表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日  作者: コダーマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/54

第28話 不毛な主義、崩壊~ヘンなアンケート(2)

数時間後。


 超絶美青年の軍事系マシンガントークからようやく解放され、アタシはヨロヨロとアパートの中に戻って行った。


「か、かなりダメージが……」

 フラつきながら廊下を歩いていて遭遇したのは、ズン……と重い空気しょった人物だった。

「うわ、ビックリした。陰気な幽霊かと思った」


 オキナだ。

 廊下に膝抱えて座り込んでいる。

 アタシに気付くと薄ら笑いを浮かべた。


「……幽霊みたいなもんだよ。ボクなんてさ。そうだ、赤毛の幽霊って呼んでよ」


 卑屈やなぁ。


「オキナ、アンタな……」


 確かに失礼な奴で腹も立てたし、三十歳と聞いてこの格好(ナリ)に引きもしたけど、ほんの僅かな恋心がなかったわけ(ちゃ)う。

 そこは認めよう。


 でも──今回の騒動で一気に崩れたわ。

 ホンマに崩れたわ。

 この男、もうどうでもいいもん。


「どしたん、こんな所で? 部屋に入らへんの?」


「へ……へへ……」

 部屋の中に入ったら窓からかぐやちゃんの住む竹やぶが見えるから、いたたまれない気持ちになるらしい。

「かぐやちゃんにお尻を見られた……お尻を見られ……」


 尻を、尻を……小さな声でブツブツ言ってる。


「いいやん、別に。男なんやから」


 オキナ、じっとりとアタシを睨む。


「デリカシーのない女……」


 恥ずかしい姿を晒したということで、かつてないくらいガックリきているらしい。

 手に目薬持ってボトボトに点眼してる。


「ボク、もうヤバめ……」


「しっかりしいや」


「あうっ、うっ……うっ……」


 オキナ、声を殺して泣き出した。

 ちょっと可愛そうやけど。この男、もはや慰めようもない。


 かぐやちゃんファンのお姉に対抗してか、自分はかぐやちゃんの唯一の親友だと言い張りったのだ。

 あげく、幼馴染で許嫁なのだと言いだした。


 ひどい妄想や。

 でも、喋ってるうちに自分で信じ込んでしまったらしい。

 ひどいうえに、ヤバイ奴や。


 三者の間に何かあったのか、それとも何一つとしてないのか(それぞれ妄想に生きるタイプやし)、そのへんの経緯はよく知らない。


 かぐやちゃんの美しさが罪なのだと、二人は声を揃えて言う。


 どうでもいいわ、とアタシは思う。

 この変態ワールドにアタシさえ巻き込まんでくれるなら。


 アタシはお姉の部屋に戻った。

 本当は自分の部屋に帰りたいところやけど、桃太郎がいるしなぁ。

 アイツ、人の部屋で何であんなに大きな顔してられるんやろ。

 謝りにも来ないってどういうこと?


「ただいまぁ、お姉。聞いてきたで」


 ドア開ける瞬間、何とも言えない嫌な予感に襲われる。

 部屋の中にはお姉とうらしま。


 各々、嫌なオーラを発していた。

 アタシに気付くとお姉がズンズンやって来る。


 信じられないことに、両手にゴのつく昆虫を握り締めていた。

 そう、茶黒のテカッとしたアレだ。


「コイツをノーパン野郎のフトンに入れるわ」


 我を失っているのは分かった。


「やめてあげて、お姉! あの人、今弱ってるねん。いや、それ以前に大家としてそれだけはやめて。訴えられるで!」


 何とかゴのつく茶黒い小さなモノを手放させる。


 ソレは、うらしまの脇をすり抜けて物陰へ入っていった。

 カメさんが来てからそれほど日は経っていない。


 それなのに部屋中うず高くゴミが積み上がってきている。

 なるほど、ヤツらの住処には事欠かないわけだ。


 肌に触れるほど近くをヤツらが通り過ぎていったものだから、うらしまが「ヒッ!」と声を上ずらせている。


 何とも言えん思いを込めたアタシの視線に気付いて、うらしまは上気した顔を向けた。

 いやや、こっち向かんといて。


「オオオオキナは……」


 ワンちゃんが伝染っており、呂律が回っていない。


「オ、オキナはノーパン主義なんだって? ぼ、僕もそうしようかと思ってるんだけど、ど、どう思う?」


「どう思うって? そりゃお好きなようにしてください」


「す、好きなパンツ? それともノーパンツ?」


 ハァハァ言って興奮している。

 嫌な義兄やわ、ホンマに。


「そ、それで? かぐや様は何と?」


 同じくらいハァハァ言ったお姉がアタシの手から手帳をもぎとる。


「わ、分かったって。ちゃんと聞いてきたってば」


 お姉、咳払いしてから深呼吸を繰り返した。


「好きな味噌汁の具──大根。好きなドレッシング──青じそ。好きなフルーツ──りんご。一番の好物──豆と種……」

 お姉の声が段々低くなる。

「リカ、あなた真面目にリサーチしなさいよ。1万円返しなさい」


「い、いやや。返さへん! それ聞き出すのがどれだけ大変やったか……。それにまだマシな答えやで、豆と種は。次読んでみ」


 フムフム、とお姉はページを繰る。


「好きなタイプは? そうよ、これこれ。重要な項目だわ」


「あいえむあいもでるたぼーるにじゅういちしー? こまんだーあさるとかーびん??? どこの国の女優? モデルかしら?」


「それはIMI社製のタボール21Cコマンダー・アサルト・カービンやで。イスラエルが独自開発した新型のアサルトライフルやねん。毎分750発から900発の……ってアタシに聞かんといて! アタシにツッこまんといて!」


 これがありのままのかぐやちゃんやねん!


 そう言うと、お姉は「ウグゥ……!」と唸って微妙な笑顔を浮かべた。


 複雑な思いに葛藤しているように見受けられる。


 ゴゴゴ……。

 外からは例の地鳴り──いや、かぐやちゃんの腹の音が響いている。


「ああ、もぅイヤや。ドッと精神的疲労が。アタシは疲れたよ。とても眠いんだ……」


 でもここで寝るのは躊躇われた。

 何せゴのつくモノが大量に潜んでるからな。

 この部屋で意識をなくしたらゴに体中蹂躙されそうで恐ろしいわ。


 アタシはフラフラ廊下へ出た。

 階段を上って自分の部屋へ。


「丸1日戻ってないから、桃太郎もお腹空かせてるかもしれへんな」


 2ー1号室前に来て驚いた。

 表札が「多部リカ」から「桃太郎」になってる。

 何や、コレは。


 玄関の鍵を開けて入ると桃太郎、部屋の真ん中でパンツ一丁で寝そべっていた。

 ボリボリお菓子食べてる。


「お、思いのほかくつろいでんな。桃太郎」


「アッ、リカ殿」


 慌ててズボンをはいている。


「いや、くつろいでんのはいいわ。ムカツクけど、まぁいいわ。けど表のアレ、何なん?」


「え? 何と申されると?」


 貧弱な身体を両手で隠すようにクネクネしている。

 気持ち悪いねん、とぼけんなや!

 アタシは吐き捨てた。


「表札や! いつからこの家の主は桃太郎になってん!」


「まぁまぁ」

 馴れ馴れしくアタシの肩を叩いた。

「まぁまぁまぁ。些細なことよ」


「ガッ! もっ! クソッ!」


 怒鳴ろうとして、アタシはその場にうずくまった。

 アカン。眠気がたまらん。


 開け放たれた窓からはゴゴゴ……と地鳴りが尚も響いている。

 もうイヤや。



「不毛大作戦!2~テロだか何だか、かなりヒドイかんじ」につづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ