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アキハバラの片隅 懐古趣味者のオモイ  作者: 有馬佐々
――ヨン――
12/45

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 ジュンのもとにキイチからの連絡が来たのは翌日の正午であった。

「是非、うちで、よろしく」

 キイチの明るい声が電話越しに聞こえてくる。

 ジュンはそれを聞いて、歓喜をぐっとこらえて、平常を装って返事をした。

「ありがとうございます、出勤はいつからですか?」

「じゃあー、直ぐになるけど、明日からとかイケる?」

 キイチは軽く提案をする。

「大丈夫です。因みに萌香さんとは一緒ですか?」

「ああ、ライチね。一緒にする予定だけど、その方がいいでしょ。それと、明日、惠谷ちゃんの源氏名を決めるからね。いくつか候補を考えておいてね、それじゃあ」

 キイチが一方的に電話を切って、途切れた後の音だけがジュンの耳に残る。

 ジュンはこれが調査の一部であることを忘れ、本気で喜びかけていたが、その途切れた後の寂しさを思わせる音で冷静になり、状況を思い直すことにした。あくまでも探偵の生業、これは僅かな調査の一部に過ぎない。それでも一歩前進できたことは良いことである。自分が探偵という事を忘れてはならない、とジュンはプライド共に自分の役割を再認識しようとした。

 しかし、調査の一環としてこれからの勤務時に使う源氏名の候補を決めなくてはならない。

 ジュンは適当に考えて、数十秒で惠谷のめぐみを少し言い換えて「メグリ」と名乗るのはどうかなと考えた。うん、とジュンは納得がいったのでその勢いでキイチに電話を掛けて聞いてみることにした。

「またすみません、惠谷です。源氏名をたった今考えて気に入ってしまって伝えたくて、つい電話してしまいました」

 特に忙しくもなかったキイチは、「それじゃあこのまま電話で決めてしまおうか」と提案をしてジュンの考えた源氏名を聞いた。

「どうですか? メグリです。本名と少し掛けてみましたの」

 メグリという名は好評だったようで、キイチは迷わず、「それにしよう」と言い、電話は僅か三十秒程で呆気なく終わってしまった。

源氏名も決まったことだし、ジュンは明日の出勤に備えることにしたのだ。


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