押しして、額に汗がびっしりと浮かぶ。
佐知はハンディーファンを首元に当てたまま、私の襟元をひょいと覗いた。
「最近そのネックレス、よくつけてるね」
「あ、これ?」
私は、ワイシャツの中からネックレスを取り出し、キラリと光る鈴を見せた。
彼女はじっと見つめた後、うんうんと頷く。
「よく見たら、小さい模様が入ってるんだぁ。すっごく似合ってる」
「えへへ。これは、青空くんからのプレゼントなんだ!」
彼が、唯一残してくれた大事な宝物。
無意識のうちに触ってしまうほど。
「青空くんって、センスあるね」
「でしょでしょ! すごく気に入ってるの。赤い色が好きだし」
プレゼントしてくれた時のことを思い出すと、嬉しくて口元が緩んだ。
どんな顔をしながら選んでくれたのかなって、想像するだけで幸せな気分に――。
「実は青空くん、美心の誕生日プレゼント、なにがいいかって聞いてきたんだよ」
「えっ、そうなの?」
きょとんとした目を向けた。
佐知に相談するなんて、思いもよらなかったし。
「美心と仲直りした直後だったから、あんまりいいアドバイスはできなかったけどね」
彼女はハンディファンに目線を落として、ふっと息を漏らす。
「サプライズパーティーをしようって言ったら、青空くんは部屋の飾り付けの提案をしてくれたんだよ」
「そうだったんだ」
青空くん、私を喜ばせてくれようとしてくれていたのかな。
「それと、どうして美心の力になるのか気になって聞いたら、美心の笑顔が幸せな気持ちになるってね」
「……やだ、青空くんったら」
嬉しくて、頬が赤くなる。
「日本人なの? って疑っちゃうくらい、バカ正直だったよね」
「私も同じことを思ってた。一瞬、告られてるのかなって勘違いしたこともあったし」
過去を思い返した瞬間、クスッと笑みがこぼれた。
「でも、そういうところも含めて好きだったんだ」
「美心……」
「私、自分の気持ちに気づかなかったなんて、ホント笑える。でも、早くに気づいてたら、この恋はどこへ向かってたのかな」
鈴をぎゅっと握りしめたまま青い空を見上げて、彼を想う。
『世界で一番大好きだ』って言ってくれたこと、一生忘れない。
追い風がネックレスの鈴を鳴らし、冷え切った心を少しずつ温めていた。
ふと空に浮かぶ笑顔に、瞳が熱く潤む。
「あ、そうだ! これから駅前のカフェに行かない? 今日から新商品が始まったんだよねぇ〜」
佐知は私の顔を見て、ニコリと微笑んだ。
私が感情的になってたから、気を使ってくれたんだろう。
「ごめん、また今度」
私は小さく笑って返した。
これから、どうしても行きたいところがある。
彼と繋がっていられる、唯一の場所へ――。




