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【完結】婚約者の王子より、冴えないチェリストに恋した公爵令嬢  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
◆第7章 新しい道は

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ガラコンサートの余韻

レウルスに抱きしめられてルイーズは驚いていた。


「レウルス、どうしたの?嬉しいからってこんな…」


金賞を受賞したから興奮しているのだろうか。彼を押し返した。


久しぶりに向き合った彼は、かなりスッキリとしていた。ぷっくりした印象だったのに、痩せてだいぶスッとしている。彫の深い顔がキリッとして見えた。


「改めてお祝いを言いたいと思っていたの。金賞、おめでとう。本当にスゴイことだわ」

「ありがとう。ルイーズも特別賞だったな、おめでとう。素晴らしいよ」

「ええ。頑張った甲斐があったわ。だけど、一人でもらえた賞ではないと思ってるの」

「........それは、アードルフのことか?」

「フローレンスもコンラートもアドバイスをくれたわ」

「オレがいないな」

「あなたとはしばらく話していなかったでしょう?」


ワザと明るく言ったが、レウルスが黙り込んだ。ルイーズはまずかっただろうかと気にしていると、レウルスが口を開いた。


「オレはこれからコンサートツアーに出向くことになると思う。イザベラ夫人が張り切っている」

「....そうよね。あなたが一気に遠くなってしまった気がするわ」


レウルスが完全なる決別の言葉を自分に伝えようとしているのかもしれないと、ルイーズは身構えた。


「私もあなたが言うように音楽とはきちんと向かい合っていくわ。留学期間も3年になったことだし」

「そうか、トリアにいられるのだな」

「ええ。それにしてもレウルスはすっかり有名人になったわね。メッツォで凱旋演奏会を開催したら皆、喜ぶと思うわ」

「.....オレは追いつけたか?」


(また、“追いつく”なんて言うのね)


「ねえ、そのあなたの言う“追いつく”という言葉だけど、どういう意味?あなたの方が素晴らしい演奏をするじゃない」

「やはり、意味が伝わっていなかったな。............オレはルイーズと音楽以外でも対等になりたいがために、自分の立場を確立しようとしたんだ」

「私と対等.............?自分のためではないの?あなたは名の知れた音楽家になることが目標であるはずよ」

「音楽家として成功したいと願うのは皆が思うことで当然、オレもそうだ。オレが言いたいのは、その当たり前の願いだけでは無かったということだ」


レウルスは相変わらず遠回しな言い方をする。


「分かりやすく言って欲しいわ。あなたの言うことは時々、よく分からないの」

「ルイーズ、オレは話すことがあまり得意じゃない。だが、金賞をとれたら言おうと思っていたことがある」


レウルスのただならない雰囲気に、ルイーズも緊張する。


「オレは.........ルイーズが好きだ。とても」


簡単な言葉だったが、レウルスが緊張して言った言葉だとは分かった。レウルスの顔はいつになく赤いし、ちょっと震えている。


「………ありがとう。…………あの」


レウルスに言われて嬉しい言葉なのに、今、自分はアードルフと恋人関係だ。どういうつもりで伝えたのだろうと思った。


「......レウルスからその言葉を言われたのは嬉しい。だけど、今のレウルスは金賞を受賞して気分も高揚しているわ。.......それに、今の私にはアードルフがいる」

「あいつとは別れられないのか?」

「勝手を言わないで」


沈黙が流れる。


「オレは、貴族でも高貴な立場ではない。だから、ルイーズに近づくためには立場を確立せねばならないと思っていた。だから、中途半端にルイーズに近づかなかったんだ」

「ならば、その気持ちを私にきちんと伝えるべきだったと思うわ。あなたの気持ちを分かっていたら、私はあなたの側にいた」

「確かなものを手にしてから伝えるべきだと思ったんだ..........そうでなければ、ただの戯言になるかもしれなくなるから」

「そんなの勝手だし、独りよがりだし、バカだわ」

「そうだよ」


レウルスはルイーズを再び抱きしめる。ルイーズは自分を抱きしめるレウルスを恨めしく思った。


(本当に勝手だわ)


「......私、アードルフを待たせているの。もう行かないと」

「行くな」

「離して」


レウルスの胸を押して離れた。


「あなたの音楽に対する真摯なところは尊敬しているわ。........だけど、こちらのことはあまりにも一方的で、“はい、そうですか”とはいかないのよ」


レウルスは傷ついたような表情をした。


「あなたの中で、いろいろと決心してやり遂げたことは本当にすごいと思うわ。だけど、私の気持ちは?あなたはそれを無視して考えているわ」


(レウルスは………もっと人の気持ちに敏感になるべきよ)


「すまない..........」

「今日は……お互いに忙しかったから、まずはゆっくり休みましょう」


ルイーズは控室の方へと歩き出した。


「ルイーズ、オレは諦めない!」


レウルスの言葉が背後から聞こえたのだった。

なかなかうまくいかない事情


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