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【完結】婚約者の王子より、冴えないチェリストに恋した公爵令嬢  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
◆第6章 交錯

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レウルスの嫉妬

「いつまでひっついているんだ。ここには人の目はないだろう」

「お前こそ、夫人はどうした?」

「化粧直しだ」

「夫人、張り切ってるな」

「気分が良いらしい。 ルイーズが寝そうになっているじゃないか」


眠くて眼を閉じながらアードルフに抱かれているルイーズを、レウルスが忌々しそうに見ていた。


「イヤそうに見るなよ。今、ルイーズを守ってやれるのは僕だけだよ?」

「………分かってる」


レウルスがこぶしを握り締める。


「ルイーズを送って来る。僕もそのまま帰るから皆に言っておいてくれないか?」

「お前が帰ったらマズイだろ」

「でも、酔った恋人を送らずに帰すなんてあり得ない。心配するなよ。お前の妹分はきちんと送るから」


そう言うと、アードルフはルイーズの肩を抱き会場へと戻って行く。


「………心配するな、だと?キスしてたくせに」


テラスに独り言が響いた。


…………会場に戻ったルイーズは人々のざわめきと音楽で正気を取り戻した。


「………私、寝てた?」

「ちょっとだけね。水飲んだらもう帰ろう」


渡された水のグラスを飲むと、冷たくて目が覚めかけるがまだ眠い。


「ここのところめまぐるしかったから、疲れていたみたい」

「うん、そうだね」


アードルフに支えられながらクラクラする頭で、テラスで起きたことをボンヤリと思い出す。


(さっき、アードルフにキスされたような………レウルスの声も聞こえたような)


途中まで話していたのだが、気付いたらキスされていたような気がする。毎度のごとくお酒のせいもあって、なんだかどうでも良い気分になっていた。


(後援者だからってあんなに尽くさなければならないの....?)


眼を閉じると、イザベラ夫人とレウルスが一緒にダンスをする姿やイザベラ夫人に言われた嫌味を思い出す。ルイーズは夫人に嫉妬していた。


「ルイーズ、馬車までもう少しだから頑張ろう」

「ええ」


(私、またお酒に酔ってしまったわ)


フワフワする頭でまた失敗したなと、考える。


「ルイーズ!」


後ろからバタバタと走って来る足音が聞こえた。


「アードルフ!王がお前のことを呼んでいるぞ。ルイーズはオレが送って行く」

「王が?お前、イザベラ夫人はどうしたんだよ?」

「口説かれ中だ。だから、放っておいて大丈夫だ」

「………じゃあ、頼むが.......。手を出すなよ?」

「お前じゃないんだ。早く行けよ」

「どういう意味だ。頼んだぞ」


アードルフはしぶしぶ、レウルスにルイーズを託すと会場に戻って行った。


「歩けるか?」

「え、レウルス?」

「どうしてこんなに酔ってる?」

「………あなたのせいかも」

「は? 抱きかかえた方が早いな。抱えるぞ」


レウルスはルイーズを横抱きすると馬車の方へと向かって歩いて行く。


「レウルスって力持ちね」

「ルイーズが軽いんだよ」


馬車に乗せられて、大事なバイオリンがないことに気付いた。


「バイオリンが」

「大丈夫だ。心配ない」


フローレンスたちに託してくれたという。


「楽器は身体の一部みたいなものだからな」

「ええ」

「寄りかかっているといい」


レウルスがルイーズを引き寄せて自分の肩に寄りかからせた。


「レウルスにこうして寄りかかるのは久しぶり。音楽院に入って皆で初めて食事した時以来かしら」

「そうだな。なぜ、こんなに酒を飲んだ?」

「だから、あなたのせいでもあるってば」

「どういう意味だ?分からない」

「イザベラ夫人に嫌味を言われたわ……どうして国に帰らないのかって。悲しむ人がいるだろうって。殿下と破談になるのは多くの人が知っているというのに」

「………それとオレが関係あるのか?夫人は、負けん気が強い人だ。気にするな」

「気にするから飲んだのでしょう。私の気持ちを分かってくれないのね」


ルイーズは、レウルスの胸に寄せていた顔を窓側にフイと向けた。


「……今日はワガママお嬢様の日なのか?」

「知らない」

「知っているか? 今のルイーズは無防備すぎだぞ」

「もうなにも聞こえないわ」

「ルイーズ!」


レウルスがルイーズを自分の方へと引き寄せた。


「……釣れない態度をとるな。アードルフには心を許しているくせに」

「心を許した?いつ………?」

「簡単に自分に触れさすな。唇も」


レウルスがルイーズの唇を親指でなぞった。


(あ………レウルスは私がキスされていたのを見たんだ)


回らぬ頭で考えた。


「アードルフは寂しいから………んっ」


それ以上、言葉を発することができなかった。


信じられないが、レウルスにキスされていた。


「レウルス……」


ルイーズはレウルスの唇が離れると、レウルスの首に手を回して自分からもキスした。


もう、なにも考えられなかった。


レウルスも応えるようにルイーズを抱きしめキスをする。しばらくそれは続いた。


「はぁっ………」


互いの唇が離れると、見つめ合う。


その時、馬車が停まった。着いたらしい。


「レウルス………泊って行く?」

「………いや、帰るよ お休み」


我に戻った様子のレウルスは、ルイーズを馬車から降ろして使用人に託すと帰って行った。


部屋に戻ってきたルイーズは、今さっき起きたことを冷静に思い出そうとしていた。


(私、アードルフにキスされて………それをレウルスに見られていて…………怒ったレウルスにキスされた?)


普通に考えたら、レウルスが嫉妬したと考えるのが普通だと思うが、レウルスが自分に嫉妬するなんて意外だと思ってしまう。


まだ酔いの残る頭でグルグルと考えたのだった。

ついにレウルスが.........


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