チェリストはまさかの親戚
「あ、レウルス!」
「待ってたのって彼?」
アードルフはレウルスの全身をじろじろと見た。
「なんなんだ、この人は?」
観察されるように見られたレウルスは気分を悪くしたようでルイーズに問う。
「彼はついさっき会ったばかりの方でアードルフさんというの。2年生だそうよ。専攻はバイオリンですって」
「へえ。ルイーズと同じだな」
「まさにそういう話をしていたところだわ」
「ルイーズ.......いきなり親しくしすぎじゃないか?」
レウルスに小さな声で言われた。
「え、そうかしら?」
「ルイーズは立場もあるのだからもう少し.........」
小さな声でレウルスがごちょごちょと理由を説明している。ルイーズの正体を知っているから気遣っているようだ。
(ふふ、なんだかんだで面倒見が良いのだから)
冷たいようで楽器店に連れて行ってくれたり、心配してくれたりするところも彼の魅力だとルイーズは感じていた。
「せっかくだから食事を一緒にしようよ。まだここのことを良く知らないだろ?僕が説明するよ」
アードルフは、ルイーズたちが新入生だと分かって気遣ってくれているらしかった。
「あらまあ、それはいいわ。ね、レウルス?」
人付き合いが苦手なレウルスに知り合いが増えるのはいいと思って、注意されたばかりであるが一緒に食事をとりましょうと提案する。
「ほら、早く食事を取りに行こう。人気のメニューは売り切れちゃうよ」
急かされてレウルスも結局、一緒に食事をとることになった。料理を乗せたトレイを手にテーブルに戻ると、食べながらアードルフが音楽院のあれこれを説明してくれた。
(この方、なんだかレイニーさんみたいだわ)
レウルスも兄と似ていると思ったのか警戒心が薄れたようだ。
「アードルフ兄!」
女子の声がしたと思ったら、アードルフに後ろから抱きついてきた女子生徒がいた。
「あ、あなたは……」
フローレンスであった。
「なんでアードルフ兄とルイーズさんが一緒なの?それに、その人は?」
「新入生で食堂の使い方に困っていたみたいだから声をかけたんだ。後はここのことを教えたりしてた。で、フローレンスはどうした?」
「アードルフ兄のことを探していたのよ。やっと私もここに入ったんだし。お昼を一緒に食べようと思ってたのに~」
フローレンスはアードルフたちに気付かず違う場所でお昼を食べていたようだ。ルイーズが2人がどういう関係なのだろうかと考えていると、アードルフがフローレンスの紹介をする。
「この子は僕の親戚なんだ。僕を追いかけてウイナに入学したんだよ。専攻は違うけど」
「バイオリンだったらアードルフ兄と同じ合奏チームになれたかもしれないね。でも、私はチェロの音色が好きなんだ」
「君はチェリストなのか?」
レウルスが反応した。
「そう。もしかしてあなたもチェリスト?」
「そうだ」
「あなたのトリア語、なかなか上手ね。どこの出身?」
「メッツォだ。ルイーズも同じだ」
レウルスの発音は完璧ではないが、コミュニケーションをとるのは問題ないみたいだ。
「ふうん。ルイーズさんはキレイなトリア語を話すよね。遜色ないわ」
ぶっきらぼうな言い方ではあったが褒めているようだ。
「ありがとう。勉強した甲斐があったわ」
「メッツォから来たのか。あの国も音楽が盛んだよね」
それからはしばらく音楽談議が続いた。一通り音楽経歴などを話すと、フローレンスが同じ楽器専攻のレウルスに話しかける。いずれ組むことになるかもしれない合奏チームに向けていろいろと聞いていた。
「ルイーズは公爵令嬢なんだね。身分を隠して楽団に所属していたなんて驚きだよ」
フルンゼ楽団にいたことと出自については簡単に話した。
「楽団に所属していたといっても短いの。まだ、演奏会に参加したこともないし」
王や王妃、ヘンリーの前で演奏をしたことはあるけど、演奏会という実績とは違う気がした。
「私は経験不足だからここに来たからには多くの演奏会を経験したいわ」
「じゃあ、まずは僕とアンサンブルしてみない?」
聞けば、アードルフはコンクールで入賞する実力者だった。ルイーズは尻込みしたが、アードルフはメッツォ国を代表するボロゴ楽団に憧れているせいか乗り気だった。
(私がメッツォの公爵令嬢だと聞いてつながりが欲しいのかしら?)
「じゃあ、さっそく今日の放課後から練習してみようよ」
「では.......よろしくお願いいたします」
押し切られるままアンサンブルすることになった。気付くと、レウルスたちの方もフローレンスと約束していた。
(レウルスはフローレンスとアンサンブルするのね)
ちょっとモヤリとしたが、音楽院の生徒は皆、熱心なのだろうなと思ったルイーズだった。
気が引き締まるルイーズ
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