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7. 匂いのある世界

嗅覚が戻って、色々な匂いを感じ取った。もともと犬獣人は嗅覚が敏感なのだ。カイから発せられる甘い番の匂いに、草の匂い、そして土の匂い…。まるで白黒の世界から色彩にあふれた世界に戻ってきたような感覚だった。


メッツァの集落に着くと、宿の女将さんが我々が昨晩戻らなかったことを心配してくれていた。事情を説明すると、まだ早いのに朝食を用意してくれた。色々と申し訳ない。


「はーい、スクランブルエッグとベーコン。パンはメッツァ特産のブルーベリーのジャムをたくさん付けて食べてね。」


「ありがとうございます!」


ベーコンの香ばしい香り、卵にからまるバターの香り、ブルーベリーの甘い香り、そして淹れたてのコーヒーの香り。どれも食欲を刺激する。久しぶりに食事をおいしい、楽しいと感じた。もぐもぐもぐもぐ――次々に食べ物を口に運ぶ。夢中になって食べていると、向かいの席のオッドアイに、じっと見つめられていることに気づいた。


「お前がこんなにおいしそうにものを食べるのを初めてみた。俺と喧嘩しても二度とあの薬だけはもう飲むなよ。……まあ喧嘩しないと思うけど。」


「うん」


思わず、尻尾が立った。


「あ!尻尾立った。やっぱり、かわいいな。ふふ。今回の出張が終わったら、すぐに籍を入れよう!」


番同士だと婚約期間を経ずに結婚できる。でも、プロポーズの言葉は、もうちょっとちゃんと考えて欲しい。


「うーん。プロポーズの言葉とかないの?」


ぷくっと頬を膨らませると、笑いながら謝られた。


「ごめん、ごめん。王都に戻ったらちゃんとやり直す。だから許して。」


「楽しみにしているから!」


「怒った顔もカワイイ。また興奮しちゃった。」


食事の後は部屋に戻って仮眠をとることにした。カイが離れたがらないから、同じ部屋を使うことにした。二人で寝るにはシングルベッドは少し狭かった。

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