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変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


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第33話 不毛恋バナ~甘酸っぱく始まったものの、苦々しく終了する

「カカカカメさんは恋人っているんでしょうかね」


 不意に背後から生温かい息が。

 アタシは問題集を取り落とした。


「うわ、ビックリした。ワンちゃん、いつの間に入ってきたん?」


「カカカカメさんの恋人って男でしょうかね、女でしょうかね」


 メガネが爛々と光っている。

 アタシは引いた。


「さ、さぁ? アタシは聞いたことないけどな。けどまぁ、カメさんのことやし、何かスゴイ……イタリアのセレブとか、元CIAのスパイとか、いやいや日本の彫師の(アネ)さんとか……とにかくそういうイメージやで?」


 どういうイメージやねん、アタシも。


 ワンちゃんはアタシの話を聞いてはいない。

 ハァハァ言いながら妄想を膨らませてた。


「カカカカメさんの恋バナ……聞きたいですよね」


 そう言えば……と思い出した。

 実はアタシはカメさんと話す機会が意外と多い。


「カメさんの好きなタイプなら知ってんで。一緒に掃除してる時、聞いたもん」


「え、どんな?」

「詳しく聞かせなさいよ」


 ワンちゃんはもちろん、お姉ですらも色めき立つ。

 やっぱりみんな女子なんや。

 こんなメンバーでも、このテの話は大好きなんやな。


「カメさんの好きなタイプはな、体長は小さくて、目が大きくて、声にものすごく特徴あって、元気だけどおっちょこちょいな食いしん坊らしいで」


「ななな何ですか、そんな昔のアイドルみたいな設定は。やけに細かいですし。体長って……?」


「そうやろ。アタシもそう言ったらカメさん、広告の裏に絵描きだしてな」


 慣れた風にサラサラ描きあがったのはこんなものだった。


1.茶色と白のハムスター

2.リボン巻いた白いアヒル

3.白いこねこ(帽子付き)


 それらは、どれもどこかで見たことのあるキャラクターばかりだった。

 子供向けアニメのキャラクターや、どこぞのゆるキャラやな。

 自分で描いたそれを見てカメさんは「あぁぁ、かわいいぃぃ!」と押し殺した声で叫んで、全身プルプルさせる。


 アレにはビックリしたわ。

 やっぱりカメさん、変な人やで。


 お姉とワンちゃんの興味もサッと離れていくのが分かった。


「それはそうとお姉。ずっと聞こうと思っててん。何であのうらしまと結婚したん? 早いとこ手打たな、生涯の過ちになんで」


 人が心底心配して言ってるのに、姉はケラケラ笑っている。


「そもそもお姉の好みのタイプってどんな?」


 そうねぇ……、と姉はニンマリ笑みを浮かべた。


「かぐや様は別格として……。人生の最初の一段をつまづいて、少しずつ転がり落ちていく。駄目でボロボロになっていく少年(10代)を見るのがいいわね。たまらないわ。掻き立てられるもの」


 お姉、うっとり目を閉じた。


「………………そうなんや」


 どっちにしろ、うらしまとは違う。


「じゃ、じゃあ、ワンちゃんは?」


 言ってからシマッタと思った。

 ワンちゃんが顔を真っ赤にしたからだ。


「あああののぅ、メガネとスーツが……。スーツとメガネが。あと一人称に特徴があって……そんな感じの人が好きです。ヤだぁ、リカさんっ!」


 突然、顔面張られた。

 バシーンとすごい音がする。


「あ痛っ……」


「ううううちのアパートが、まるで少女マンガに出てくるセレブのアパートみたいだったらいいですよね」


 またワンちゃん、妙なこと言い出したで。

 そもそもセレブはアパート住まんやろ?


「住んでる男子は、みんなイケメンでセレブなんですぅ! 恋愛模様、渦巻いてるんですぅ」


 好き勝手なこと言ってる。


「少女マンガは無理やで。アタシら、どう頑張っても痛い系のギャグマンガや。アタシもそのへんの分は弁えてるつもりやで」


 大体うちのアパートの住民、みんなハズレの部類や。

 ドMと乙女、ノーパンの変態に、電波サン。

 それから何と言っても桃太郎と小人!


 あとは引きこもりばっかりや。

 まぁアタシら女も、人のことは言えんけどな。


「しゃあないやん。来世に期待し? アタシな、生まれ変わったらまつ毛になりたいねん」


「は、まつ毛ですか?」


 パチクリ自分の目元を指差すワンちゃん。


「体中の毛で一番のセレブはまつ毛やろ。だって同じ毛でも、足とか脇に生えたら憎まれた上、問答無用で剃られるやん。その点、まつ毛は違うで。より長く、より多く見えるようにあらゆる手を尽くしてもらえる。きれいなキラキラつけたり、オシャレしてもらえるし。毛のセレブは断然まつ毛やって!」


「はぁ、そう言われてみれば……」


「あるいは中年男性の頭髪(特に頭頂部)ね」


 お姉の意見もまた絶妙な所ついてるな!


 アタシらは大声で笑いあう。


 そこへ風呂屋根の修理が終わったと、うらしまがやって来た。

 アタシらの話の輪に入りたくてウズウズしている感じだったが、気味悪いので自然に無視する。


「僕は……僕は毛に生まれ変わるなら、やっぱりヘソから出ているアレになりたい! え? みんなヘソにあるだろ、毛が。僕にはあるよ。ホラ!」


「えっと……うらしま、修理早かったな。もう1週間はかかると思ってたわ。アタシは今日も銭湯行く心積もりやったで。お姉、よかったな。お風呂好きやもんな」


「どうせ修理するなら、思い切って改装したら良かったかしら。ジャグジーなんていいわね」


 財力も考えず、お姉がポツリと呟いた。

 そこにうらしまが食いつく。


「ジャグジー? それなら僕がストローを5、6本くわえて潜りましょうか? 湯船の中でブクブクします」


「そうねぇ」

 お姉、ニヤリと笑う。

「60分間安定した泡の威力をキープできるなら任命してあげてもいいわよ」


 もちろん息継ぎなしでね、と付け加えたお姉はとても楽しそうだった。


「く、苦しくなりますっ。あふんっ!」


 例の叫びを発して、うらしまは身をくねらせる。


「でも嫌だわ。あなたの息が混ざったお湯なんて……汚くて」


「あっふん……! もっと!」


 お姉はオホホと笑った。


「ほらリカ、あなたも何か言っておやりなさい。面白いわよ」


「い、イヤや……」


 めくるめく変態ワールドに(アタシ)を巻き込まんといて。


 て言うかアタシ、勉強しに来てんけどな。



「みんなでおでかけ~サイクリング・不毛・ヤッホー!」につづく

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