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【完結】婚約者の王子より、冴えないチェリストに恋した公爵令嬢  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
◆第6章 交錯

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ダンスと揺れる想い

音楽院の毎日は相変わらず忙しい。


父から手紙が届いた。とうとうヘンリーとルイーズの婚約話はなくなるようだ。本人不在ということで父が意思を確認するために手紙をよこしたのだった。


父は前回の訪問時にリリアンが乗り込んで来た時点で、ルイーズが不幸になるような結婚をさせたくないと考えていたから、ルイーズの確認をとれればすぐにでも破談の手続きをすると書いてあった。


(ついに殿下とはなにもかも終わるのね)


ヘンリーから手紙が届いていた。短い文だったが、リリアンが己の婚約者との結婚話を無くしてまで自分に向き合うならば、男として応えるべきだと決断したと書かれてあった。


(殿下にはリリアン様のような方が合うわ。良かったのではないかしら。........その代わり、私は縁談を破談にされた公爵令嬢としてしばらく国に帰れなくなったけど)


どちらにせよ、しばらく数年はトリアで音楽を学びたい気持ちもあったからこの際、留学期間もレウルスと同じ3年にしてもらおうと考えていた。


ことの次第をアードルフたちに話すと、お祝いをしようという話になった。


「破談になったことをお祝いするなんて、新しい発想ね」

「ルイーズの新しい未来について乾杯をするってことだよ。今日の夜、皆、空いてるか?」


放課後の音楽室に集まっていたいつものメンバーにアードルフが声をかけた。レウルスもいる。


「オレは………後援者との食事があるんだ」

「後援者? ああイザベラ夫人か。あの人は未亡人だよな。お前、狙われてないか?むしろ、お前が狙っている方か?」


ふざけてアードルフが言うと、レウルスがムスッとして答えた。


「邪推するな。ただの後援者だ」


レウルスが参加できないなら日を改めようかという話の流れになった。そんな時、コンラートがある招待状を持ってきた。


「舞踏会が開かれるらしい。私に招待状を託された」


コンラートから渡された招待状を確認すると、トリアの王城で舞踏会が2週間後に開催されると書いてあった。


「この舞踏会は年頃の王族や貴族たちの出会いをつくるためのようだ。アードルフみたいに逃げ回ってる者もいるからね」


コンラートが淡々と言う。


「今さらだけど、アードルフの恋人が私だということをトリア王室がよく思っていないのでは?こんなに急いで舞踏会を開くぐらいですもの」

「そういうわけじゃないよ。むしろ、どれくらい仲がいいのか確認しようとしているんじゃないかな。というわけで、ルイーズは僕のパートナーとして共に出席するのは決定だからね」

「まあ、恋人設定ですから仕方ないけれど」

「仕方ないなんて言って欲しくないな。楽しみだって言ってよ」

「楽しみよ」

「心がこもってない」


アードルフがじゃれついてくる。


「アードルフ兄、ルイーズに構いすぎ!レウルスは誰と出席するの?」

「オレは後援者であるイザベラ夫人と出席することになるかもしれない。以前、舞踏会が開かれたら挨拶を兼ねて一緒に出席して欲しいと言われている」


(イザベラ夫人とパートナー?)


あの色っぽい未亡人と出席するのかと思うとモヤリとした。ただでさえ、演奏旅行には彼女もいたはずだ。


(レウルス、イザベラ夫人に惹かれたりしていないわよね?)


一度もイザベラ夫人の話は聞いたことがなかった。彼がどう思っているのか分からない。


「そうとなれば、ダンスも練習しようよ」


練習の合間にダンス練習もしていこうという話になった。


さっそくダンス練習に取り組むと、アードルフはダンスが上手で踊りやすかった。フローレンスもコンラートと優雅に踊っている。レウルスが一人ポツネンとしていた。


「レウルスもダンスの練習をしましょう?」


レウルスともダンスしたくてルイーズが誘うと、レウルスがルイーズの手を取った。.....彼とのダンスはぎこちなかった。


「オレはあまりダンスが得意じゃない」

「ならばより練習しないと。協力するわ」

「イザベラ夫人は背が高いわよね。私の方が合うんじゃない?」


フローレンスが言う。フローレンスはルイーズよりも背が高かった。


フローレンスとレウルスがダンスすると、お互いにチェリスト同士だからか、ルイーズと踊るよりも息が合っている。


「とてもキレイよ」


フローレンスに声をかけると、フローレンスは素直に得意気な顔をした。


「ふふふ」

「フローレンス、私とも踊ろう」


いつもは静かなコンラートがズイと出てきた。


(コンラートは嫉妬しているのかしら?珍しい)


コンラートはフローレンスと手を取り合うと、優雅にダンスを始めた。見つめ合って踊る彼らが微笑ましい。


(嫉妬する関係って素敵ね。………殿下には嫉妬されるというより執着されていたから、ちょっと羨ましいわ)


「もう一度、練習しようか」


アードルフが手を差し伸べてくる。ルイーズが手をとろうとすると、レウルスが割って入った。


「ルイーズはオレと練習を。フローレンスだけでなくルイーズとも練習をしておけば、誰と踊っても安心だ」

「なんだよその誘い方」


アードルフがぶつぶつ言っている。


「レウルスらしい言い方ね。素直に踊って欲しいって言えないのかしら?」


ルイーズがウィンクすると、レウルスは顔を赤くした。


「........オレと踊ってくれ」

「はい、分かったわ」


喜ぶ気持ちを隠しつつ、レウルスの手を取ったのだった。

レウルスが社交をあまりしないのは、ダンスが得意ではないのも理由の1つ


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