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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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54/54

第54話 不毛ワールド最終話~笑ってくれればそれで良し

 百年の恋もさめる汚さや……。


 事件は起こった。

 最悪のタイミングと、最凶のインパクトで。


 佃煮工場見学当日。その早朝のこと。

 突然、庭先でドン! と凄まじい音がした。


「何や何や」


 浮かれて早起きしていたアタシら、ゾロゾロと庭に出る。


「な、何なん? メチャ臭いやん!」

 アタシは鼻をつまんだ。これは下水の臭い──つまり。


「……ウンPの臭いや」


 庭に埋まってた下水管が突然、破裂したらしい。

 下水ってことはお風呂の排水や、当然トイレの排水が混ざってるわけで。


「だから、つまりウンPの臭い……」


 独特の色した液体が庭中あちこちに飛び散っている。

 それはそれは凄惨な光景やった。


「ヒイッ! アレを見よ」


 桃太郎が叫んだ。

 指差す方向を見て、アタシらも悲鳴をあげる。


 うず高く積み上げられた電化製品(既にウンPまみれ)──その頂上にスックと立つ人影が。


「……ワシとしたことが思わぬ攻撃を……カードは既に切られた……調査内容の確認を…主に北部方面の…………」


 あらぬ方向むいて何かブツブツ言ってる。

 イヤ、アナタ、どこと交信中ですか──?


「か、かぐやちゃん?」


 オキナの声に反応して、絶世の美青年はクワッとこっちを向いて凄まじい勢いで走ってきた。


「アッ、アーッ。来ないでっ!」


 さしものオキナも後ずさる。

 そう、かぐやちゃんは全身ウンPまみれになっていたのだ。


「Pとは何ぞや。今更伏せ字を使っていかがいたすか」


 珍しい桃太郎のツッこみ。


 背後ではうらしまがかぐやちゃんを見つめながら「あふっ……あふんっ……」と喘いでいる。

 多分、微妙などこかの感覚で羨ましがってるんや。

 何でもありの変態や、うちの義兄は。


「突然、地面が割れてこの固……液体(?)が噴き上がってきたのだ」


 ーー意外と冷静にかぐやちゃん、状況の説明を始める。

 彼はその固……液体(?)と戦ったらしい。

 果敢な行動や。


「想定外の攻撃だ。匂う?」


 自分の身体をクンクン嗅いでる。

 わざわざ尋ねるって事は、もう嗅覚がイカレているようだ。


「だ、大丈夫。何も臭わんで。な、みんな?」


「う、うん……」


「まぁ……」


 みんな、微妙なしかめっ面で一歩、身を引いた。


「ボ、ボクは鼻炎だからゴフッ……平気だよ。鼻詰まってるから臭いなんて感じな……ゴブッ! ガボッ!」


 オキナがある意味涙ぐましい感じでかぐやちゃんに近付く。


「ざまぁみろ、やで。アタシに鉄ゲタ履かせたバチが当たったんや」


 根田さんの件で悟りを開いた筈なのにアタシ、かぐやちゃんの苦境を見てほくそ笑んでた。

 悪いけど、気持ちいい。胸のつかえが取れて気分が晴れた。


「じゃあ、アタシらはそろそろ……。なぁワンちゃん?」


「そそそうですね。つつつ佃煮工場の予約は朝イチなので」


 支度していたカバンを背負うと、お姉の背中が殺気走ったのが分かった。


「リカ、ワン、佃煮が何ですって? 今日は全員で修理と片付けよ」


 ニッコリ笑った笑顔が、さすがに引き攣っていた。

 できればここから逃げ出したい。佃煮工場でもどこでも行きたい。

 でも大家としての責任感と、かぐやちゃんへの想い(そんなものがまだ生きているのかは分からんが)が、お姉を辛うじて踏み止めたみたい。


「いや、でも時間が。な、ワンちゃん」


「そそそうですよ。ね、桃さま」


「ヒヒッ!」


 アカン。桃太郎はまだショックから立ち直れてない。


「お、お姉。悪いけどアタシらは行く……」


 立ち去りかけたその時だ。


「のろう…………」


 静かな声が響いた。


 一歩踏み出しかけていたアタシの足は、凍りついたように空中で止まる。


「行ったら呪う」


 お姉だ。怖い!


「自分達だけ遊びに行ったら、絶対に呪う!」


 あふんっ……高い声で叫んで、まずうらしまが倒れた。


「で、でも予約してるし。佃煮はお姉の分ももらってきたげるし。帰ったら掃除も手伝うし」


「そそそうですぅ。楽しみにして……」


「呪うッ!」


 アウッ……今度はオキナが倒れた。

 このお姉に本気で呪われたら生きていけへん。

 それは本能で分かっていた。


「よよよ予約取り消しの電話をしますぅぅ」


 ワンちゃんがその場にヘナヘナ座り込んだ。

 この瞬間、アタシらの敗北が決定したわけや。

 仕方ない。つくだに工場見学は諦めよう。


「アタシ、バケツ持ってくるわ。桃太郎は水道にホースつないで。そのへん水で洗い流そう」


「うらしま、下水業者に電話なさい。あなたに相応しい役目だわ」


 アタシら姉妹は、それぞれ側の奴に的確な命令……いや、指示を与える。

 ところが、だ。


「その必要はない」


 ウンPまみれのかぐやちゃん、ものすごく精悍な表情でアタシらを見回した。


 ああ、そうや。この人の始末(掃除)が先やった。


「おフロ入れるの嫌やな。バスタブ汚れるやん」


「そうね。かぐや様には庭で真っ裸になってもらって、ホースで水をかけましょう」


「いや、お姉。それ、さすがにマズない……?」


 突如、空に暗雲が立ち込めたのはちょうどその時だ。


「ギャオーーーーッッッ!」


 ウンPまみれのかぐやちゃんが一声、吠えた。


「ギャギャオーーーッッ!」


 そうや。かぐやちゃん、この人は胡散臭いながらも気象を操る能力を持って(?)たんや。


 闇は更に深まる。

 稲光が空を走り、落雷の轟音が周囲を揺るがす。


「キャーッ! リカ殿ぉ!」


 桃太郎がアタシにしがみついてきた。


 ピカッと光がきらめき、アタシは何かを思い出す。

 感電少女としてのあの忌まわしい感覚。


「忌まわしい? いや、むしろ気持ちよかったで?」


 ピカッ! ピカーッ!


 頭上で強烈な発光が起こった。

 全員の顔が白く浮かび上がる。

 手足にピリピリと電気が走り、誰かが甲高い悲鳴をあげた。

 爆音が響く。

 アタシらは次々と雷に打たれた。


「ギャッ!」


「ギャーッ!」


 身体がフワリと浮遊する。

 ああ、逆に気持ちいい……。

 佃煮工場に行くつもりがアタシらの魂、宇宙へ飛んでいく感じや。


 フワフワ。フワフワ。

 多分アタシは何かに開眼するだろう。


 カミナリに打たれて、実は結構なダメージやねん。

 ピクピク。ピクピク。全員が白目を剥いている。

 身体を流れる電流がピリピリ痛くも、心地良い。


 アタシらの楽しくも傍迷惑な日々よ、不毛な日々よ、サラナラ。

 きっとまた会おうな。

 だからそれまで、サヨナラ。



変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日・完



よもやここまで読んでくださる方がいようとは…。

ほんとうにありがとうございました。

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