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05 勤勉と怠惰④


 ドアを開けると、眼下に寝間着姿のティアージュがいた。


「…………」


 目の毒だ。


 襟こそ余裕がある開きになっていたが、それでも胸元が隠された、地味な白いワンピース型の寝間着。


 身体の線が見えないように配慮された厚手の生地も、ティアージュの双丘の膨らみまで隠しとおせるものではなく、むしろバストトップからストンと下まで布地が垂れ下がることで、乳の張り具合が妙に強調されてしまってるのではないかと、そんな危うさすら感じられる始末だった。


 勿論、大きい小さいは個人差で、そこに貴賎(きせん)はない。


 身長と一緒だ。


 でかい図体は近接戦闘で有利になる一方、弓兵などにとってはいい(マト)にされるだけという不利な点もあって、実際問題一長一短だ。


 俺はスレンダーなロゼの小さな膨らみだって素敵だと思っている。ただ、改まって口に出すことがないだけの話だ。


 ティアージュのそれは、平均値からするとおとなしいほうになる。少し大きめな程度だ。問題は、大貴族の子女にしては痩せすぎている身体だった。


 細い身体では、少し大きな果実であっても殊更に誇張されてしまうのである。


「あの、入ってもいいでしょうか」



 ──こんな夜更けに、男の部屋に?



 一瞬、ほんの一瞬だが、魔が差しそうになった。


 俺は顔だけひょいと廊下に出して、左右を確認する。


 うん。少し離れた位置にロゼとシキが立ってるね。


 良かった良かった。


 危なかった。


 何もかも投げ捨てて、ティアージュの手を引き無理やりベッドに押し倒して、情欲のままに精をぶちまけるところだった。


 野獣以下になり果てる寸前だった。


「……男爵様?」

「ははは。どーぞどーぞ。座って座って」


 俺はベッド────ではなく、部屋の端にある壁際のソファにティアージュを案内し、自身はデスクの安楽椅子に腰掛けた。


 距離を置くことで衝動に首輪をかけてやった。


「仕事の件だったら安心してくれ。すぐに済んでしまうかもしれないが、滞在費分の内容であることは保証する」


 本来、魔石一つの補充には一時間は必要らしい。しかしこれがティアージュにかかると五分で終わる。明らかに異常だったし、それを誰も気にしなかったキィーフ王国やドラナーク公たちもまとめて阿呆であるとしか言いようがなかった。


「ありがとうございます。……ですが、そうじゃないんです」


 少し歯切れが悪かった。


懺悔(ざんげ)を、しに来ました」


 視線を落とし、両手を合掌するようにして力を入れていた。


「聞くよ」




「無能じゃないんだと、安堵してしまいました」


「…………」


「結局、気にしていたんです。父から、妹から、私を取り巻くすべての人から笑いものにされていても、与えられた、果たすべき責務と向き合って、日々を正しく生きてさえいたら、いつか……いつか父も認めて、褒めてくれるんじゃないかって、そういうつもりでいたんです」




「なのに私、男爵様に認めてもらえて、最初に思ったことが『良かった』なんです」




「私が、誰より私を騙していたんです」


 ぽろぽろと、ティアージュの瞳から涙がこぼれ落ちた。



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