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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第45話 ボクの××は聖水だよ~それは不毛な名言(2)

 笑いながらも「ブヒ、ブヒーッ」と鼻をかむ。


「ボク、鼻炎がヒドくって~」


 言いながら、鼻汁たっぷり含んだティッシュをキレイにたたんだ。


「へぇ、大変やな。花粉症?」


「それもあるけど、アレルギー体質でハウスダストとかに弱いんだ。このアパート、埃っぽいし~? いっそ……ゴ、ゴメン」


 話の途中でオキナはさっきたたんだティシュを手にした。

 おもむろに広げて「ブヒッ!」とかむ。

 そしてもう半分にたたんでテーブルに置いた。


「ちょっと、何してんの? 汚いなぁ。捨てぇな、ソレ」


「何で? ボクの鼻水はキレイだよ?」


「な、何を根拠に……!」

 久々にアタシは絶句した。

「アカン! 虫わくで。捨て!」


 むーし・むーしっ!


 突然、背後からムカツクくらいのスローペースの拍手が。

 手拍子に合わせてムシムシ言っているのはお姉だった。

 いつのまにか玄関に立っている。


「虫なんか湧かせたら、出て行ってもらうわよ」


「ゴキブリ大量発生させた張本人は黙っててよ!」


 オキナの痛い反撃に対してシラを切ってるつもりか、お姉はそっぽを向いた。

 変な音楽を口ずさんでいる。


「ダストダスト~♪ うちのアパートには~ハウスダストはいません~♪」


 ……そこは認めようや、お姉。


 オキナは鼻をかんではティシュをたたみ、それを広げてはまた鼻をかんでいる。

 そういや中1の時の生物の先生も同じことして嫌われてたっけなぁ。


「何だよ、その目? ボクの鼻水はキレイだって言ってるじゃん」


「………………」


「ボクの鼻水は聖水だよ」


 またヘンなこと言い出した、コイツ。


「ボクの鼻水が石油並みの貴重な液体だったら、ボク大金持ちだよ。一代で財を築けるよ。石油王ならぬ鼻水王……ボクの場合、優雅な雰囲気だから鼻水王子かな」


「はなみずおうじ?」


 アカン。コイツも妄想スイッチONや。何が鼻水王子やねん。

 そんな人、誰がもてはやすか!


「そしたらボク、かぐやちゃん連れてこんなアパート出て行ってやるんだ。大きな豪邸に住まわせてあげるよ。ツライけど鼻炎薬も飲まずにがんばる! そして、かぐやちゃんにもっとちゃんとした服を買ってあげるよ」


 ああ、コイツもさすがにあのKILLTシャツには疑問を抱いてたんやな。

 その点に関しては、ちょっとホッとした。


「服より先に靴買ったげて。あの人、いつもハダシやもん」


「そうだよね。オシャレな軍用ブーツ買ってあげるよ」


「あー、ハイハイ。それがええわ」


 そこへお姉が割って入ってくる。


「ダメよ! かぐや様は置いていってもらうわ!」


 こうして再び不毛すぎる争いが勃発した。


 お姉とかぐやちゃんのデート(隕石やら、空腹による失神やら)騒動の後、この2人の争いはより熾烈なものへと変じていった。

 ぶっちゃけ、見苦しい罵りあい。

 どちらがよりかぐやちゃんの食の面倒を見てやれるか、そんなことを言い争っている。


 オカシイと思うねん。

 かぐやちゃんはいい大人や。周りの人が面倒みてやる必要はないやん。


「違いますー。かぐやちゃんは保存食以外の物だってちゃんと食べますーぅ」


「黙りなさい。かぐや様がお好きなのは豆と種、それに尽きるのよ!」


「ちがいますーぅ」


「黙りなさいよ」


 こっちが恥ずかしくなるから、あまりおかしなことは言わないで欲しいもんや。


「あのな、オキナ? かぐやちゃんって確かに一瞬ゾッとするくらいの美青年やけど……でも、どこがいいの?」


 悪いけど、どこがいいの?


「あの人、いつも余所向いてるもん。どこか一点をジーッと見ながら、自分の好きなことだけペラペラ喋ってるだけやん。何と交信してるのか分からんし。何の電波受信してんのか知らんけど、時々突然叫んだりするやん。理解不能の言語で」


「そ、そこがいい所で……」


 そこがいいのか! 正気か?


「それに、気付いてた? あの人、アタシらのこと──もちろんアンタも、1回も名前で呼んだことないで? 覚えてもらってないんちゃうか?」


 オキナは一瞬、真顔になった。


「な、何言ってんのさ? かぐやちゃん、いつもボクのことをオキナって呼んで……? オキナ君って? オキナちゃん? オキナさん…………?」


 見る間に赤毛の顔色が真っ青になった。


「ボク、かぐやちゃんに名前呼ばれたこと、1回もないッ!」


 向こうでお姉もガックリ膝をつくのが見えた。

 2人、同じショックを受けて、今なら心が通じ合えるかもしれない。


「あの人にとって、アタシらは空気みたいな存在やねん」


「くうき……?」

 オキナ、カタカタ震えだす。

「ボクはくうき……? かぐやちゃんにとってボクは……」


 よほどショックだったのだろう。

 その夜、奴は本気で熱を出した。

 アタシの風邪が伝染ったわけでもない。心労が招いた病気や。


 恋の病にしてはそれはあまりにも不毛やと、アタシは思った。



「はじめての経験・雨乞い~不毛なことには変わりなし」につづく

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