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07 勇者と師匠①

 物語も折り返しに入りました。

 ここで一度、これまでの登場人物を整理してみます。


◉シビカ・ネガロ・アクトラーナ

 アリス王国の男爵。元はゴロツキ部隊を率いる軍人だったが、功績を評価され貴族に引き上げられた。

【神槍の勇者】であるが、その事実を隠している。


◉ティアージュ・ドラナーク

 キィーフ王国の公爵令嬢。血統魔法の有無が絶対的なキィーフで時空魔法を使えないことから【無能】と罵られてきた。また、一定のストレスが心にかかると気を失ってしまう病に罹ったことで【昏睡令嬢】と陰口を叩かれ、王太子との婚約を破棄されてしまう。金髪縦ロールの美しい淑女。実は聖女の力を持つと判明。


◉ロゼ

 シビカが養子にした貧民窟の少女。シビカのために弓の技を学び、名手と呼ばれるまでになった。褐色肌にポニーテールの美形。


◯シキ

 ティアージュの従者。褐色肌の戦士職。



◯ネオ・ドラナーク

 キィーフ公爵。血統第一主義のため、公爵家にとって役に立たなくなったどころか脅かす存在となったティアージュを、丁度その場にいた異国の貴族であるシビカに押しつけた。


◯ラトゥージュ・ドラナーク

 ティアージュの妹。時空魔法を発現させたことで父親からの寵愛を受け、姉を見下すようになった。


◯カルアン・ケンヨウイン

 キィーフ王子。ティアージュとの婚約を破棄し、モーナを選ぶ。


◯モーナ・カーノ

 カーノ伯爵の令嬢。



◯ミカド・ケンヨウイン

 キィーフ王にして、かつて人族を救った四祖の生き残り。



◯メルサム・テラスエンド

 キィーフ王国の子爵。ティアージュを狙う。

◯ポッツ・テラスエンド

 テラスエンド子爵の令息。兄。

◯ケッツ・テラスエンド

 テラスエンド子爵の令息。弟。一度シビカと交戦し、逃げ帰っている。


◯サクリ・メーギッド

 キィーフ王国の伯爵。ティアージュを狙う。

 老執事ホルダを差し向けたが、失敗に終わった。



◯エマ・サヒージュ

 サヒージュ商会の頭目。若い女。ティアージュが聖女であることを知っていて黙っていた。



◯ベギナラ

 シビカの家臣団の筆頭格。ソフトモヒカンに顔面タトゥーのヤバい見た目。盗賊職。


◯ハビィ・バッシャ

 シビカの家臣団の一人。騎士爵家の三男で、学のある有能タイプ。僧侶職にして凶状持ち。


◯ロサリグ

 シビカの家臣団の一人。剣士タイプの戦士職。口が悪い。



◯グラッパレット・トライハント

 アリス王国伯爵。シビカを気に入り、貴族へと引き上げた人。



 ドバイの山羊亭に向かわせたのは、俺の部下の中でも特に荒事に長けた六人だった。


「やっべ! これ、ハビィさんの回復魔法と全然違うじゃん! オイラこっちのほうが好きっすわー!」


「あ、ありがとうございます」


 他人から投げかけられる感謝に、いちいちティアージュは身体を強張(こわば)らせてしまうのだが、そんな御令嬢に対し、緊張感の欠片もなく、締まりのない顔をした大男は不思議そうに「ん?」と小首をかしげてみせた。


「感謝を感謝されるのって、ちょっとこそばゆい(・・・・・)っすね!」


 この、頭の悪そうな大男の名はベルモネ。


 うちの家臣団の中じゃ若いほうになるが、当然ながら軍人として俺と幾多の戦場を生き延びて来た精兵だ。


 一見すると、「毛玉のような男」という印象が強い。


 伸ばしっぱなしな上に生来のクセ毛らしく、その濃い茶色の頭髪は、さながら渦を巻いたようになっているのだ。また、剃る行為自体を面倒に感じているのか、好き放題に伸ばした結果、顔の下半分までがヒゲに侵蝕されてしまっていた。


 体毛も多く、腕も脚も胸板もフッサフサだった。


 それを恥じるも隠すもなく、むしろ逆に露出の多いノースリーブのワイシャツを愛用して誇示していくさまは、ちょっとした凄味まで感じさせるほどだ。


「こんなん個性っすわ」


 そう言って(はばか)らないベルモネは、俺に頭一つ届かないものの十分すぎる長身で、腕っぷしも強かった。


 年齢(とし)を取ってやや丸くなったベギナラの、かつての無軌道なパンクっぽさがベルモネには未だ残っていた。


 まあ、そんなんだから真っ先に突っかかるし、反撃も受けがちになる。ドバイの山羊亭での戦いにおいても、ベルモネの負傷が一番酷く、ならばとティアージュの御手(おて)を拝借となった。


「私としては、実感が湧かないというのが、正直なところなのです」


 ベルモネの傷は打撲痕(だぼくこん)刺創(しそう)であった。

 致命傷というほどではないが、それなりのもの。


 ところがティアージュの光は、俺の時と同様、(あと)すら残さず傷を消し去ってみせたのだ。


 ベルモネは僧侶であるハビィの回復魔法を受けたことがあった。ゆえにティアージュの光がヒールとは別種のものであることが、実感として理解できているのだ。ビフォーとアフターで、ティアージュを見る目が明らかに変わっていた。


 しかし当のティアージュはというと、自らの手のひらを、釈然とせず、心許(こころもと)なげに見つめるばかりだ。


 まあ、無理もない。


 これまで生活魔法の灯明(ライト)として魔石に補充してきた光が、実は魔物を滅ぼし人を癒やす、奇蹟に等しい(たぐい)のものであったなど、そうそう容易には信じられまい。


「特技が見つかった、程度でいいんじゃないか」


 だから俺は言う。


「特技……ですか」


「振りまわされる必要はないってことです。これまで十分、血統やら何やらに翻弄されてきたんだ。また変な何かが出てきて、じゃあ今度はそれに引きずられて行くのか、てなもんでしょ?」


「ふふ。そうですね。私は私、ですものね」


 俺としては深刻に捉えず、ゆるく気楽に行こうぜ、くらいな感じで言ったのだが、どういうわけかティアージュは口もとに手を当て、幸せそうに笑うのだった。


「…………?」


 笑いどころが分からず困惑する俺を見て、なぜかシキとベルモネまで笑い出した。



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