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募集欄を発見!

おすすめされた庶民の服を売る店へとやってきた。


店はフルンゼ楽団の入る建物の近くであったのでチラリと楽団の建物を確認してきたが、かなり年季が入っていた。


(あの建物はしっかり直す必要があるわね)


ルイーズはすっかり入団した後のことを頭に描いていた。


「........それにしても、楽団員の募集をちょうどしているなんて」


楽団の建物の入り口に楽団員を募集する紙が貼ってあったのだ。


「ええ。これならすぐにでも入団できるでしょう」

「本当に入団されるつもりなのですか?」


楽団員募集の貼り紙を見て、チェロの彼がいる楽団を探すという目的から入団することに大きく目的が変わったルイーズをジーナは心配していた。


「旦那様とルース様が知ったらなんと言われるか!」

「私には心を休める時間が必要だと言ったし、音楽が必要だと言ったわ。だから、問題ないわ」

「でも、フルンゼ楽団はどうも庶民の集まりみたいですよ??そんなところに所属されるなんて許されるとは思いませんが」

「だから、こうして庶民の服を買いに来ているのではないの。正体を知られなければ良いのでしょう?」

「そう言うことじゃないと思います!それに、そこまでして入団する必要があるのでしょうか?」

「あるわ!」


(だって、あのチェロの彼が在籍しているんですもの!)


続きは心の中で言う。彼を特別な人として言うのは恥ずかしい。


「でも、お嬢様が庶民の服など...........」


ジーナも貴族の娘である。いろいろと抵抗があるらしかった。


「彼らに合わせて入団することが大切なのよ。今の服装で登場してごらんなさい。きっとさっきのカフェの彼らのようにかしこまってしまうわ」

「でしょうね。だからこそ彼らはアドバイスしてくれたのでしょうが」


ルイーズは張り切って洋服店の店員を呼ぶと、庶民の服が欲しいと伝えた。


「庶民の服、でございますか?こちらにあるのはどれもこれもそれに該当すると思われますが......こちらなどはいかがでしょうか?ご満足頂けないかもいれませんが.......」


店員はルイーズのキラキラしたアクセサリーを見て恐縮していた。失礼にならないように必死に言葉を選んでいる。


「あら、本当に庶民の服って地味なのね」

「申し訳ございません...........」

「気にしなくて良いわ。私、その洋服に着替えていくから。あと、ここからあそこまで一式買うから、私の屋敷に届けてちょうだい」

「ほ、本当でございますか!?」

「靴も持ってきてちょうだい」


ルイーズは全身、庶民の服に身を包むと鏡の前に立った。


「ふうん。これは目新しい......地味だけど動きやすいのね」


庶民の服は貴族の洋服とは違って機能的である。意外と気に入ったルイーズだった。


店員はルイーズの購入した服の届け先を聞いてたまげていた。多分、ルイーズが店に来なければ、一生、公爵家に庶民の服など届けることはなかっただろう。


「あのぉ..........どうしてお貴族のお嬢様が庶民の服など着用なさるのでしょうか?」


恐る恐るといった様子で店員が尋ねてきた。


「楽器を演奏するのに機能的で良いからよ」


適当に理由を言ったが間違ってはいない。


「......ああ、そうなのですね。なるほどです!近くにフルンゼ楽団の練習場があるのですが、彼らもここで洋服を買うことがありますよ」

「そうなの?」

「はい」

「実はね、私、そのフルンゼ楽団に興味があってこれから訪ねてみようと思っているのだけど、彼らはどんな人たちなの?」

「ええと、若手の演奏家の集まりですね。あと、彼らは楽団を起ち上げた方以外は、お貴族様とは縁のない庶民の集まりですから、服装を改められたのは良かった思います。はっきり言うと、彼らはお貴族様が苦手なのです」


カフェで話した彼らも同じようなことを最後に言っていた。


「変にプライドが高いところがあるのが多いんで........あ、話し方も庶民に寄せた方がいいですよ」

「え、話し方?」


意識していていないところを言われてへえと思った。


「庶民はどんな話し方をすればいいの?」

「私が教えるよりも、向かいにオープンカフェがありますからそちらで庶民の話し方を観察されたら良いかもしれません」

「なるほど、では行ってみるわ」


ジーナが会計やここでの会話を秘密にするように口止めしてから、勧められたオープンカフェに行ってみた。庶民的な店だからか、先程のカフェよりもまわりには庶民がたくさんいて話し声がよく聞こえた。しばらく聞き耳を立てる。


「..........なるほど、彼らの会話はとっても気安いのね」

「お嬢様が知らなくても良いことを学ばれている...........」


ジーナは先ほどからずっと頭を抱えていた。


「あのお嬢様、本当に本当に、あの募集に応募なさるつもりなのですか?」

「そうだと言ったでしょう」

「お屋敷に楽団を呼び寄せればいいではないですか」

「だからそれでは、彼らとは対等には話せないのよ」

「対等??」

「そう。私は、私を感動させた彼らと対等に話したいの。私が上位貴族だと知ったら絶対に彼らは本心を見せないわ。ただでさえ、貴族が苦手みたいなのだから」


ジーナは困惑していた。


「庶民に合わせてやるどころではなく、対等な立場だなんて............!旦那様やルース様が知ったら卒倒されますよ!」

「そんなことはないわ。お父様やお兄様は庶民を尊重されているし、私もそうだわ」

「そうでしょうか!?庶民はハンカチに地図を描かせたり致しませんし、“庶民”と呼んだりしないでしょう」

「だから、今まさに庶民.........彼らと同じようになれるように準備をしているんじゃない」

「ああ言えばこう言う............ぶつぶつ」


ジーナはルイーズになにを言ってもムダであると分かると、また頭を抱えたのだった。

ルイーズは言い出したら聞かないタイプ


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