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【完結】婚約者の王子より、冴えないチェリストに恋した公爵令嬢  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
◆第7章 新しい道は

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レウルスの伝えたいこと

ルイーズはアードルフとのデートから屋敷に戻ると考えていた。


『ルイーズ!練習をしろよ。オレはすぐに追いつく!』


レウルスの言葉が気になっていた。


(あの言葉はどういう意味だったの?‟オレはすぐに追いつく”ってなに?)


実力ならばレウルスの方が実績もあり、上であるのは明らかだ。


(追いつくってどういうこと?)


考えても分からなかった。


あと、アードルフが言った言葉も気になっていた。


『ルイーズは音楽家ではあるけれど、余裕のある音楽家になるんだ』


余裕のある音楽家、とはどういう意味で言ったのか聞きたかった。アードルフが音楽家として成功するようにルイーズに手を貸す、と言いたかったのだろうかと思った。


(そんなことをされても嬉しくないわ。アードルフは私のバイオリンの実力を評価していないとでもいうの?)


それとも、音楽はあくまでたしなみの範囲で極めたら良いと言いたかったのかと考えた。


(そういう意味であったとしても、私としては不本意だわ)


アードルフだってコンクールには出場して正当に評価を得ているのだ。自分の恋人がいくら大事だからって過保護にされるつもりはない。音楽を真面目にやるためには、人と競う厳しさがあるのはどうしようもないことだ。


アードルフに真意を聞きたかったが、いろいろとプレゼントされてしまった手前、あまりシリアスな雰囲気にしたくはなかった。好意を踏みにじりたくはない。


(いずれ……折を見て聞いてみよう)


屋敷にルイーズを送って来たアードルフは別れ際、自然にキスをしてきた。


ルイーズも受け入れた。きっとこれが普通になっていくのだろうなと思えた。


………翌日、授業を受けに音楽院に行くとレウルスと廊下で会った。


「ルイーズ、少し話をしたい。時間をとれるか?」

「今日は……放課後にカルテットのメンバーと練習があるわ」

「では、その後で少し話をしたい」


レウルスがどうしても話をしたいなんて言うのは珍しかった。2人の関係のことを話した会話が関係しているのかと思う。


「わかったわ。ただ、アードルフが帰りに送って行くと言っているの。彼にも伝えないと」

「アードルフには話すな。少しだけだから」


(アードルフに内緒で話したいなんて、どういうつもり?)


困惑してレウルスを見る。


レウルスは“後で”と言うと、教室へと去って行った。


「一体、なんなの………」

「ルイーズ、なに独り言なんて言ってるの?」

「あ、フローレンス、おはよう」

「おはよう。レウルスと話していたわよね。ねえ、レウルスは最近、かなり社交的になったよね」

「ええ」

「本気で音楽家として成功しようって頑張っているのかなあ」

「.......」


社交的になったレウルスのまわりには以前よりも人が増えた。もともとチェロの実力があって注目されていたから、愛想が良くなってソフトな対応になれば自然と人が集まる。


..........1日の授業とカルテットのメンバーとの放課後練習を終えると、ルイーズは練習室にレウルスが来るのを待った。ちなみにアードルフには練習が少し長引くと伝えて、馬車寄せで会う約束をしている。


「待たせたか?」


練習室にはルイーズしか残っていなかったから、久しぶりに2人きりになった。


「レウルスもカルテット演奏の練習だったの?」

「ああ。ルイーズが抜けた分、バイオリンで苦労してるよ」


レウルスが自分の実力を認めるようなことを言うので驚いた。


「なにを驚いてる?」

「あなたが褒めるなんて珍しいと思って」

「今まで口に出さなかっただけで、心の中では思っていた」

「調子が狂うわ。...........最近のあなたは、変わったって評判になっているし」


未だちょっとレウルスの態度には慣れない自分がいる。


「オレが話したいことはそのことに関係している」

「どういうこと?」

「その前に聞きたい。ルイーズはアードルフと本当の恋人になることにしたのか?」

「.........そうよ。フローレンスたちに聞かなかったの?アードルフは喜んで話していたみたいだけど」

「聞いてない。なぜ、そうすることにした?ヘンリー王子との婚約解消のために恋人のフリをしていただけだろう?」


(自分の言った言葉が関係しているとは考えないのかしら..........)


傷つけられたことを改めて説明する気持ちになれなかった。


「.....人の色恋沙汰についてあれこれ聞くというのは野暮というものだわ」

「ルイーズだから聞いているんだ」

「どうして..........そんなことを聞くの?あなたには関係ないでしょう?」


(もうこれ以上、私の心をかき乱さないで)


「………あの日の言葉は、きちんとオレの真意を伝えられていなかった。だから…」

「どうして今さら言うの。“酔っていたから気にするな”と言ったのはあなたよ。それが全てではないの?」

「.........オレは気まぐれでルイーズにキスしたわけじゃない。だが、あれは完全に軽率だったと思っている。だから、ああ言ったんだ」

「......なにを言いたいか分からないわ」


ルイーズが言うと、レウルスは額に手を当て、タメ息をついている。


(どうしてタメ息?こちらがタメ息をつきたいぐらいだわ)


バカにされたような気分になり、練習室を出て行こうとすると、レウルスに引き止められた。


「これだけは伝えたい!オレはルイーズに追いつくから........!忘れないでくれ」


ルイーズは、再び謎めいた言葉を繰り返すレウルスを振り切ると、練習室を出たのだった。

レウルスは口下手


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