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筋肉オネェ様はへっぽこ男子の恋愛アドバイザー  作者: みん


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6/12

lesson5


 「やぁ、君がエリオットくんか!エリ坊、だっけ?俺はグロッド・マリンレーヴェンだ。よろしくな!」

 「まぁ、可愛らしい方! ごきげんよう、私はディラ・マリンレーヴェンです。よろしくね」


 高貴なオーラをふんだんに振りまき、輝くばかりの美貌を持つ御二方……。

 彼等は、この国の王太子グロッドと、その王太子妃ディラであった。


 式典で物凄く遠くからしか見た事の無かった王太子夫妻に、エリオットは完全に思考停止する。

 

 「やーん、ディラちゃん今日も可愛いわね! 待ってたわよ~!」

 「おいおい、俺の事は無視かよ」

 「ふふっ、グロッドの事だってちゃんと歓迎して下さってるわよ」

 「まぁ、ついでに、仕方なくね!」


 話に聴いていた通り、フィリップスと王太子は本当に仲が良い様だ。

 でもなんでここに? エリオットが頭に疑問を浮かべていると、ばっちり王太子妃様と眼が合う。

 彼女は優しく微笑みながら、マリンブルーの髪を揺らしてエリオットに近付いてきた。


 (わ~、本当に瞳が金色だぁ。凄いな~)


 エリオットは緊張を通り越して、やや現実逃避をしながら王太子妃を眺める。

 人は綺麗すぎる人を見ると、惚れるとか通り越して崇拝の域に達するのだと、エリオットは思った。


 「そんなに緊張なさらないで? 私達、今日はエリオットさんに会いに来たの」

 「はぇぇ?」

 

 意味が分からなさ過ぎて、王太子妃様に向かって変な声を出してしまう。

 まずい、処刑かな。

 だが、王太子妃はくすりと笑って、顔を寄せてくる。

 まずい、近すぎる、なんか良い香りする。


 「ディラ、近い」


 エリオットが焦りまくっていると、嫉妬心を露わにした王太子が、彼女の肩を持って自分の胸に収めた。


 「あらごめんなさい、イスラさんに聞かれるといけないと思って」

 「イスラちゃんならとっくに案内を終えて出て行ったわよ、取り敢えずソファにどうぞ」


 どうやら王太子妃はエリオットに耳打ちしようとしていたらしい。

 止めてくれて良かった、殺されるところだった。


 王太子は当然の様に妻を膝の上にのせて、ソファに腰掛ける。

 エリオットは、妻を眺めながら余りにも甘い雰囲気を(かも)す王太子の色気に酔いそうになった。

 

 「エリ坊もアタシの横に座んなさい」

 「えっ! いえいえいえいえ無理で……」

 「座る!」

 「は~い!」


 エリオットは、フィリップスの一喝に、俊敏に示されている場所に座った。


 「ははっ! 本当に弟子なんだなぁ! こんなに良い子なんだから、もうちょっと優しくしてやれよ」

 「充分すぎる程優しいわよ? ね、エリ坊」

 「はいっ! 怖いけど優しいです!」

 「一言余計なのよ、このあんぽんたん!」


 フィリップス必殺肩パンが炸裂する。

 痛がって呻くエリオットを見て、王太子は笑い、妃は心配そうに口に手を当てていた。


 「じゃあ早速、対イスラちゃん向けの会話練習をするわよ」

 「なんですかそれ?」

 「私達、今日はこの為に来たのよ。フィリップス様とエリオットさんの会話を見て、指摘して欲しいんですって」


 そんな事の為に王族をわざわざ呼んだのか、この筋肉は。

 エリオットはあまりの恐れ多さにガクガク震え、フィリップスに問い掛ける。


 「な、なんで王族の方を……⁉ うちの両親とかでもよくないですか⁉」

 「だってアンタ、イスラちゃんの前だと今と同じくらい緊張してるじゃない。空気に慣れる為に良いと思ったのよ」

 「おぉ? 好きな子の前では堂々としてた方がいいぞ! 礼儀とか気にしないから、存分に練習しよう!」


 王太子は快活に笑うが、エリオットは礼儀とか全然気にする。

 だが、来てもらった以上、やらない方が失礼な気がする。


 「すみませんすみません、よろしくお願い致します!」

 

 勢いよく頭を下げたエリオットは、ゴン! っと眼の前のテーブルに頭をぶつけた。


 「まぁ、大丈夫?」

 「だい、大丈夫です!」


 心配してくれる王太子妃は本当に優しい。

 

 「そう? イスラさんの事だけど、私いつも接客して貰っているから、ある程度彼女の性格は把握しているのよ。イスラさんに伝わらなさそうな返しには、修正を入れるわね」

 「俺は男らしい話し方を教えろって頼まれたんだが……。やってみないと分からないしな、取り敢えず会話してみてくれ」


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