あざとい平民女子は要注意
(あの女性は誰.......?)
レウルスの横にいる若い女性は、オレンジがかったツヤのあるブラウンヘアで可愛らしい顔をしていた。
少し距離があるのでなにを話しているのかは分からないが、時折、レウルスと目を合わせては仲良さそうに話している。
(さっきは不機嫌そうだったのに。あの子にはあんな顔をするのね)
無愛想なレウルスが女性と目を合わせながらチェロを弾く姿に嫉妬してしまう。自分が入団する前からあの若い女性とああして練習をしていたのかと思うと面白くなかった。
見ていると、オレンジブラウンの女性はレウルスのチェロに触れてなにやら話している。甘えている感じがしてイヤなものを思い出した。
(まるでリリアン様みたい)
「オリビア、どこ見てるんだ?」
よそ見をしているのに気付いたレイニーに声をかけられた。
「疲れた?結構、集中して練習していたからね。ここらで休憩にしようか。おーい、みんな、ちょっと飲み物休憩でもしよう!」
レイニーは立ち上がると手をパンパンと叩く。それを見た楽団員たちは楽器を奏でるのを止めた。
「皆、練習熱心で結構、結構!これで次の演奏会も期待できるな」
「リーダー、次の演奏会ってどこでやるんです?秘密だとか言って教えてくれていないじゃないですか」
トランペット担当のブラッドが言う。
「もうちょっとしたら教えてやるよ。ただ、オレたちにとってチャンスの場になるとだけ教えておこう。ここの部屋はいつでも使えるようにモーリスに鍵を預けておくから、各自、練習をきちんとしておいてくれ」
「オレに声かけてくれりゃ、すぐここの部屋の扉あけてやるからな!」
モーリスが元気よく言う。
(もうすぐ演奏会があるのね。私も参加できるのかしら?)
チラリとレイニーを見ると、意図が分かったらしくレイニーが口を開いた。
「あー、オリビアは今回は参加しない方向で。入団したばかりだし、まだ演奏会には出せない」
「私の技術に問題が?」
「そうと聞かれればそうだ。君はまだ、まわりと合わせるのが難しい」
「えっ、そんな……」
今まで、そんなことを言われたことがなかったので愕然とする。バイオリンの先生にはいつも褒められていたし、王や王妃の前で演奏を披露して褒められてもいたのだ。
「厳しいようだけど、今回の演奏会はフルンゼ楽団の命運がかかっている。だから、時間がない今回はごめんね」
「……」
聞くところによると、今度の演奏会は1ヶ月後だという。オリビアは張り切っていただけにショックを受けた。
(私はかなりバイオリンが上手だと思っていたのに)
「オリビアさんたら、ざんね~ん!」
鼻にかかるような声がしたと思ったら、あのチェロ担当の女性だった。
(なんですって!?)
ムッとしたが表情には出さないようにしてそちらを見た。
「本当に残念だわ」
社交界スキルを活かしてにこやかに言う。チェロ女は意外そうな顔をした。
「おいミア、オリビアちゃんに失礼な言い方をするなよ~」
やんわりブラッドが言う。
「私は思ったことを言っただけだもん」
チェロ女は悪びれなかった。
「それより~、私、オリビアさんのことを良く知らないからちゃんと知りたいんだけど!なんか苦労しているようにあんまり見えないけど、ちゃんと働いているの?」
このズケズケと聞いてくるチェロ女は、面接を受けに来た時にいなかった。新たな女性団員に興味津々らしい。
「ねえねえ、教えてよ~」
(このチェロ女、本当にうっとおしいわね。“ちゃんと働いているの?”ってなんなのよ!.......答えるにしても迂闊に答えられないわ)
「おい、人のことをあまり詮索するな」
レウルスが割って入った。
「お前は............商家の娘だったよな?」
(商家? 商家の方が都合がいいのかしら?)
「そう..........うちは商家で、そこで働いているわ」
「こいつの実家は楽団に入ってまで音楽をやるのを良く思ってないそうだ。だから、お前達もあまり詮索するなよ」
「そうだったんだ~。反対されているのに入団してきたなんて意外~」
皆もコクコクとうなずいている。自分を見る目がより好意的になった気がする。
(..........商家の娘ということになってしまったけど、なんだかイメージアップにつながったみたい)
レウルスに感謝の念が湧く。
「ちなみに、オリビアさんていくつなの?」
「17よ」
「え~!私よりも3歳も年上じゃん!」
(どういう意味よ!年上ってなに!?)
年齢について揶揄するなど、なんて失礼な人間なのだろうと思わずキッと睨みつけた。すると、チェロ女が‟きゃっ!オリビアさんコワい!”などと抜かしている。
「ミア、そういう言い方は良くない。謝れ」
神のようなレウルスの言葉が響いた。
「ホントのこと言っただけなのに、なんでダメなの~??」
「思ったことをそのまま言うのは子どもだけだ」
(ふふん。レウルスの言う通りよ。.........それにしてもこの子、ずいぶんと怖い物知らずね。本来ならば、こんな口を聞いた時点で即、牢獄行きね)
必死に作り笑いをしていると肩に手を置かれた。振り返ると、レイニーだった。
「おいおい、楽団には女性が少ないんだ。仲良くしてくれないと困るな~」
「はぁ~い、ごめんなさ~い」
「オリビアも大目に見てやって」
「………ええ」
辛うじて言葉を絞り出す。腹を立てて早々に辞めるワケにいかない。
「リーダー、優しい~」
チェロ女がレイニーにじゃれついた。
「ミア、ベタベタと男に触るもんじゃないよ」
やんわりとレイニーが注意するが、ほかの男性団員は特に止める様子もない。楽団に女性が少ないのもあって、男性団員はどうも女性団員に甘いらしい。
これがお茶会ならミアという女に頭からお茶をかけてやるのに!と、思ったルイーズだった。
実際にお茶をかけたことは無いけれども、かけてやろうと思ったことはあるルイーズ
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