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54.ずっと君の傍で
僕はぬいぐるみ。
生まれた頃から意志など関係ない。
人間に未来を預けてきた。
美心に会う前は、もうこのまま消えてしまうんじゃないかと思うこともあった。
未来や希望を持つことも、ままならなかった。
でも、美心に出会ってから人生が変わった。
家族のように大切にしてくれたから。
美心が教えてくれた優しい言葉を、一つ一つ覚えて、自分のものとして伝えてきた。
……とても、幸せだった。
目も体も動かせず、喋ることもできなくなったけど、ちゃんと生きてる。
ただ、不満が一つ。
美心が涙を光らせていても、拭ってあげれないこと。
静かな部屋でも、ちゃんと耳を傾けている。
愛しい香りに包まれても、僕はただ身を預ける。
――それが、運命。
最初から人間になれない覚悟を決めていた。
だから、大丈夫。
約束は、守り通さなければならないことを知っている。
でも、美心に幸せな未来が訪れるよう、ずっと願い続けることを約束する。
感謝の気持ちは変わらない。
たとえ、この口がもう二度と動かなくても。
だから、もう泣かないで。
こんな姿になってしまったけど、ずっと傍で見守るし、幸せを願い続けるよ――。




