04 悪虐領主と囚われの姫君②
俺の対人を見たいとシキに乞われた。
対魔物の時の動きは肉の調達時に見てもらっているので、次にそうなるのは自然な流れではあった。
シキにしてもティアージュを護衛するにあたり、俺がどこまでのものなのかは把握しておきたいとこだろう。
実際、冒険者にも少なくないのだ。
魔物相手なら白銀級の立ちまわりをするのに、対人だと何故か青銅級下位レベルまで落ちてしまうタイプが。
またその逆、人相手だとめっぽう強いのに、魔物相手になるとからっきしなタイプもいた。
シキはそれを懸念したのかもしれない。
俺が名を上げたのだって、魔物相手の戦だしな。
そんなわけで、屋敷の外で対峙した。
「いつでも」
俺は訓練用の模造槍を手にし、準備が整ったことを伝えた。
持ち手も木製なら穂先も木製。とはいえこれで突かれ、叩かれたら当然かなり痛い。
まあそれは向こうも同じ条件か。
シキは木剣を手にしていた。
──剣士タイプの戦士。
ロゼと同じ、赤い髪をしていた。
肌も褐色で、瞳の色も同じだ。
違いは髪の長さと、肉付きの違いくらい。
背は少しロゼのほうが高いかもだ。
二人の顔立ちはとてもよく似ていた。まさか親族とかいうオチじゃないよな。
あ、ロゼが弓、シキが剣と、そこの違いもあるか。
職能戦士といっても、その型は実に多彩で、正直なところ俺もすべてを把握しているわけではなかった。どちらかというと、よく分かってないほうなのかもしれない。
それでも、大前提として戦士にはクラス固有のスキル攻撃がないことくらいは知っていた。
技ならある。だがそれは個人が使う武器を突き詰めた先のものというだけで、その職能であれば誰でも使えるとか、そういう便利な何かはないのだ。
では弱いのか?
んなわきゃない。
身体能力、特に筋力や回復力の向上は目を見張るばかりだし、武器に関する制約も戦士にはない。好きな武器を使い、使い続けることで練度も上がり強くなっていく。
単純な強さこそが戦士の持ち味だった。
「ではこちらから」
シキは切っ先をこちらに向けた基本の中段構えから、右足を引き、左肩を俺のほうに出す半身になった。
構えた剣は、前ではなく後ろ。
俺の目から刀身を隠すような、大胆な脇構えに移行した。
普通なら、槍の突きに対して無防備に身をさらしてしまっているだけで、悪手以外の何物でもないのだが──消えた。
戦士の身体強化補正とシキ本人の持って生まれた資質、そして鍛錬が可能にした、爆発的な加速力による打ち込みだった。
「シッ!」
脛斬り。
俺の半歩前に出した左足めがけ、極限まで低く屈んだシキが泳ぐように繰り出した会心の一撃は、しかし俺が地に突き立てた槍に阻まれた。
「狙いは良い」
素直に褒めた。
ただでさえ剣と槍では間合いが違う。そこへ来て、更に俺とシキの身長差を加味すると、何とも絶望的な、まともにやってたらまず届かないほどのリーチ差になってしまう。
捌くだけに徹したなら、お茶を濁して凌ぐことはできたかもしれない。でも、それだけだ。負けはしないが勝てもしない。何の意味もない試合になっていただろう。だからこそ、果敢に攻めてくれたシキの気持ちの強さに俺は感じ入ったのだ。




