アピちゃんチーム
「はぁ……ぴ」
アピィは眠そうに大きなあくびをします。
「アピィちゃん、お疲れのところすみません」
「はぁぴ」
「アピィちゃんが夜更かししなくても済むように、アピィちゃんの担当業務を昼夜で二交代制にしようと思っているのです」
眠らないように見えて、実はスイボにも睡眠が必要です。いつも寝ているピケはともかく、アピィが頻繁に夜更かしすることになるのは、アピィの健康にも良くありません。
「はぴ?」
「ぽふぃぽふぃ」
「はぁぴ」
なるほどねぇというように、アピィは頷きます。
「スイちゃん、アピィちゃんと同じクラスで、同僚にぴったりのスイボを探してテイムをお願いできますか?」
「ぽふぃ♪」
スイはふわりと幻空間に潜りました。
しばらくして、スイは幻空間から勢いよく飛び出します。
「ぽ~ふぃ!」
スイは、一匹のスイボの口腕を引いていました。
スズランの花のように愛らしいきゅるんとしたシルエットはスイやアピィと同じです。しかし、アピィとは色違いで、傘の縁にピンク色の水玉模様がありました。
「はぴっ?」
アピィと似ていますが、明瞭で少し高い声色です。
「はぁぴ!?」
アピィが驚いて、その子に近寄ります。
「はぴっ!?」
二匹は口腕を取り合って、くるくると回りながら喜んでいます。
「二匹は知り合いなのですか?」
「ぽ~ふぃ」
ちょっと違うようです。
「もしかして兄弟姉妹ですか?」
「ぽふぃ♪」
「では、感動の再会なのですね。あえて探したのですか?」
「ぽふぃ!」
スイはドヤ顔でわたくしを見上げました。
スイボは卵生のため、孵ったときが今生の別れ。親とも兄弟姉妹とも離ればなれです。そうして、幻空間の大海原を孤独に漂うのが彼らなのです。それでも、お互いを大切に想う気持ちは繋がっているのでしょう。
――エーテルネット
お互いを大切に想うスイボ達の繋がりを、わたくしはそう呼ぶことにしました。もしかすると、テイムの関係もエーテルネットの一種なのかもしれません。
「スイちゃんにも実の兄弟姉妹がいるのですか?」
「ぽふぃ!」
「スイちゃんも、いつか会えるといいですね」
「ぽふぃ♪」
さて、ここからはいつも通りです。スイがテイムし、わたくしが自己紹介します。
「お初にお目にかかります。スイをテイムしているスタッカです。以後お見知――」
「はぴっ!」
食い気味に返事をします。この子はアピィとは対照的に、せっかちな性格のようですね。
「では、ステータスを拝見します。ステータスオープン」
――クラス:ボット
クラスはアピィと同じボットです。
「スイちゃん、この子にも名前を付けましょう。アピィちゃんと似た名前が良いですね」
「ぽふぃ♪」
「そうですね……。アピエッタという名前はどうですか?」
「ぽふぃ! ぽふぃぽふぃ?」
スイが尋ねると、アピィとアピエッタ(仮)は笑顔でくるりと一回転しました。
「はぴっ♪」
「はぁぴ♪」
スイもわたくしに振り向いて、頷きます。
「ぽふぃ♪」
「それでは決まりですね。アピエッタちゃん、よろしくお願いしま」
「はぴっ!」
やはり食い気味で返事をするアピエッタです。表情を見る限り、恐らく人の言葉は解していません。きっと生返事の類なのでしょう。お母様の説教を聞き流しているときのお兄様にそっくりです。
「アピエッタちゃんには、先輩のアピィちゃんとチームを組んで、昼夜二交代制で畑を守ってもらいます。名付けてアピちゃんチームです」




