1/38
プロローグ
――僕は、このまま誰にも知られず消えると思っていた。
目覚めた瞬間から、選ぶ自由がなかった。
最後に触れた温もりは、もう遠い昔のこと。
ホコリまみれの体。縫い合わされて、開かない口。
感情は宿っていたのに、伝えることができない目。
やがて僕は、心を置き去りにされ、冷たくなった。
最後の日。夢や希望も失い、存在する意味さえ消えた。
もう終わりだと思った。――その時。
温かい手が、僕に光をもたらしてくれた。
もう二度と、触れられることがないと思っていたのに。
後で知った。
赤く充血した彼女の瞳に込められていた意味を。
僕の頬に彼女の雫が染み込んだ。
その瞬間、胸が痛み、瞳に初めて光が宿った。
彼女が手を差し伸べてくれたあの日のように、僕は力になりたかった。
チェストの上から眺めているだけじゃ、彼女を救えない。
だから、決心した。
――今度は、僕が彼女の力になる番だ。




