9. プロポーズ
せっかくなので、ステーキハウスにはドレスアップしていくことにした。手持ちのドレスから黒いカクテルドレスを選んだ。抑発情剤を飲まなくなってから、少し体重が戻ったから入るかどうか心配していたけど、何とか大丈夫だった。今日は、カイもいつになくおしゃれをしている。
ステーキハウスではその店のシグネチャーだという、リブアイステーキを注文した。厨房から漂う肉の焼ける匂いに食欲がそそられる。
ついに我々の前に、リブアイステーキが運ばれてきた。
「うわぁー大きい。食べきれるかな?!」
「食べきれない分は俺が食べるから大丈夫だよ。」
ウェイターが丁寧に切り分けてくれる。中はきれいなミディアムレアだ。初め食べきれるかどうかの心配をしていたのが嘘みたいに、きれいさっぱり食べきった。本当においしかった。
「ちょっといいか。」
カイがおもむろにポケットから小さい箱を取り出した。
「ずっとお前のことが気になっていた。魔術が大好きで、誰よりも熱心に魔術の研究をしているお前が。今回一緒にバディ組んで、この調査だけじゃなくて、生涯のパートナーになりたいと思っていた。だから決して"番"だからってわけではない。でも君と"番"でよかったと心の底から思っている。君を必ず幸せにする。俺と結婚してくれ。」
箱の中身は、二つの花が絡み合うようなデザインのペンダントだった。金色の花弁の真ん中に埋まる宝玉は、一つはトパーズで、もう一方はサファイア。すぐに分かった、彼の瞳の色だと。
「お前、王妃墓で赤い宝玉のついたペンダントをじっと見ていただろう。だから結婚の申し込みで送るならこれだと思ったんだ。」
「…カイ、ありがとう。こちらこそよろしくお願いします!」
早速ペンダントをつけてみると、黒いカクテルドレスによく映え、とても美しかった。うれしさで目に涙があふれてきた。
「お、おい。泣くなよ。」
「だって、もううれしくて。」