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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第38話 霊感少年G登場~不毛か呪いか、右足は骨折か?(1)

 ゆっくりと室内に入っていく。


「ちょっと待って。何でアタシが先頭やねん」


 アタシの背に隠れるようにして桃太郎。

 その後にカメさん、ワンちゃん、うらしまと続く。


 怖いもの知らずである筈のお姉は、廊下から笑いながらこっち見てるだけ。

 その向こうでオキナが早くも腰を抜かしてた。

 更に向こうでかぐやちゃん、ボケッと余所を向いてる。



 そこは噂の1─3号室。

 8畳の板間。手前に小さな台所。向こうに押し入れ、奥に窓。そこには暗い色したカーテンが下がっている。

 室内の造りは、アタシの住む部屋と変わらない。


 ただ、空気が重い……。

 ズシッと重い。

 異様な感じや。


 ず、ずっと閉め切ってたんやもん。それは無理ないで?


 昼間なのに薄暗い室内。

 足元も覚束ないのにみんながグイグイ背中を押してくる。


「押さんといて。痛いって! 肩のダメージと、アタシ足も痛いねん!」


 とにかくカーテンを開ける。

 パッと光が差した瞬間、みんなの悲鳴が背後にあがった。

 振り返って、アタシも絶句する。


「パ、パンツっ!」

 室内には見覚えあるパンツがきれいに並べられていたのだ。

 知らずに踏んでいたみんなが、慌てて足をのける。

「ぜ、全部アタシのパンツや……」


 何が起こった? この事態は何や?


「はっ、余のズボンもここに!」


 パンツの海から桃太郎が引っ張り出したのは、失くしていたズボンや。


「幽霊だよ! 幽霊の仕業だよーッ!」


 オキナの金切り声。


「ゆ、幽霊か?」


 ちょっと待って。

 怖いのか滑稽なのか分からん。

 何で幽霊が人のパンツ盗んで、部屋中に並べるんや?

 混乱するやん。

 これはホラーなのか? それとも笑いなのか?


「こ、この話は、ホノボノジャパニーズメルヘンギャグ路線ちゃうんか!」


 何じゃそれは、と桃太郎がズボンはきながらこっちを見る。


 その時だ。

 異様な空気が室内を包んだ。

 ヒタヒタと静かな足音が近付いて来る。


「ここにはれいどうがとおっているよ」


 抑揚のない陰気な低い声。

 突然背後から投げられたその言葉に、アタシらは肝を冷やした。

 桃太郎が「キャッ!」と悲鳴をあげて、アタシの腕に取りすがる。


「だ、大丈夫や。アタシがついてる」


 言いながらアタシら、変な関係やなと思った。


 1─3号室玄関前。

 小柄な少年──よく見れば年いってる?──が陰気に立ち尽くしている。

 大きな目でじーっとこっちを見て、ゆっくりボソボソ喋りだした。


「ここにはれいどうがとおっているよ」


 え、何や? ここにはれいど…れいどう…霊道!?


 霊道が通っているよって言った!?


 霊道って何や!

 一気に室温が下がった。


 今回に関しては、アタシもさすがに宇宙人とは思わない。

 むしろ幽霊か何かかと…。


「アンタ……誰?」


 少年の大きな目がクルリとこちらを向く。

 ひぃ、怖い。


「れいどうとは……」


「やっぱり! ホラ、やっぱりね!」


 少年が口を開きかけた直前、オキナが突然割って入ってきた。


「ボク、霊感あるって言ってんじゃん。霊的なモノが近くにいると、すごく身体がダルめになって眠くなっちゃうんだ。朝になってもぉ、昼になってもぉ、夜になってもぉ、目覚めなかったりするんだよぉ。体力とぉ、精神力をぉ削り取られてくかんじ?」


 何やその喋り方。ウザイな。


「それはアンタが怠け者なだけ(ちゃ)うんか?」


 そう言うとオキナは、アタシを見下すように「ハッ!」と笑った。


「霊感のない人には、何言ってもムダだって分かってるけどね~。要は感覚?ってやつ~?」


「ふ、ふーん」


 オキナはものすごく得意気だ。

 アンタに霊感があるのはいいけど、何でアタシがそのことに関して蔑まれんとアカンねん。腑に落ちない。


「こここの人の言うとおりです。れれれ霊道が通ってますぅ」


 ワンちゃんまで言い出した。

 アカン。みんな変な目つきになってきたで。


「あの……こ、こちらさんはどなたで?」


 瞬きすらせずにじーっとこっちを見詰める大きな目。

 アタシが視線を逸らせたのは恥ずかしいのと恐ろしいの、二つの思いからだった。


「この子? ホラ、アレよ。あそこの子。アレだってば」


 お姉が近所のオバチャンみたいな話し方した。


「アレじゃ分からん。あそこじゃ分からんって」


 すると少年本人がクルリとアタシの方に向き直った。

 こっちを凝視しながら、身体ごと向かってくるので怖いったらない。

 サラッサラの髪が優雅に揺れてる。


「じぃです」


「は? 爺?」


「じぃはねぇきみにあったことあるよ。ぱちんこいくときみかけた。でもきづいてなかったね」


 こ、怖いねん!


 爺は君(=アタシ)に会ったことがあるよ。パチンコに行く時に見かけたよ。でも(アタシは)気付いてなかった──そういうことか? そう言ってるのか?

 いや、だから怖いねん!


「はなさかじぃです」


「お隣りの2─4の花阪さんよ。花阪Gさん」


 はなさかじいさん……花咲爺さん?

 あぁ、今度はそのパターンできたか!

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