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【完結】婚約者の王子より、冴えないチェリストに恋した公爵令嬢  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
◆第3章 戻った日常

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王城に偵察へ

楽団での練習ではなく、自宅で練習をすることになって数日が経つ。


楽団の皆には、家の都合でオリビアがしばらく来られないと伝えておくと、レイニーは言っていた。


「さて、皆は私が大量の楽譜を渡されたのを知っているから譜読みがんばらなくてはね」

「お嬢様、殿下の方に気を配っておかなくて大丈夫ですか?旦那様が対処しているといっても、王家が把握していないとは限りませんよ?」

「そうなのよね」


父と兄は王家にウワサが伝わったとしても、ヘンリーの妃の座を狙う輩の策略だと主張すると言っていた。


「殿下の反応がいまいち読めないのよね。それに好き勝手いつまでも私のことをウワサされるのも面白くないわ」

「一度、偵察がてら王城に顔を出してみてはいかがでしょう?殿下に会いに行かないと、お嬢様に非があるように思われてしまいます」

「分かるけれど、気が重いわ」


タメ息が出る。


「今日は、王城にピアニストが呼ばれていると聞きましたよ。陛下はピアノ好きですから」

「ならば行くわ!」


美しい音楽が聴けるのならばと、急に王城に行く気になった。気合を入れてドレスを選ぶ。


「ステキです。お嬢様」

「うふふ、ありがとう」


確かに自分はキレイだしと鏡の前でポーズをとってみた。


(このドレス姿をレウルスが見たらどう思ったかな......)


いつもは練習場の近くで買った庶民の洋服を着ている。


(いつか……彼の前でドレス姿を披露してみたいわ)


ちなみに、前回の演奏会でのドレス姿は、正体を隠していたからカウントはナシである。これまでにもドレスを着用する必要がある舞踏会が開催されることはあったが、ヘンリーが舞踏会を好まなかったのでルイーズもあまり出席することはなかった。出席してもヘンリーがサッサと帰ってしまうので、ルイーズもすぐに帰っていた。


レイニーは貴族の付き合いをしていたから、舞踏会に出席していたかもしれないが、そういった事情で彼とは面識が無かった。レウルスにおいては社交が嫌いそうだから舞踏会に参加などしていないだろう。


王宮に着くと、ヘンリーは執務室だという。


(お仕事はきちんとされているようね。そのあたりは感心だわ)


仕事を丸投げしてくるような人であれば、王子といえど結婚することを拒んだと思う。コミュニケーションを取りがたい人物だとは思っているが、やることはやるのでそこは認めていた。


執務室の扉をノックする。話が通っていたようですぐに扉が開いた。


「あら、ルイーズ様!」


執務室に専用の机を置いて堂々と座っていたリリアンが口を開く。


(..........相変わらず、おかしな状況が続いているわね)


「ようやく顔を見せたか」

「殿下とリリアン様がお元気で良かったですわ」


たとえウワサが伝わっていても、リリアンとこうもベッタリといたならば、自分のウワサは許されるのではと思った。


「.........リリアン、少し席を外してくれ」

「ええ~なんで?」

「ちょっとルイーズと話したいことがあるからだ。気にしなくていい」


今日のヘンリーは有無を言わさない態度であったので、リリアンは粘った甲斐も無く、仕方なく部屋を出て行った。出て行く時にキッと睨まれる。


(私のせいではないでしょう)


「そこに座れ」


ヘンリーはソファに座るようにルイーズを促した。メイドが茶の用意をした後は2人きりとなる。


(殿下と2人きりてお茶なんて近頃、あまりなかったから緊張するわ)


リリアンが留学して来てからは、お茶タイム自体が無くなることが多かった。


「ルイーズ、妙な話を聞いた」


やはりヘンリーもウワサを聞いたのだと、身構えた。


「........なぜ、男と2人で茶を飲んでいた?」

「あの話は、私を良く思わない者の策略ですわ」


父と兄と打ち合わせていた通り、まずはウワサ自体を否定してみる。


「ウワサ? オレは影から報告されたことについて話している」

「影??」

「そう、影だ」


(影って………あの影?姿を現さずに対象を守るというアレ?)


護衛騎士ならば普通だが、影だなんてお話の世界の存在だと思っていた。妃教育でもそんな存在について教えられたことはないからだ。


「お前の様子がおかしいから、しばらくオレの兵に様子を探らせていた」

「……ああ、影ってそういう..........って、どうしてです!?」

「焦る理由はあるようだな」

「焦るというか........殿下には申し上げてはいないことはあります」

「話してみろ」


ヘンリーは知っていて聞いているのだろう。


「私は……音楽に癒しを求めましたわ。美しい音は私を裏切りませんもの。だから、私は本格的に音楽に携わることにしたのです。もう、ご存じなのでしょう?」

「フルンゼ楽団だな?」

「ええ」


やっぱりヘンリーは分かったうえで聞いていた。


「お前は、楽団に入ることで音楽好きな男と仲良くなろうとしたのか?オレを嫉妬させるために」

「え?」


またまた、ヘンリーが()推理をしていた。


彼は、ルイーズが自分のことを愛しているという前提で物事を考えているらしい。


(...........こう考え方にいくつもズレがあると、殿下と共に暮らしていく自信が持てないわ。私たちは根本的に合わないのよ)


それに、自分のことを愛してるのだろうと考えるくせに、未だリリアンを側に置いている神経も理解できない。


「……殿下、私を自由にして下さいませんか?」


口からはそんな言葉が出ていた。

なんだかんだでルイーズに執着している王子様


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