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男爵令息様は真剣

ルイーズの前ではまだ男性たちのどうでもいい話が続いていた。


「そういうやさ~リーダー、この前、すっごいカワイイ女の子と歩いてたよな」

「オレはリーダーが金髪の美人ちゃんとカフェでデートする姿を見たぞ」


隣に立っているレイニーが手をブンブンと振っている。


「やめろよ。オレが軽薄な男みたいじゃないか」

「しっかりオリビアちゃんの前で言っておかないと。リーダーに取られたら困るから」

「おい、バカ、やめろ! オリビアは信じなくていいからね」

「.........火のないところに煙は立たない、と言うけれど?」


ジロリと見ると、レイニーが小さな声で言ってきた。


「誤解だよ。オレ、楽団長だから資金源を確保しているだけだって」

「まさか、女性からお金を巻き上げているというの?」

「そうじゃなくて。後援者は貴族が多いしオレが窓口になっていて..........」


なんだか焦っているが、自分が楽団のために立ち回っていると言いたいらしかった。


「分かりました。後でうちからも資金を提供させていただきますから」

「え、いいの?」


よほど、資金に困っているのか嬉しそうな顔をする。確かに女性にモテるのを利用して資金を確保しているのかもしれないが、楽団のためにしているなら協力してあげようと思った。ヒソヒソ話が終わるとルイーズは皆に挨拶をしようと1歩前に出た。


「皆様、改めましてごあいさつ申し上げます。私はオリビアと申します。担当はバイオリンです。どうぞ宜しくお願いいたします」


あらかじめ自己紹介だけは頭の中で練習していたので、スムーズに言えた。


が、皆はちょっとポカンとしている。


「ずいぶんと礼儀正しいんだな~。オレ、ちょっと驚いちゃった」

「オレも~」


挨拶の言葉使いがマズかっただろうか、と心配したがすぐに皆が拍手してくれる。レウルスも歓迎の拍手していた。


「じゃあ今日は、もう帰っていいよ。バイオリンも持ってきてないでしょ?次の練習の時間はね.......」

「いえ、せっかくですから皆さんの演奏を聴いても宜しいですか?」

「もちろんいいよ」


ということで、練習風景を見学させてもらうことになった。練習が始まると、先程までヘラヘラしていたレイニーを始め、クラリネットの彼やオーボエの彼もいきなり真面目な顔になった。


しばし練習が続く。


「.........そこはさ、スパイスになる部分だからと言ってゴリゴリに演奏するんじゃなくって、ほかの楽器も活きる演奏がいいな」


レイニーの言葉の表現は独特だが、的確であった。


(さすがコンマス。リーダーなだけあるわ)


チェロの方も見ていると、レウルスと目が合った。心なしか睨まれる。


(なぜ睨むのかしら。見つめすぎた?)


慌てて視線をそらしたが、彼はスクッと立つとこちらに寄って来た。


「お前がいると、皆、集中できないようだ。今日は帰ってくれないか?楽器もないだろ」

「え?」


レウルスとの最初の会話が、叱る言葉でルイーズは固まった。


「そんな言い方をしなくてもいいだろ?」


レイニーが言う。


「こいつの方を皆、チラチラ見ているんだ。特に男がな」

「ああ~。確かに。じゃあ、オリビアは今日はここまでにして帰ろうか。外まで送るよ。レウルス、お前も付き合え」

「なんでオレが?」

「いいから」


3人で建物の外に出る。無理やり連れ出されたレウルスは不機嫌だ。


「副リーダーのお前にも言っておく。彼女はリルト子爵家の令嬢だ。先日の広場での演奏に感動してうちの楽団に入りたいと来てくれたんだ」

「.....お前が目当てじゃないのか?事務室でイチャついていただろう」

「あれはそんなんじゃありません!」


ルイーズは誤解を解こうと声を荒げた。


「そう、彼女の言う通りだ。平民だと言い張るから取り調べをしていただけ。貴族だと入団できないと思っていたみたい」

「なら、紛らわしいことするなよ。兄貴はそんなことばかりしているから女に恨まれるんだぞ」

「オレは女性に優しくはしているけど、恨まれるようなことはしていないよ」


弟にまで言われるなんて本当は遊び人なのではと、ルイーズが疑いの眼差しでレイニーを見る。視線に気付いたレイニーがゴホンと咳払いをした。


「とにかく!お前に伝えておくのはもう1つ!彼女が貴族だってことは皆には秘密にしておこうってことだ。楽団を起ち上げたオレらはともかく、オリビアが貴族だと分かれば、皆は気を使うだろうから」

「分かった。身分は音楽に関係ないしな。オリビア、オレは貴族だからといってお前を特別視するつもりはないぞ。あくまで実力だ」

「分かってます」


レウルスもレイニーと同じことを言った。ルイーズもそう思っているので素直にうなずく。


「レウルス、あまり彼女にプレッシャーをかけるなよ」

「オレは、真剣に音楽をやりたいだけだ」


レウルスは、音楽にかなり熱い情熱を持っている人なのだとルイーズは改めて思ったのだった。

フルンゼ楽団の男性は彼女募集中の男性多し


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