ヘンリー王子との話し合い
「まさか、そいつを愛しているだなんて言うつもりはないだろうな?」
“愛しているのか?”なんて聞かれて動揺した。
(フリであっても、“愛してる”なんて簡単に言えないわ)
思わず返事に言葉が詰まる。
「なぜ、答えられない?......お前もオレと同じなんだ。寄って来る者がいれば、相手の気持ちを尊重してやっているにすぎない」
「尊重している?」
ヘンリーはリリアンが自分に気持ちを向けているから尊重してやっていると言いたいらしい。すごく勝手な理由である。リリアンに対しても失礼ではないかと思う。
「ルイーズが僕を愛していると言わないのは、婚約者のあなたの前で残酷な言葉を聞かせないように気を使っているだけですよ」
アードルフがルイーズを抱き寄せた。
「ルイーズに触るな!」
「あなたはリリアン王女に触れているでしょう?キスまでされたとか」
「ルイーズから聞いたのか!?」
怒りの表情でルイーズを見る。
「ルイーズじゃありませんよ。僕はボロゴ楽団のファンですし、メッツォで起きたことは漏れなく情報を集めているんです。別にあなたを貶めようなんて思って情報を集めているのではありませんよ。これからは、お互いにとって最善の選択はなんなのかを一緒に提案していきましょう」
「うるさい!だまれ!勝手に人の未来に口出しをするな!」
「...........なぜ、ルイーズを手放そうとなさらないんですか?」
ヘンリーがものすごく顔をしかめた。
「私も、殿下の気持ちを知りたいと思っていました。私のことを愛してはいませんよね。私が公爵令嬢で条件に合うという以外、あなたが惹かれることはないはずです」
「そんなことはない。お前とは何年一緒にいたと思ってる?」
時間ならば.....と、アードルフが言う。
「過ごした時間だというならば、気にしなくても大丈夫ですよ。これからも時は流れるんです。忘れることもできます」
アードルフの言葉は一見、挑発的であったが、真面目な態度で言っているあたり、自分自身の経験に基づいて言っているようであった。ルイーズはアードルフの過去を知っているから、その言葉を聞いてつらくなった。
「殿下、いろいろと起きたせいで、私たちの関係はなんなのか分からなくなっているのだと思います。全てはあるがまま時間が流れることで解決することだと思っています。そのためにも私はこのままトリアで音楽を学びます」
「.....ここにルイーズを残していったら、もう取返しがつかない!」
ヘンリーが初めて己の気持ちをぶちまけた気がした。
「………殿下。恐れることはありません。結局、なるようになるものですわ。私はトリアからは今離れるつもりは毛頭ございません」
「ルイーズ!」
ヘンリーは手を伸ばしたまま口をワナワナとさせていた。多分、彼はいろいろと言いたいことがあるのにうまく言えないのだろうと思った。
(殿下は口下手なんだから.......)
最近のヘンリーの行動には悩まされ続けたが、幼い頃から知るだけあって彼を思いやる気持ちはある。
「殿下、今だからこそ言える言葉ですが、リリアン様は私たちの関係を見直すのに良いきっかけを下さった方だと思っています。だから、殿下もリリアン様のことをきちんと考えてみてはいかがでしょうか」
ヘンリーに近づくとそっと彼の手をとった。子どもの頃、ヘンリーが癇癪を起した時もこうやって手を取り、なだめたことがある。彼は覚えているだろうか。
「...............疲れた。一度、ホテルに帰る」
ヘンリーはトリア内のホテルへと帰って行った。正式な訪問ではないからホテルに滞在しているらしい。
彼が去った後、アードルフとソファに座ってお茶を飲んだ。なんだか、とても疲れる話し合いだった。
「アードルフ、お疲れ様でした。庇ってくれてありがとう」
「守るのは当然だよ。......それより僕さ、ヘンリー王子がルイ―ズに僕を“愛しているのか?”って聞いた時、ルイーズがそうだと答えらたら、どう話を持って行こうかって必死に考えていたよ」
「じゃあ、言わなくて正解だったわね?」
「いやあ、言われたらそれはそれで嬉しかったよ」
隣に座っているアードルフの手が伸びてきた。頭を撫でられる。
「一緒にいるうちにルイーズのことが本気で好きになっちゃったかもしれないな」
「…………冗談でも言ってもいいことと、悪いことがあるわ」
ルイーズが言うと、アードルフが罰の悪そうな顔をする。
「やっぱ、こんなことを言われたらイヤかあ」
「そうじゃないけど………ごめんなさい。フローレンスがいろいろと話を聞かせてくれたわ」
心に傷を抱えているからこそ、側にいた自分に気を許しているのだろう。
「あ………そうだったのか。フローレンスのやつ………」
「アードルフがつらい時は、今度は私があなたを守るわ」
「守ってくれるの?ルイーズが?」
ぷぷぷ、とアードルフがお茶らける。いつものアードルフだった。2人してソファに寄りかかりながら笑い合うと、アードルフがふと真面目な顔をした。
「どうしたの?アードルフが真剣な顔をすると笑ってしまいそうになるわ」
「ヒドイな」
アードルフがルイーズの額にチュッと口づけた。
「アードルフ……!」
「オレがつらい時、慰めてね」
「ええ………できる限りはそうするわ」
「そっか。 じゃあ、さっそく音楽院に戻ろうか。まだ午後の授業は受けられそうだ」
「そうね。付き合わせてごめんなさいね」
「いいんだよ」
アードルフがルイーズの手を取ると馬車へと向かう。音楽院に着くと、昼休みになっていた。食堂に行くと、レウルスたちがいた。
「……へえ、大変だったのね。ヘンリー様って勝手ね。しかも話が通じなさそう」
「彼は口下手で感情を説明するのが苦手な人なの。長い付き合いの私でさえ、よく考えていることが分からないわ」
「トリアにはいつまで滞在するつもりなんだろうな。あちらでも学園の授業が始まっているだろう?」
「そう、私も気にしているの。それにまたリリアン様が来たらどうしようとか不安だわ」
レウルスは話し合う間、無言で食事をしていたのだった。
レウルスの心境は......
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