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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第39話 霊感少年G登場~不毛か呪いか、右足は骨折か?(2)

「ぱたーん?」


 咎めるようにじーっと見られ、アタシは口ごもった。


「い、いや、こっちのことや」


 コイツが噂のヒッキーの1人か。

 むぅ、こんな怖い奴やったとは……。


「れれれ霊道って?」

 ワンちゃんの震える声。


 そうや、その話や!

 突然の霊感少年登場に、アタシはちょっと浮き足立っていた。


「においがしたでしょう」


「は? 臭い?」


「つよいれいはねぇときにきょうれつなにおいをはなつんだよぅ……」


 強い霊は時に強烈な臭いを放つものだと、Gは言う。

 長い年月、同じ所に留まっている霊もまた然りと。


「そういや入った時、この部屋ヘンなの臭いしたな。煙草の匂いみたいな。窓開けたから消えたけど」


 吸わない人間にとって、あれはキツイ臭いや。

 しかしうちのアパートには煙草を吸う人はいない筈。

 意外とみんな健康的やし。


「オキナ、アンタが吸ってんのちゃうん? 隣りの部屋やし、臭いがこもってもおかしくないわ」


「やめてよ。ボクは3ヶ月前に禁煙達成したんだから」


「ホンマか?」


「ホントだよ~」


 怪しい。


「じゃあ、かぐやちゃんは?」


「ワシが煙草を? まさか! 戦場で特有の匂いを残しては命取りに……」


「せんじょう? ああ……分かった。吸ってへんねんな」


 お姉でもうらしまでも、ワンちゃんでもカメさんでもない。

 ということは、この部屋で煙草吸ってたのは誰や?


「ゆゆゆ幽霊ですぅ!」


 ワンちゃんの叫びに、アタシらはざわついた。

 いわくつきのこの部屋、やっぱり出るんや。


 んん? 煙草吸ってるヤンキーの幽霊を想像して、アタシは一瞬混乱した。


「ちょっと待って。オカシイって! 煙草吸ってる幽霊が、アタシのパンツと桃太郎のズボン盗んで部屋に並べとくのか? その幽霊、一体何がしたいの?」


「………………」


 誰も答えられなかった。


 その時、アタシは目撃する。

 アタシらが凝視する中、窓が勝手にソロソロと開いたのだ。


 これこそ心霊現象かと肝を冷やしたものの、窓の外からニョキッと伸びた腕にすぐ気付く。

 「よっ」とかけ声をあげながら、ランドセル背負った男の子が窓枠を越えて入ってきた。

 慣れた様子で靴を脱いで、ランドセルから体操服(使用済)を取り出す。


 更に、次から次へとランドセルの子供が部屋に入ってきた。


「くっせ~~~っっ」


「おれのがくっせ~~~っ」


 汗ビショの体操服を振り回して遊びだした。


 キャハハハと何だか無邪気に笑っている。


 ようやくアタシらに気付いた様子。

 お互い硬直すること数分。


「ヒィー!」


「キェー!」


 思い思いの悲鳴をあげて、子供らは散っていった。


「ま、待てやっ!」

 アタシも窓枠を越えて追いかけようとしたものの、足が引っかかって庭に落ちる。

「あ痛っ! 右足がっ……!」


 騒ぎで舞い上がったパンツが、ヒラヒラとアタシの上に落ちてきた。


 結局パンツ泥棒は近所の悪ガキだと分かった。


 アタシのパンツに興味があったわけではなく、近所のボロアパートでの肝試しの一環だったらしい。

 一人ずつアタシの部屋に忍び込んでパンツを一枚取って、それを1─3に並べて帰るという企画。

 剛の者は、更にその部屋で汗臭い体操服を振り回して遊んだということだ。


 それが最近、この近所の小学生のブームになってたらしい。

 アタシがしたり顔で煙草の匂いとか言ってたのは、小学生の汗の臭いやったんやな。


「訴えてやるわ! うちのアパートを何だと思ってるのよ!」


 お姉はそう言って息巻いて出て行ったが、しばらくしてからグッタリした様子で帰ってきた。

 小学校に怒鳴り込み、校長に直談判。


 すぐに全校集会が開かれたらしい。

 校長が事件のあらましを全校生徒に説明し、そしてみんなが声を合わせて「大家さん、ごめんなさい。妹さんにもごめんなさい」と謝ったということだ。


「それ、晒し者にされただけやんか……!」


 お姉、力なく頷く。


「ハゲの校長が講堂で、大きな声で事件の説明をするのよ。その間中わたしは一人、壇上にパイプ椅子置いて座らされて……。わたしと校長以外、生徒も先生もみんな笑ってるの。特にパンツの件。あれは拷問だわ」


 さすがのお姉もこれはツラそうだ。

 ご主人のテンションに合わせてうらしまも落ち込み、それをカメさんが必死に慰めている。


「それよりリカ殿、足は大事ないか」


「いや、それが……」


 桃太郎に言われるまでもない。

 アタシは右足甲の激痛に耐えていた。

 これは……イッたかもしれんな。折れてるかも?


 騒ぎが収まってから気付いた。

 いつの間にか花阪Gの姿が消えている。

 部屋に戻ったのだろうと2─4の扉をノックするも、返事はない。


 まさかコイツが幽霊だったのか?

 そういうオチなのか?


 まことしやかに囁かれ始めた花阪G怪談説。

 しかし夜遅くに、パチンコの景品を抱えて、Gがのんびり戻ってきた。

 何やねん、このオチは!



「花阪G・妖精事件~不毛にツルっツル」につづく

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