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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第36話 パンツを盗まれた!~桃太郎が指揮る不毛捜査(1)

「早く……早く出てぇ~!」


 漏れる~ぅ、というセリフをかろうじて飲み込んだ時だ。

 2回連続して水を流す音が聞こえた。

 ようやくトイレットの扉が開く。


 アパートに2つしかない共同トイレットだから、時として(いや、かなり頻繁に)こういう事態は起こるのだ。


 悠々と出てきたのはかぐやちゃんだ。

 少し微笑んでアタシを見る──いや、アタシを通り越してすごい遠くを見詰めている。


「聞け。昨日久々にお腹いっぱい食べたからか、かつてない大きさのウンPがでた」


 すごく満足そうだ。


「そ、そうなん? よかったな…」


「ウム」


 頷いてかぐやちゃん、鼻歌口ずさみつつ庭に帰っていく。


 ……アタシ、今更ながらガッカリした。

 あの人、黙ってたらホンマに格好いいのに。残念すぎる。


 窓を全開にして用を足している最中だ。


「早くッ! 早くッ!」


 ドアがドンドン叩かれる。


「あぁぁ、ちょっと待ってぇ」


「待てないぃぃぃ! 早く出てぇぇぇ!」


「ひぇぇ、ごめん! すぐ出るから待ってぇな!」


 かぐやちゃんの堂々としたマイペースっぷりを見習いたいわ。

 あの人、どんだけ順番待ちしてても優雅にゆったりとウンPできる人やもん。


 小心なアタシはそういうわけにもいかず、慌てて出た。

 待っていたオキナに舌打ちと共に睨まれ、不満に思ったものの「ごめんなさい。お先でした」と頭を下げる。

 扉を閉めてからオキナの悲鳴があがった。


「臭ッ! あの女、ウンPしたな!」


 違う!


「違う。アタシ違う(ちゃう)のに……」


 何だか涙が出て、アタシはその場に力なく座りこんだ。

 程なくして出てきたオキナがアタシに躓く。

「ギャッ!」と悲鳴をあげて数歩よろめいてから、側に座り込んだ。


「ご、ごめんってば。さっきはボクもちょっと焦ってたからさ」


「アタシ違う(ちゃう)ねん…」


「分かったって。ね、昨日は大丈夫だった? やっぱりショックだったよね。今はどうしてるの? やっぱりノーパン? 仕方ないよね。パンツないんだもん……プッ! ど、どんな形であれ……ブフッ! ノーパン仲間が増えてボクとしては嬉しい限りだよ?」


「ち、違うわ。今ちゃんとはいてる。笑うな! それにアンタも最近は水色パンツはくようになったんやろ?」


「んー……? やっぱり締め付け感? 締め付けられ感? が許せなくて、気付けばパンツを脱いでたよ」


「そ、そうなんや。気付けば脱いでたんや……」


「残念。この機会にキミも目覚めたら良かったのに。ボクと同じノーパン主義に♪」


 目覚めてたまるか!


 昨日はホンマに散々やった。


 外れた肩は夜通し痛む。

 更に自転車から落ちた時に右足も傷めたらしい。

 足の甲にズキズキと激痛が走り、かるく腫れてる感もある。


 不安になって夜中に桃太郎を起こすも、きびだんごを一つ貰って慰められただけ。

 人ん()でグーグー気楽に寝ている桃太郎の寝顔を見ると、腹立ってしょうがない。


 何せパンツがないのが痛い。

 自転車遊びから帰ったらアタシのパンツ、全部盗まれた。

 昨日穿いてたやつ1枚しか残ってない。


 精神的疲労が激しく……しかもモヤモヤした思いが渦巻いて、昨夜はロクに眠ることもできなかった。


「お願い。パンツ貸して。洗って返すから」


 とりあえず夕べお風呂に入る時、お姉に頼んだ。

 すると姉は露骨に顔を顰めたものだ。


「貸してあげるわ。でも、返してくれなくて結構よ」


 気持ちは分かるけど、傷付く言い方やわ……。


 そして桃太郎の指揮下に捜査本部が(なぜかアタシの部屋に)置かれたのが、今朝のことだ。

 関係者一同、外出を禁じられる。

 有無を言わさず捜査本部の一員や。

 何でや。アタシは朝イチでパンツ買いに行こうと思ってたのに。


「皆の衆!」


 張り切って立ち上がった桃太郎。

 スーツ(上だけ)にメガネ、短パン姿は捜査指揮官としては滑稽な感じや。


「皆の衆に集まってもらったのは他でもない。知っての通り、昨日リカ殿の黄ばんだパンツが盗まれたのじゃ。一枚残らず持っていかれたのじゃ」


「き、黄ばんでへんわ! 真っ白や! アンタな、何回も言うけどアタシは16歳の乙女やで。失礼にも程があるわ!」


 押し殺した低い笑い声が地味に響く。

 オキナとうらしま、お姉が笑っているのだ。

 ひどい人たちや。


 ウケた、という思い。

 それが桃太郎を更に調子付かせた。


「容疑者はアパートの中の八人+αじゃ! 余が思うに、犯人はこの中におるやもしれぬ~!」


 中途半端なキメ台詞と共に、奴はアタシらを見回した。


 事件って言うな! これは楽しいイベント違うねん。


「まずは聞き込みを行うが良い、リカ殿」


「行うが良いって、人にさせる気か! 桃太郎、アンタいいかげんにして。人の非常事態を利用して遊ぶな!」


「ほ? そちも、こういうことが好きではなかったか?」


「む……」


 桃太郎とワンちゃんのデート(?)の際に尾行を楽しんだのは確かや。

 空想の中で刑事ごっこしてた。

 カメさんがうんうんと頷く。

 アタシが睨むとシュンとしたけど。


「良いではないか。余に任せよ。ともかく、事件の前後の状況を考えてみよう。リカ殿に恨みを抱く存在がおるやも知れぬのぅ。数多く……それはもう、数多くおるように思うぞよ」


「そ、そうやろか……」


 自信が揺らいでくる。

 桃太郎の言う通りかもしれん。


 アタシ、みんなに恨まれてたんかなぁ。

 大雑把な性格やし。

 人に迷惑かけても気付かないとこ、あるんかもしれへんなぁ。

 パンツを盗まれても仕方がない人間なんやろか。

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