表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/205

冴えない男爵令息に恋をした日

長編6作目になります!

今回の主人公は、音楽をこよなく愛する公爵令嬢と、ちょっぴり冴えない(でも腕は本物!)ぽっちゃりチェリストの男爵令息。

お互いに不器用なところでぶつかりながらも、じんわりと甘い恋を描いていきます。


どうぞあたたかい目で見守っていただけたら嬉しいです( ´ω` )/

「なんて、素敵な音……」


思わず足を止めた。広場に響くのは、深く豊かなチェロの音色。


ルイーズは父とともに、休日の街を歩いていた。石畳の広場では人々が思い思いに過ごし、カフェのテラスでは会話と笑い声が行き交う。


けれど──その音がすべてを塗り替えた。


広場の一角ではカルテットが演奏を始めていた。バイオリンが二人、ヴィオラが一人、そしてチェロ。


「“劇場の狂人”か……。哀愁があっていい曲だね」


父・コルネ公爵が満足そうに呟く。


「チェロの旋律が胸に響きますわ」


ルイーズは視線を演奏者たちに向けた。そして……彼を見つけた。


チェロを弾く、ひとりの男性。黒いシャツにパンツという簡素な服装。少しぽっちゃりとした体型で、眼鏡を掛けている。冴えない……はずなのに。


(あの人……)


首をわずかに揺らしながら、心から楽しむようにチェロを奏でる姿。その姿に、なぜだか目が離せなかった。


「彼、惜しいわ。もっと痩せていれば、きっと……」


そう思った直後には、もう違った。


(でも、このままでいいのかもしれない。演奏している彼は、すごく素敵)


チェロは語るように、響いていた。


力強く、それでいて繊細。音が彼の人柄そのもののように感じられた。


「次はタンゴか」


父が小さく身体を揺らす。リズムが変わり、広場の空気も一気に軽やかになる。


チェロ奏者の彼も身体を大きく使い、演奏に没頭している。時折親指で弦を弾く姿に、ルイーズの胸が高鳴った。


(楽しいだけじゃない。情熱も、優しさも……この音に詰まってる)


恋の始まりだった。


演奏が終わると、観客の拍手が湧いた。


父が金貨の袋を持たせた従者をカルテットに向かわせる。礼をする演奏者たち。彼の視線が一瞬、こちらに──


(……目が合っちゃう!)


慌てて視線を外す。鼓動が早くなる。息がうまくできない。


「お父様……あの方たち、素晴らしかったですわね」


「うむ。気に入ったよ。今度、我が家のサロンに招こうか?」


「いえ……結構ですわ。今日はこのままで」


「そうか? お前が金貨を入れてやれば、もっと喜んだろうに」


「恥ずかしいですもの……」


父の茶化しにも、笑い返す余裕はなかった。ルイーズは、自分でも理由がよくわからなかった。


ただ──あの冴えないチェロ奏者に、心が惹かれて仕方なかった。

ルイーズはまだ気づいていませんが……これは一目惚れです。そして、運命のはじまり


もし、作品が「いいな」&「気になる」と感じていただけましたら、

本文下の【ブックマーク】と【☆評価ボタン】をぜひ、ポチッとお願いいたします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

そっと寄せていただける感想も、とても励みになっております( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )


※更新は毎日19時20分頃更新しています。

引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです٩(´꒳)۶

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ