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24.影の隙間



 ――同日の夜。私は自宅の部屋で、チェスト上のクゥちゃんの写真を眺めていた。

 灯り一つの部屋は、沈む心を静かに映している。


 佐知と話さなきゃいけないことくらい、わかってる。

 でも、絶対に言い訳される。

 

 けれど、今日の瞳の奥には、何か強い思いが宿っていた。

 訴えたい何かが、私の目に焼き付いたように離れない。

 青空くんたちとの楽しかった時間も、佐知の顔を見た途端に色褪せていく。


「私が落ち込んでたら、クゥちゃんも悲しくなっちゃうよね」


 代わり映えしない写真に、ふぅとため息をつく。

 クゥちゃんがいた頃は、丸一日の出来事を話していた。

 いまは話しかけることも、思い出すこともなぜか減っている。


 思い続けなければ、クゥちゃんは消えてしまう。

 なくしたのは私なのに、酷いよね。


「ねぇ、クゥちゃん……。これは強くなれる飴なんだって。青空くんが教えてくれたものなんだよ」

 

 学校帰りに買ってきたブドウ飴を、クゥちゃんの写真の横に添えた。

 一日でも早く戻ってきますように。

 まずは、私が強くならなきゃね。


 カーテンの隙間から、車のライトの光が差し込んだ。

 それを軽く浴び、ブドウ飴をもう一つ手にとった。

 ベッドに転がって、ブドウ飴を掲げ、楽しかった頃の思い出に浸る。

 光を宿したブドウ飴が、青空くんの笑顔と重なって見えた。


 最近、学校がすごく楽しい。

 青空くんが友達になってから、賢ちゃんとも友達になった。

 明日が待ちきれないと思うようになったのは、きっと初めての青春をしているから。

 

 ――でも、佐知の姿が、みんなの笑い声をかき消す。

 

 私、このままでいいのかな。

 佐知が声をかけてくる回数が増えた。

 仲直りしたいって。


「ううん。私が引く要素なんて一つもない」


 ノートの切れ端を捨てた時点で、関係は終わった。

 佐知が何度話しかけても、受け入れられない。


 ブドウ飴を握りしめ、枕に顔を埋めた。

 こんなに冷たく反発しているのに、佐知は諦めてくれない。

 息苦しく感じるのは、あの日がまたここに戻ってきたみたいで――。



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