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【完結】婚約者の王子より、冴えないチェリストに恋した公爵令嬢  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
◆第2章 宮廷にて

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モヤモヤするヘンリー王子

ヘンリーは執務室に戻る途中、なんとも言えない気持ちでモヤモヤしていた。


《そういうのは後で2人きりの時にして下さいませ》


(2人きりの時にして下さいませ、だと?)


ルイーゼとは小さな頃からの付き合いだから友のようであり、同志だと思っている。だが、自分が剣術などに集中してしまい学園の授業をサボりまくって留年が決定すると、一気に距離ができたなと感じていた。


学園在学中は学園をサボっても宮中にルイーズが顔を見せていたから、特に2人の間に問題などは起きなかった。いつものように茶の時間を共有し、他愛ないことを話していたと感じている。


だが.............とチラリと隣を見る。


自分の腕に腕を絡めるリリアンが登場してから状況が変わった。


リリアンはこちらがどんな対応をしようと問答無用で入りこんでいる人物だった。最初は煩わしいと感じたが、勝手に話しかけてくるからこちらから話しかけなくてもそれなりに会話が成り立つ。楽だ。


しかも、自分に一目惚れしたと言うから悪い気はしなかった。


(だが、リリアンは少々やりすぎだ)


甘えん坊で自分の感情に正直なリリアンを見ていると、奔放で羨ましく思える。でも、このままでは危うくなると感じていた。リリアンといることは自分の評価を下げることになるとは理解している。


......でも、なかなか引き離すことができない。リリアンは自分の心の隙間にスッと入ってくる。


ルイーズは落ち着いていて凛としている女性だ。直感的に動いてしまう自分とは違って、慎重で発言にも気を付けている。そんな彼女は優秀なのだろうが、見ていると自分の足りなさをイヤでも自覚してしまう。


(自分を支える存在が必要だとは分かってはいる。だが、それは自分に劣る部分があると認めることではないか)


男としては、自分の足りない部分を補われるよりも絶対的なリーダーシップで妻や国民を導いていきたいと願ってしまう。


だからこそ、彼女の前ではなかなか言葉が出てこなくなる。下手なことを言って侮られたくないのだ。


「ヘンリー様、何を考えているの?」


リリアンが下からのぞき込むように聞いてくる。ピンクブロンドの髪にあどけない表情がよく合っている。


「なんでもない」


手を伸ばしてリリアンを撫でると、リリアンは笑顔になった。


(この素直さがリリアンのいいところだ)


幼くて奔放だと言われるリリアンといると癒される気がした。緊張する必要もない。


(ルイーズを嫌っているわけではないのだがな..........)


ヘンリーはヘンリーで悩んでいた。


「ヘンリー様、また一緒の部屋で勉強してもいい?」

「勉強?」

「宿題が出ていたでしょう?」

「ああ。忘れていた」

「私が言わなかったら宿題忘れちゃうところだったね。私って偉いでしょ?」


リリアンがパチンとウィンクしてくる。


「ありがとう。助かったよ」


リリアンには素直に言葉が出てきた。


執務室にやってくると、リリアンは当たり前のようにリリアン専用席に座る。リリアンが机を置いて欲しいと言うので、用意してやったのだ。


自分が城の仕事をしなくてはならない時は、リリアンは専用席で学園の宿題をする。


まわりの者は隣国の王女をやすやすと執務室に入れるべきではないと散々止めたのだが、ヘンリーは書類を見せてはいないし、見張りもいるからと許していた。


「宿題はなんだったか教えてくれ」

「えーと、数学と理科と…ヘンリー様は全然、先生の話を聞いていなかったの?」

「.........寝てたな」

「もう!それじゃあ、私と一緒に卒業できないわよ?」

「一緒に卒業したいのか?」

「当たり前!」


側に来てヘンリーの手をギュッと握るリリアンは、純粋に自分を必要としてくれているようで、嬉しくなった。


「分かった。宿題をやるか」

「うん、早く片付けて。私と遊びましょう」


リリアンもヘンリーと一緒にいるのが当たり前のように思っているようだった。


(こんなに懐かれると無下にはできない)


「リリアンに今一度、聞きたい。リリアンは音楽にそれほど興味はなさそうなのに、どうしてルイーズと協力して音楽支援など言い出した?」

「うーんと、可哀想だからよ」

「可哀想?」

「ルイーズ様はヘンリー様の一応、婚約者でしょう?でも、私が独り占めしているから可哀想だと思ってお返しのつもり」

「動機が不純だな」

「あら、私の優しさよ?彼女は彼女で満たされていないと不満が溜まっちゃう」

「音楽で満たされてしまうのか、あいつの不満は.......」

「え?」

「なんでもない」


ルイーズがなにやら楽器を好んで弾いているのは知っていた。だが、そこまで音楽好きだとは思っていなかったのだ。試しに評判が良いという若手の楽団を呼び寄せてみたら、ルイーズが思いのほか喜んだので驚いた。


彼女の涙も気になったが、廊下で楽団員と話しているルイーズが一番、気になった。


(どうしてあの者とあれほど楽しそうに話していたのだ)


ヘンリーもあまり音楽に興味が無かったから、ルイーズが熱心に音楽の話をしていたのを見ると、自分の入り込めない領域の話をされて気に食わないと感じてしまう。


ルイーズが素直に喜んている姿はここ何年も見ていなかった。侍従任せではあるが花やアクセサリー、ドレスなどを贈れば丁寧に礼を言われたものの、あんな嬉しそうにはしていなかった。


(自分以外の男と話して楽しんでいると思うと、面白く無い)


面白くはないが、ルイーズの願いを叶えてやれば喜ぶのだろうかと思うと、提案を後押ししてやろうという気になっていたのだった。

ヘンリーは気難しいのです


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― 新着の感想 ―
会話の続かなさの理由が納得できました。でもヘンリーが思ったよりクズでルイーズが不憫。この先も展開が楽しみです。
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