検討
「……とは言ったものの、スイちゃんなしでは中々難しいですね」
「ぽふぃ……」
スイをお母様の部屋に派遣すれば、スイがお母様の言葉を聞き取って、シーリングライトのスイボに点灯や消灯を命じることもできるでしょう。しかし、いくらお母様とはいえ、スイを貸し出すのは不安があります。それに何よりスイが身近にいないのは寂しいのです。
「ところで、スイちゃんは、何匹までテイムできるのですか?」
「ぽふぃ! ぽふぃぽふぃ~……」
スイは何かを伝えたいようですが、人の言葉を話せないのでした。
「百匹ですか?」
「ぽふぃ!ぽふぃ!」
スイは傘をパタパタさせます。もっとということでしょうか。
「二百匹?」
「ぽふぃ……」
スイは顔を横に振ります。
「百五十?」
「ぽふぃ……」
やはりスイは顔を横に振ります。
「百二十五?」
「ぽふぃ、ぽふぃ……」
近いようです。
「百十二?」
「ぽふぃ!ぽふぃ!」
もっと上でしょうか?
「百十八?」
「ぽ~ふぃ!」
「百二十一?」
「ぽふぃ~……」
スイがずっこけます。
「百十九?」
「ぽ~ふぃ!」
「百二十ですか?」
「ぽふぃ~♪」
「百二十匹なのですね。スイボ以外もテイムできるのですか?」
「ぽふぃ? ぽ~ふぃ~」
スイには分からないようです。
「きっと、スイちゃんに新しいお友達をテイムしてもらって、お母様に預ければ良いのですね」
「ぽふぃ!」
「けれど、困りました。スイちゃんのように賢いスイボは見たことがありません」
「ぽふぃ~……」
人の言葉を解するスイボは、知る限りスイだけです。幻生生物の中でも、スイボは寿命がない特殊な存在といわれています。しかし、繊細な存在であるスイボは、テイムでもされない限り、現の世界では長生きできません。しかし、スイをテイムしたのはわたくしが初めてのようでした。つまり、それ以前にも、スイはこの世界に興味を持ち、何度もこの世界に顕現しては、身を削りながら人との関わりをもってきたのでしょう。そうしているうちに、人の言葉を解するようになったに違いありません。おそらく、スイはスイボの中でも変わり者なのです。
「王女殿下、失礼いたします」
近衛兵がやってきました。今日は畑作業の日です。
「ヒントはきっと、日常生活にあります。今日も一日がんばりますよ!」
「ぽふぃ~!」