進級と新たな友
あの別荘での演奏会から帰宅すると、次の学年に上がる時期になっていた。
「もう、進級かあ。早いなあ」
フローレンスが隣で言っている。フローレンスとは1年の時に同じクラスであったが、今度の学年では違うクラスになってしまった。その代わり、レウルスと同じクラスになったのだった。
「レウルスと同じクラスになりたかったのに~」
フローレンスはレウルスと同じクラスになりたかったらしい。ライバルだとみなすレウルスと同じクラスである方が、音楽意欲が上がるというのが理由みたいだ。
ちなみに、音楽院ではトリア語のレベルに応じて1年生の間はクラス分けがされている。レウルスが音楽院に入学した当初は、まだトリア語に不安があったのもあって、ほかのクラスだった。
(今度はレウルスと同じクラスなのね.......)
レウルスに告白されてから微妙なまま同じクラスになったので、気マズさがある。
(あれからレウルスと告白の件について話していないけれど、彼はまだ私のことを想ってくれているのかしら…)
別荘に行った時はレウルスがルイーズに接近しようとするアードルフを阻止していた。あれはやはり、自分を好きだと思っているからなのだろうとは思う。でも、自分を兄貴分だとか言っていた彼である。
『ルイーズ、オレは諦めない』
あの言葉を思い出すと、今でもドキドキさせられる。
そんな人と同じクラスになったのだ。どうして過ごして行けばいいのだろうと戸惑う。
「.....ルイーズはいいなあ。レウルスとはメッツォからの付き合いだし、なにかと心強いよね」
「それはまあ…。フローレンスは、コンラートが同じ学年だったら同じクラスになることもあったかもしれないわね」
「そうかもね。コンラートが同じクラスにいたら.......楽しかったかな」
照れながら答えるフローレンスは最近、もっぱらコンラートを過ごしている。別荘での出来事が彼らの距離をだいぶ縮めていた。
「2年からは専攻によっていろいろと授業も分かれるし、緊張するわ」
進級するごとに学ぶ内容は深くなっていく。ルイーズも演奏実習などが控えていて、相変わらず忙しい日々になりそうであった。
新しいクラスに入ると、友人と話すレウルスがいた。レウルスがこちらに気が付くと声をかけてくる。
「ルイーズ、紹介するよ。前のクラスで一緒だったディーターだ。彼はフルンゼ楽団のことを知っていてオレに良くしてくれたんだ」
「あなたは、フルンゼ楽団を知っているの?」
「うん。メッツォのボロゴ楽団のことに調べていたら、フルンゼ楽団が話題になっていると知ってね。レウルスがメッツォ出身だと知るなり、すぐに話しかけたよ。そしたら、フルンゼ楽団に所属していたというじゃないか。驚いたよ!」
レウルスの愛想が良くない時期から、ディーターは積極的に話しかけていたらしい。
「私もフルンゼ楽団に少しだけど所属していたのよ」
「そうなんだってね!こんな気軽に話しかけちゃってるけど、平民の音楽家が集まる楽団にいたって聞いてあなたに妙に親近感が湧いちゃって」
人の良さそうなディーターは、平民だという。音楽院へは村の皆がお金を集めて送り出してくれたそうだ。
「ウイナ音楽院の試験に合格することはできたけど、学費は皆に負担してもらっているからどうしても音楽家として成功したいんだ」
彼の言うことはとても切実だった。
(………私って恵まれているのね)
「………音楽を前に立場なんて関係ないのだし、気軽に接してね。お互いに頑張りましょう」
明るい声で言ったが、世の中の不平等さは分かっているから多くは言えなかった。彼がきちんと勉強して評価されることを願いたい。
「ディーターの兄がトリアの飲食店で働いているそうだ。ソーセージが有名な店らしい」
「あら、さっそく行ってみたいわ」
間接的にでもディーターを助けたい気持ちがあって言ってみた。すぐにレウルスが反応する。
「行こうか。.......アードルフも誘った方がいいよな?」
音楽院ではアードルフとルイーズの付き合いは知れ渡っているから、ルイーズを誘う時はアードルフも誘うのが暗黙の了解となっている。と言っても、アードルフ以外と出かけることはまずないのだが。
「アードルフにも声をかけるわ。ついでにフローレンスたちも誘いましょうよ。ディーター、それでもいいかしら?」
「え?オレも行っていいの?」
「もちろんよ。あなたのお兄さんの働くお店に行くのに、あなたがいないのはおかしいでしょう?」
「うわあ。感激!ルイーズ様やアードルフ様たちがいるなんて!」
「おい、オレは含まれないのかよ?」
レウルスがふざけてディーターを小突いていた。
(レウルスは、すっかり人とうまくやれるようになっているのね)
つい、母のような気分になる。レウルスはしっかりしているし、音楽家として尊敬をしているが、対人面で不安があったからそんな気持ちになってしまう。
………お昼休みになりレウルスとディーターと共に食堂に向かうと、ちょうどアードルフやフローレンス、コンラートも食堂に来たところだった。さっそく、ディーターの兄が働く飲食店に行こうと誘ってみる。
「ソーセージかあ。おいしいよね」
「私はソーセージが好きだよ」
「ルイーズが誘ってくれるならどこへでも!」
フローレンス、コンラート、アードルフがそれぞれ意見を言う。
今日もアードルフはルイーズに会うと、ベッタリとくっついてきた。
「アードルフ、こういう場でのスキンシップは控えて…」
小さな声で注意する。
「え~、じゃあ2人きりの時はもっと触れていいんだね?」
アードルフがワザとなのか、皆にも聞こえる声で言う。
「早く食べよう。せっかくのランチが冷める」
レウルスのぶっきらぼうな声が響いた。
「そうね!」
ルイーズはわざと明るく言うと、席についたのだった。
おいしいソーセージは彼らの好物
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