心躍るセッション
どういう意味かと考えていると、レウルスは聞こえなかったと思ったのかもう一度同じことを言った。
「ルイーズとは金銭面での付き合いにしたくはない」
「.........ええと、それは気が引けるということかしら?」
「ルイーズはオレの妹のようなものだ。だから、ファンでいてくれるだけでいい」
「妹.........」
フローレンスにも言われたが、レウルスはどうもルイーズを妹だと認識しているらしい。
(私は妹でしかないの?)
確かに彼はフルンゼ楽団ではミアの面倒を見ていたし、ここに来たら今度はフローレンスに付き合ってやっているように見える。自分は違うと思っていたら、妹軍団の一人であったらしいと分かってショックを受けた。
「私は妹じゃないわ…」
「この前、ルイーズが酔った時の姿を見て、誰かに甘えたいと思っているのだと感じた。だから、オレはルイーズの兄貴分としていなくてはなと思えた」
(ぜんぜん違う!)
レウルスは違う方に役割を見出したみたいだった。だが、そんなことを求めているのではない。
「違うわ!全然!」
「今まで甘えられなかったのだろう?」
心配されるように言われると、当たっていないわけではないので黙る。ヘンリーに甘えたことなどない。甘えたいと思っても彼はルイーズにとってそういう人じゃなかった。
(私はレウルスに甘えたい。でも、妹として甘えたいんじゃない.......!)
「あのね........」
「ルイーズ、もう行かなくちゃならない。そちらも課題があるだろ?」
そう言うと、レウルスは去って行った。
「あ.........」
うまく伝えることができないまま彼は行ってしまった。
だが、話してみて分かったことがある。彼は全く自分を女性として意識していないのだろうということである。
(レウルスは、私が尊敬しているのは自覚している。ただ、彼はただの尊敬だとしか思っていないのね)
尊敬という気持ちが‟好き”という気持ちに変わることがある、とは考えてはいないようだった。
(立場の違いがあるから彼とは少しずつ距離を慎重に縮めてきたつもりだったのに)
やっと近づいたかと思えば、レウルスがすぐに離れていく。
「全然、思い通りにならないわ!」
「なにが思い通りにならないって?」
アードルフだった。
「……冬休みのことよ」
独り言を聞かれてとっさに誤魔化した。
「ああ。ルイーズは冬休みはどうするの?」
「なにもまだ考えていないの。だから、レウルスが演奏旅行に行くと聞いて、私も行きたいと言ってみたら断られたわ」
「まあ、そんなもんだろう」
「そういうものよね........」
「将来がかかっているから皆、必死だ。仲良しさんだけではダメだからね。とはいえ、僕ならルイーズを歓迎するな。演奏会を開くつもりなんだけど、ルイーズも参加しない?」
「え、私も参加していいの?」
「うん。今日言おうと思っていたんだ。僕らは毎週、練習を重ねてきたじゃない。そろそろどこかで発表する場があるといいなと思っていたんだ」
自分を認めてくれたようで嬉しくなった。
「アードルフ、ありがとう!」
「そんな可愛い顔で言われると照れる」
アードルフが本当に顔を赤くする。
「アードルフなら言われ慣れているかと思ったけど?」
「人は見かけによらないんだぞ。それに僕は慣れているふうに見えてピュアなんだから」
「うふふ、なによそれ」
「ルイーズと一緒だよ」
真面目な顔をしてアードルフが言うのでルイーズは少しドキリとした。
「演奏会のメンバーだけど、フローレンスにも声をかけるつもり。後はフローレンスの婚約者にもね」
「フローレンスの婚約者!?」
自由な雰囲気のあるフローレンスだったから、婚約者がいるとは思わなくて驚いた。
「そんなに驚くこと?彼はね、僕と同い年でビオラ担当なんだ。彼がいるとちょうどいいから」
放課後の練習に連れて来られたコンラートは穏やかな人だった。彼もかなり遠いが王室につならる血筋だと聞いた。
(なんだか、この弦楽カルテット仲間は上位貴族の集まりになってしまったわね)
互いの自己紹介を終えると練習を始める。やはり人数が増えると盛り上がった。そこに、遅れて来たフローレンスも合流してくる。
「婚約者が先に来て、なんでフローレンスが遅れて来るんだ?」
「ごめん、ごめん。ちょっとおしゃべりしてたら............で、レウルスも連れて来ちゃった!」
おしゃべりしていた相手はレウルスだったようだ。そのまま練習に連れて来たらしい。
「オレがいたら迷惑じゃないか?」
「いや、そんなことはない。演奏旅行に行くんだろう?ここで少し練習の足しにしておけよ」
アードルフの一言でレウルスも演奏に加わった。
皆で演奏するのはとても楽しかった。音に深みが出て圧倒的に楽しい。皆、ノッて来るのが分かる。
(あ、レウルスのこの姿を見るのは久しぶり)
いつか広場で観た時の自然に楽しむ姿だった。彼は気分が上がるとチェロと一体化したように身体が動く。
ルイーズはバイオリンを弾きながらウルウルとしそうになった。
「初めて合わせたと思えないほど、息が合っているな」
アードルフが言うとコンラートもうなずいている。
「悪くないね。この5人でやるのも気分がいいなあ」
「演奏旅行から帰って来たらぜひ、またやりたい」
「おう。演奏旅行と言えば、ルイーズが“自分は行かれない”ってプリプリしていたぞ」
「それは仕方がないことだ」
「まあな。ルイーズは僕が責任を持って面倒見ておくから」
アードルフがちょっと誤解があるような言い方をする。
「アードルフ兄、‟僕が”じゃなくて“僕たちが”と言うべきじゃない?」
「細かいぞ。いいじゃないか~」
アードルフがルイーズの肩を抱き寄せた。
「きゃっ」
「おい、ルイーズに慣れ慣れしく触るな」
「親心か?というか、まさか嫉妬?」
「それほど年は離れていない!嫉妬でもない!」
珍しくレウルスが反撃している。気安く言い返すほど、心を許しているのかもしれない。
「ルイーズはヘンリー王子の婚約者だから心配しているんだろう?分かってるよ」
「知っていたの......?」
知らないのかもしれないと思っていたが、しっかりこちらのことを把握していたようだ。
「それはそうだよ。僕らは一応、王室とはつながりがあるんだし。メッツォ国から王子の婚約者が留学してくるとは聞いているさ」
「え、じゃあ食堂で会ったのは........」
「あれは偶然。だけど、話しているうちに分かったよ」
「そうだったのね........」
のほほんとして見えるアードルフたちはきちんと正体を知っていたのだった。
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