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出来損ない令嬢と蔑まれたわたくしが、聖女の妹と国を見捨てたら、渇望の果てにひざまずいたのはそちらでした  作者: 九葉


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8/8

最終話

それから、一年後。

ザラームは、建国以来の祝祭ムードに包まれていた。

カイン公爵と、豊穣の乙女リリアーナの結婚式が執り行われる日。


わたくしは、純白のウェディングドレスに身を包み、鏡の前に立っていた。

ドレスの胸元には、カイン様から贈られた、彼の瞳の色と同じ赤い宝石のネックレスが輝いている。

鏡に映る自分は、まるで別人のようだった。

かつての、俯きがちで自信のなかった少女は、もうどこにもいない。

そこにいたのは、愛する人の隣に立つにふさわしい、誇りと幸福に満ちた一人の女性だった。


大聖堂の巨大な扉が開くと、眩い光と共に、割れんばかりの歓声が降り注いできた。

参列したザラームの民たちが、皆、笑顔でわたくしたちを祝福してくれている。

ゆっくりとバージンロードを進むと、祭壇の前で、カイン様が今まで見た中で一番優しい顔をして待っていた。


彼の手を取り、神の前で永遠の愛を誓う。

交わした口づけは、甘くて、温かかった。


「豊穣の公爵妃、リリアーナ様に万歳!」

「黒公爵カイン様に万歳!」


民の祝福の声が、いつまでも、いつまでも鳴り響いていた。


そして、さらに月日は流れ、三年の時が過ぎた。


「まあ、アレン。そんなに走ると転びますよ」


「きゃっきゃっ!」


完全に蘇った神木の、涼やかな木陰の下。

柔らかな芝生の上を、漆黒の髪とアメジストの瞳を持つ小さな男の子が、たどたどしい足取りで駆け回っている。

わたくしたちの愛の結晶、アレンだ。


「ははは、元気な子だ。君に似たのか?」


隣で微笑むカイン様の肩に、そっと寄りかかる。

彼の腕が、優しくわたくしの肩を抱き寄せた。

穏やかで、満ち足りた午後。

これが、わたくしの日常。わたくしが手に入れた、かけがえのない宝物。


(出来損ない、と呼ばれていた日々が、まるで遠い夢のようですわ)


でも、とわたくしは思う。

あの理不理尽な日々があったからこそ、人の優しさの温かさを、心から感じることができるのかもしれない。

絶望の淵に立ったからこそ、今ここにある幸せの尊さを、誰よりも深く理解できるのかもしれない。


偽りの評価に惑わされず、わたくしの本当の価値を見つけ出し、その手を差し伸べてくれた人がいたから。

だから今、わたくしはここにいる。


「カイン様」

「ん?」

「わたくしは今、世界で一番、幸せですわ」


見上げて微笑むと、彼は愛おしそうに目を細め、わたくしの額に優しいキスを落とした。


「俺もだ、リリアーナ」


吹き抜ける風が、神木の葉を揺らし、キラキラとした木漏れ日を降らせる。

それはまるで、世界中がわたくしたちの幸せを祝福してくれているかのようだった。


かつて、地味で取るに足らない力だと思っていたわたくしの魔力。

今なら分かる。

この力は、誰かを、何かを、心から愛おしいと想う心にこそ、応えてくれるのだと。


愛する夫と、愛する我が子。そして、わたくしを愛してくれる、この国の全て。

わたくしは、この温かい腕の中で、あなたたちの隣で、これからもずっと、咲き誇っていく。

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